分析化学/化学分析

2020.07.21

化学分析員の10年(8)三つの視点から

この文章は、
・化学分析員として就職または転職することを考えている人
・化学分析員として働いている人
に向けて書きます。

かなり以前から「化学分析員」でGoogle検索すると、私が10年前に書いた記事 化学分析員という仕事 がトップに出ます。その記事からこちらへご案内していますから、検索経由でこの文章を読んでいる方も多いことでしょう。
10年前のデータを最新版に差し替えた記事は 化学分析員という仕事 2020 に書きました。でもこれは政府の賃金統計を解説しただけなので、多数の職業紹介サイトが公開している給与比較ページとあまり違いません。
化学分析員の給与が2001年以降どのように変化してきたか、今後どうなると予想されるか、化学分析員の10年(1) から(7)までのシリーズ記事で詳しく書きました。興味がある方はお読みください。
ただし、変化の内容は化学分析員として働く人にとってあまり快いものでありませんでした。ここでは締めくくりとして、
「それでも化学分析員、けっこう良くね?」
と思ってもらえることを書きたいと思います。
内容は①キャリア・ドリフト、②仕事のネガティブな側面、③仕事の魅力、の三つの視点からの情報提供です。

 ①キャリア・ドリフトという視点から考える

10年前の私は、
「学校を卒業して就いた職業をずっと続けて管理職になって定年を迎える」
というコースをなんとなくイメージしていました。
しかしこれ、だんだん困難になってきました。年金がもらえるようになる年齢が上がっていますから、働かなければならない期間はだいたい20歳くらいから70歳くらいまで、50年間もあります。こんなに長い時間が経てば、20歳の頃に選んだ職業は仕事内容も社会的位置づけも変化していき、自分に合わないものになるかもしれません。下手すると職業そのものが消滅するかもしれません。

現実に、化学分析員の世界では変化が起こりました。具体的には2008年頃から、経験年数が長い人中心の職種だったはずが、卒後数年以内の人が多く働く職種になりました。これに連動するように、40歳を過ぎたら給与があまり上がらなくなりました。

変化する社会において、私たちはどのように生きていけばいいのでしょうか。「キャリア・ドリフト」という考え方を紹介し、この視点から化学分析員という仕事を見てみたいと思います。

「キャリア・ドリフト」とは、就職や転職などの節目の時にはしっかり考えて「キャリア・デザイン」をし、それ以外の時期には毎日あれこれ悩むようなことはせず、流れに身を任せ(ドリフト)、選んだ仕事をがんばる、その中で出会う偶然も楽しんでしまう、次の節目の時には一皮むけた自分になれるようにする、そういう考え方です。金井壽宏「働くひとのためのキャリア・デザイン」(PHP新書、2001)に詳しく書かれています。鈴木祐「科学的な適職」(クロスメディア・パブリッシング、2019)でも紹介されています。

キャリア・ドリフトの視点から化学分析員という職種を考えると、キャリアの入り口として選びやすいということをまず挙げたいと思います。環境・食品・労働衛生などの分野ではいろいろな基準値が法律で決められており、基準値をクリアしているかどうか分析する仕事が日本中にあります。そして上にも書いたとおり、経験年数が短い世代も採用されています。

それから、実務経験を明確に表現できて汎用性があるという特徴があります。今どきの化学分析はほぼほぼ機器分析です。自分が使ってきた機器・使える機器の名前を列挙すれば端的に経験を表すことができます。あるいは「食品中の残留農薬」のように分析対象として表すこともできます。外から見えにくい社内業務で経験を積む職種よりも、わかりやすい経験値を蓄積していけるメリットがあります。

さらに関連資格が多いという特徴もあります。日本分析化学会は学会誌「ぶんせき」で2012年に「ミニファイル 分析がかかわる資格」という連載を行いました。そこで挙げられた資格は臭気判定士、一般計量士、環境計量士、公害防止管理者、作業環境測定士・・・さらに知りたければ 「ぶんせき」誌目次 からどうぞ。
これらの資格が就職・転職に当たってどの程度評価されるのかは個別に調べるしかありませんが、職能を見えやすくするツール「資格」が多いのは確かです。

そして化学分析のスキルを使う仕事は幅広いことも知っておいてください。「化学分析員」は厚生労働省の統計上の分類であり、同じ化学分析を行う仕事でも研究や鑑定は「自然科学系研究者」に分類されています。つまり「科捜研の女」は化学分析員ではありません。(そもそも公務員なので賃金統計の対象外ですが。)
化学分析を使って仕事している人たちには「自然科学系研究者」や「技術士」に分類される人も相当数いると思われます。統計では明確に分類されているように見えますが、実社会の仕事はグラデーションです。自分に合う仕事かどうか、求人内容を詳しく調べましょう。

ところでキャリア・ドリフトの「節目」とは、金井氏によれば転職だけではありません。昇進や転勤や結婚や大台(例えば40歳)なども節目であり、そのような機会には「キャリア・デザイン」を行うよう勧めています。
デザインした結果、化学分析員の仕事を続けるという選択ももちろん大いにありです。今の仕事を続けると決めて、収益の上がりそうな新しい分析項目を会社側に提案したっていいはずです。仕事に注ぐエネルギーはそこそこにして趣味に生きる人生もあります。

 ②ネガティブな側面を知っておく

化学分析を仕事の選択肢として考えている皆さんに、ネガティブな情報も提供したいと思います。
「働くひとのためのキャリア・デザイン」には、「採用時のリアリズム」が大事だと書かれています。これは米国の産業心理学者ワナウスが提唱したことで、リアルな情報を提供することを「RJP」(リアリズムに基づく事前の職務情報)と呼ぶのだそうです。

ネガティブ情報を知ることで、
「そういう仕事はやめておこう」
という流れになるかもしれませんが、もっと重要なのは仕事に就いた後です。
「こんなはずではなかった」
を防ぐことで、結果的に仕事に速やかに順応して離職率も抑えられるのだそうです。

しかしネガティブ情報はなかなか表に出るものではありません。たまたまtwitterで今年の6/9から一か月ほど分析現場の生の声が多くつぶやかれたので、まとめておきます。当然これは全部の化学分析現場に当てはまるものではなく、こういう声があったということです。(主な情報源は 私のアカウント(リツイート中心)

<分析業務の特性と周囲の無理解>
・ミスが重大な結果を招く場合があるので常に緊張する。
・分析項目の増加や高度化への対応は「できて当たり前」で評価されない。
・正確な分析を行うことは見かけほど簡単でないのに理解されない。
・職員の教育機会を確保することが軽視されている。
・技能を習得する前に配置転換される。
・素人が配置されることがある。
・知識もないパート従業員が主力という場合がある。

<検査機関が増加・競争激化>
・ダンピングがひどい。
・納期を短く設定される。
・休日出勤前提の受注がある。
・残業が多い。
・サービス残業がある。
・現地へ出向いてのサンプリングがサービス(無料)ということがある。
・もう少し検討して確認したくてもできないので不安。

<製造業などの社内分析部門>
・基幹業務との比較で軽んじられている。
・むしろ厄介者扱いされる。
・外注化が進んでいる。

<顧客とのコミュニケーション>
・間に営業が入るので必要な情報が伝わらない。
・分析対象についてもっと知って有用な提案をしたいのに教えてもらえない。
・基準値だけ満たしていれば良いという姿勢を感じる。
・「早い」「安い」「出ない」検査機関が選ばれる。

<技術の進歩>
・分析機器が高額になり維持費もかさんで人件費を圧迫。
・機器メーカーが前処理や解析手法まで付けるようになりユーザー側の創造的な仕事が減った。

これらの他に、倫理や法律に反しているかもしれない事例もありました。噂話程度で真偽を確認できず、ブログに書くのは躊躇されるのでリンクだけにします。
twitterより (6/30-7/1):

なお、給与についての不満もありましたが、給与についてはシリーズ記事で客観的なデータを載せているので省きました。
また、有機溶媒を扱うことなどによる健康面への影響が気になる方もいるかもしれませんが、この点については、少なくともtwitterの議論では出ませんでした。個人的には、近年の職場環境は防護具の装着や局所排気装置の使用などが徹底していてそれほど心配ないと感じています。どちらかというと半年に1回業務検診(普通の健康診断とは別)があって採血されるのが嫌です。

 ③仕事の魅力はそれぞれ

上で書いた「リアルな職務情報」には、ネガティブな情報だけでなくポジティブな情報も含まれます。資格の勉強が楽しい、クロマトできれいに分離できたとき気持ちいい、分析操作そのものが好き、などがあります。ただ、これは人によってそれぞれなんですね。好きなもの、向いているもの、幸福を感じる状況、価値観・・・個人差があります。

その点twitterは便利なツールです。個人のつぶやきをリアルタイムで追えます。その職業ならではの特徴的な考え方や目の付けどころがあるかもしれません。仕事への向き合い方が垣間見える場合もあります。

化学分析についてつぶやくことがあるアカウントのリストを作りました。
Chemical Analysts
それぞれの方の明確な職務内容はなかなかわかりません。賃金統計の「化学分析員」に分類される人ばかりではないと思います。分析とは無関係なつぶやきが圧倒的に多いです。でも仕事で化学分析をしている(したことがある)らしき皆さんですので参考にしてください。

 未来の予測は難しいから
以上①~③の視点からの情報は、化学分析員に限らず、あらゆる職種を志望する人にとって重要だと思います。いろいろな職種の情報を集めてください。

「働くひとのためのキャリア・デザイン」はあまり読みやすいとは言えない本で、出版も約20年前なので、お薦めはしませんが、一時流行したserendipityの語を「掘り出し物」と訳しているところが気に入りました。節目で自分のキャリアについて考え抜いて身の振り方を決めたら、節目と節目の間はドリフトして「掘り出し物」との出会いを楽しみます。それが次の節目で思わぬ縁をつなぐかもしれません。未来予測はむずかしく、デザインしきるなんて無理なのですから。

化学分析員、そして化学分析を行うさまざまな職業への興味を持っていただけたら幸いです。

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2020.07.03

化学分析員の10年(7)給与低下より気になること

このシリーズは明るい話で締めくくることにしていますが、今回は(1)~(6)を踏まえて40代の給与低下の原因考察です。暗い話です。

ネット検索したら、賃金構造基本統計調査の職種別統計から平均年収や生涯賃金を算出して職種別ランキングまで公開しているサイトがいくつもあることに気づきました。(例1 例2

「生涯賃金」は、年齢階級別の賃金を元に、今後も同じように支払われると仮定して算出します。最新(2019年)の統計で年齢階級別賃金はこのようになっています。

2019_20200703210301

40代と50代では相当大きな差があることが見て取れます。これまでの解析でわかったのは、2008年頃から化学分析員の給与に変化が起こったらしいということです。具体的には、それまでは40歳を過ぎても給与は上昇していたのに、2008年頃からあまり上がらなくなったようです。このグラフの50代は変化の前の世代で、40代は変化の後の世代。つまり、年齢階級別賃金から「生涯賃金」を割り出すのは大間違いだと推定できます。

2008年に起こった変化とは、(5)で書いたとおり、30歳以上の化学分析員の人数の減少と29歳以下の増加です。2007年まで男性化学分析員は、29歳以下は5%程度しかいないベテラン中心の職種だったのですが、2008年からいきなり29歳以下が25%前後を占めるようになりました。これは一時的な傾向ではなく、2008年以後最新調査に至るまで続いています。

おそらく2007年頃まではある程度助手や下働きを経験しなければなれなかった化学分析員、それが2008年からは19歳以下ですら就ける職業になった。給与の額よりこのことの方が私には衝撃です。

なぜ2008年にそのようなことが起こったかですが、「団塊の世代の大量退職」が一つの要因かもしれません。ただ、団塊の世代は複数年にわたっているはずなので、ピンポイントで2008年に変化が起こった理由は説明しきれません。
それに、ベテランが退職したからといっていきなり29歳以下が5倍に増えて仕事が回るでしょうか。仕事の質そのものが変化したのではないでしょうか。

法規制についても調べました。
環境、食品、水、労働衛生など、法規制が整備されると有害物質の分析が義務付けられる場合があります。どこで分析したデータでも良いわけではなく、国や地方自治体に登録された分析機関での結果が求められます。

分析業界にとっては市場が拡大してありがたいことのように思えますが、それまで専門的だった分析業務が定型的な業務になり、安定需要が見込まれ、新規参入が容易になるとも言えます。いわゆるコモディティ化です。そのような変化が起こった時期は次のとおりです。

<各法律に基づく検査機関登録制度の開始時期>

 計量法 特定計量証明事業 2002年4月
 温泉法 登録分析機関 2002年4月
 土壌汚染対策法 指定調査機関 2003年1月
 食品衛生法 登録検査機関 2004年2月
 水道法 登録検査機関 2004年3月

ゼロ年代前半に集中して開始されたようです。

なお、分析に関わる資格の歴史はもっと古いです。
環境計量士制度は1974年に新設され、1992年に濃度関係が区分されるなど専門性が高まったとのことです。(杉田和俊「分析がかかわる資格 環境計量士」ぶんせき, 2012, 96 (2012))作業環境測定士制度は1983年から現行と同様の方法で行われるようになったそうです。(保利 一「労働安全衛生法に基づく有害作業の作業環境管理の現状と課題」産業医科大学雑誌, 35, 73 (2013)

法規制に関わる分析で起こった変化のプロセスを私なりに推定してみます。

  • 2002~2004年頃、法規制に基づく分析をする機関の登録制度が相次いで新設された。
  • 事業の立ち上げ時には各社で分析のベテランたちが試験法整備、機器調達、GLP対応などを担った。
  • 業界の事例が積み上がり、採算性も見えやすくなり、新規参入が容易になった。
  • 競争が激しくなり始めた一方で定型的な業務が増え、ベテランでなくてもこなせるようになった。
  • 団塊の世代の大量退職の時期になった(2007年問題)。
  • 退職者の穴を埋めるため中堅が係長以上に昇進し、化学分析員としてカウントされる人員は減少。
  • 2008年から経験が浅い人員が大量採用されるように。
  • 化学分析員の業務に対する評価が変化。長い経験が必要 → 新卒でも可能。
  • 40歳以上が持つ経験は以前ほど評価されなくなった。(給与という形では)

正確でないと思いますが、ある程度説明になっているのではないでしょうか。

法規制に関わらない分析ではどうでしょうか。
製造業では自社内で化学分析部門を持つところがありますが、アウトソーシングが進んでいると聞きます。整理される分析部門と分析を引き受ける受託分析会社でも変化は起こっていると思います。法規制のように明確な時期はわかりませんが、上に描いたプロセスと似たことが起こっているかもしれません。

分析機関の間の競争は激しく、働く環境は厳しくなっているようです。現場の声を 私のtwitter でリツイートして紹介しています。

次回は展望のある話を書いてシリーズを終わろうと思います。その手がかりにしようと、twitterでは私がこれまでに読んだ働き方についての本のメモもつぶやいています。

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2020.06.22

化学分析員の10年(6)男女別の統計

お待たせしました。女性についてのデータです。
賃金構造基本統計調査 の職種別統計表には、男女のどちらかしか年齢階級別統計が公表されていない職種があります。化学分析員は男性のみ、自然科学系研究者も男性のみ、栄養士は逆に女性のみです。

そういうわけで残念ながら女性化学分析員については年齢ごとの解析ができません。総数だけの統計になりますがご紹介します。

まず人数から。男女別の推移をグラフにしました。

Photo_20200622070501

人数は調査期間を通して男性の方が多く、女性も男性も増加傾向にあることがわかります。女性の方がやや増加率が大きいように見えるので、比率の推移もグラフにしてみました。
Photo_20200622070601

やはり女性の比率が少しずつ高まっているようです。直近では男性6に対して女性4程度の構成になっているようです。

年齢はどうでしょうか。平均年齢はこのようになっています。

Photo_20200622070602
女性化学分析員の平均年齢は明らかに上昇しています。男性についてはよくわかりませんが、若干上昇傾向かもしれません。
2001年には男性の方が平均年齢が6歳ほど高かったのですが、最新の統計では男女差はほとんど無く、ここ5年ほどは男女とも約37~39歳が化学分析員の平均年齢です。

「実感としては男性の方がベテランが多いけど?」
と思う方もおられるかもしれません。
賃金構造基本統計調査では係長以上は管理職として集計され、化学分析員の集計に入りません。実感として化学分析員のように見えても係長以上はカウントされないことに注意が必要です。

女性の職業選択にとっては「結婚・出産後も働きやすいかどうか」も重要な要素ですが、平均年齢を類似した他職種と比較したらどうでしょう。2019年調査では次のようになっています。

平均年齢
 自然科学系研究者(女) 37.2歳
 化学分析員(女) 37.8歳
 技術士(女) 39.8歳
 一級建築士(女) 42.4歳
 医師(女) 38.2歳
 歯科医師(女) 35.1歳
 獣医師(女) 33.2歳
 薬剤師(女) 39.5歳
 看護師(女) 39.9歳
 臨床検査技師(女) 38.5歳
 栄養士(女) 35.5歳

理系の各種専門職(女性)の平均年齢はおおむね35~40歳の範囲内のようですから、化学分析員は続けやすさとしては中程度ということでしょうか。(ただし平均年齢は「管理職になりにくさ」を反映している可能性もあります。)

ところで前回記事で解説した通り、2007年と2008年の間には、30歳以上の化学分析員の人数の大きな減少と29歳以下の大きな増加という大変動がありました。平均年齢でもこの年は男女とも減少しています。

最後に平均給与の推移です。

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女性は若干上昇傾向、男性は若干減少傾向のように見えます。
ただし同じ期間内に女性化学分析員の平均年齢は大きく上昇したのですから、給与が上昇するのは当然で、むしろ年齢の上昇に見合う大きさかどうか疑問な感じです。

また、近年の平均年齢は男女同程度なのに、平均給与は男性の方が7万円ほど高くなっています。
「きまって支給する現金給与額」には「基本給、職務手当、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などが含まれるほか、超過労働給与額も含まれる」とされています。
2019年の場合、男性の超過実労働時間数は平均13時間、女性は8時間でしたから、男女差には5時間分の超勤手当てが含まれます。また、家族手当も男性が給付される場合が多いでしょう。

ただ、これらだけで7万円の差は説明しきれないかもしれません。企業規模別の男女比など調べたら差があるのかもしれませんが、今回の私の調査目的の範囲外です。

男女別のデータ紹介は以上です。
40代男性化学分析員の給与が減った原因を探っているわけですが、今回の解析からは特に関連は読み取れませんでした。
これでデータ読みは終わりましたので、次回は総合的な原因考察、次々回は「それでも化学分析員は魅力的な職業」というオチ、で締めくくりたいと思います。どちらも難しい課題なので、いつ書けるかちょっと自信がありません。

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2020.06.20

化学分析員の10年(5)2007年と2008年の間に「断層」

驚くような事実がわかりました。2008年、化学分析業界に大事件が起こっていたのかもしれません。

前回まで40代前半男性化学分析員の給与に着目して解析してきましたが、今回は全年代を対象に年代別の人数の推移をグラフにしてみました。賃金構造基本統計調査の年齢別階級数は12ですが、それではわかりにくいので、7階級に統合しました。

Photo_20200620195301
え・・・っ?これは・・・?
おわかりでしょうか。2007年と2008年の間に特異な形が現れています。
化学分析員(男性)の総数は増えたり減ったりしていますが、各年齢階級の比率はほとんどの期間において前年からあまり変わっていません。しかし2007年と2008年の間だけはベテラン世代が減少して29歳以下の世代がぐっと増えています。

実数でなく比率のグラフも作ってみました。

Photo_20200620195302
明瞭です。2007年と2008年の間には断層と言ってよいほどの変化があったのです。
2008年に、30歳以上の全年代で労働者数は前年より減りました。(正確には70歳以上だけ10人から20人に増加。)そして29歳以下が激増しました。

2007年まで1000人前後だった29歳以下の男性化学分析員は、2008年に一挙に4000人を超え、2009年には6000人に迫り、以後増減を繰り返しながらも5000人前後で推移しています。

24歳以下は2007年まではほとんど見えていませんが、2008年に1280人になりました。

さらに驚くことに、2008年から「19歳以下の化学分析員」が統計に表れてきています。(グラフでは24歳未満に含めています。)表れた人数は年によって違いますが2008年以降毎年数字があり、90~420人です。2007年まではずっと数字なしでした。

賃金構造基本統計調査では「その職種の仕事を行うのに必要な技能を見習修得中の労働者で、その都度指図を受けなければ普通の仕事のできないものは、その職種に分類しない。」とされています。
つまり、2008年から登場した未成年の化学分析員たちは、いちいち指図をされなくても自分で動くことができる、一人前の化学分析員なのです。

ティーンエージャーの化学分析員・・・かわいかっこいいかも・・・?私の知り合いにはいませんが、会ってみたい気がします。

それにしても、2008年から大量に誕生した24歳以下の化学分析員は、おそらく高校・専門学校・大学を卒業したばかりではないかと思います。
少なくとも採用・配属する側は、その程度の経験で十分と考えて化学分析員にしたのでしょう。2007年までは24歳以下がほとんどいない職種だったのに。

2008年、いったい何があったのでしょうか。
このころ「団塊の世代の大量退職」が社会問題になっていました。再びWikipediaからの引用ですが、団塊の世代とは1947~1949年生まれだそうです。ど真ん中の1948年生まれの人たちが60歳で定年を迎えたとしたら、2008年はまさにその年に当たります。

しかし大量退職問題は化学分析業界だけでなく日本社会に一般的な問題でした。他の職種でもこれほど劇的な変化があったのでしょうか?
また、2008年は40代前半男性化学分析員の給与が下がり始めた年でもありますが、この「断層」と関係があるのでしょうか?

2008年、皆さんの職場ではどんなことが起こっていましたか?
どうもこの年から、化学分析業務(とそれを行う人たち)の扱われ方はかなり変わったようです。

ところで「なぜ男性ばかり?」と不満を持つ方がおられるかもしれませんが、化学分析員については男性しか年齢階級別統計が無いのです。女性についても(総数だけですが)取り上げますので待っていてください。

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2020.06.19

化学分析員の10年(4)大企業に勤務する人の比率

賃金構造基本統計調査(厚生労働省) を読み込んで、40代男性化学分析員の給与が下がった原因を究明しています。

ところでこの統計ですが、注意しておかなければならないことがあります。
それは、全数調査ではなく抽出調査だということです。まず調査対象の事業所を抽出します。それらの事業所から調査対象の労働者を抽出しています。

調査の概要(令和元年) によれば、この調査の母集団は、16大産業の常用労働者5人以上の事業所で、全国で約148万事業所、労働者数は約4,200万人だそうです。抽出した事業所数は約7万8千事業所、抽出した労働者数は約163万人だそうです。
単純に計算すると、実際に調査した事業所数は全体の約5.3 %、労働者数は約3.9 %ということです。

ただし抽出された事業所が全部回答してくれるわけではなく、回答しないところもあります。 産業、事業所規模別母集団数、標本数、有効回答率 には残念ながら令和元年の有効回答率は未掲載ですが、平成30年は72.4 %だったそうです。令和元年も同程度だったとすると、事業所数の4%弱、労働者数の3%弱からデータが取れたと考えられます。

十分に母集団が大きければ3~4%の抽出率でも問題になりませんが、化学分析員というあまり多くない職種で、しかも年齢階層別・企業規模別などと細分化したら、どんな事業所や労働者が調査対象になったかによって結果が大きく変動するでしょう。この点を念頭に置きながらデータを読んでいきましょう。

前回の解析 で、40代後半の男性化学分析員の給与は、どの企業規模でも2015年前後から下がり始め、開始時期は大企業→中企業→小企業の順だったとわかりました。しかし40代前半の給与は、平均給与は2008年から下がったのに、企業規模別統計では明確な傾向がありませんでした。「もしかしたら40代前半では大企業の労働者数が減って中小企業の労働者数が増えたのではないか」と考察しました。

これを確かめるため、40代前半男性化学分析員の勤務する事業所規模をグラフ化してみました。いかがでしょう。

40
このグラフで、大企業の労働者数の比率が2008年から下がり始めたと言えるでしょうか?
2006年から2013年にかけて減ったようにも見えますが、2014年には最高値になるなど、同じ傾向とは言えないと思います。つまり、考察は当たっていなかったようです。

ついでに40代後半男性化学分析員についても同じグラフを作ってみました。

40_20200619064201
驚きました。平均給与の傾向と同期するように、大企業の労働者比率は、2014年をピークに2015年から明確に減少しています。つまり、40代後半男性化学分析員にとっては、この期間、企業規模別の平均給与も下がったうえ、大企業に勤務する比率も下がったという、極めて厳しい事態になったと言えます。

40代後半男性化学分析員が実数として何人くらいいるかですが、2019年では1690人と推定されています。この方たちから3%弱が抽出されているので、調査人数としては50人以下、さらに企業規模別ではもっと少人数です。こんな少ない人数の調査でも、大企業・中企業・小企業のすべてではっきり給与低下の傾向がつかめるのですから、相当深刻だと思います。

以上、40代後半についてはさらに原因究明が進んだのに対して、40代前半についてはよくわからないまま、これが今回の結果です。

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2020.06.16

化学分析員の10年(3)企業規模との関係

私のウェブ活動のテーマは「分析の魅力を伝える」です。10年前に 化学分析員という仕事 を書いたとき、賃金の統計値をそのまま紹介するだけで、化学分析員はかなり魅力的な仕事として描くことができました。けれども先週データを更新して 化学分析員という仕事 2020 を書いたら、少なくとも給与面を見る限り、魅力的と言い張ることはできないと思いました。全く予想外で衝撃を受けました。

これで終わるわけには行かないので、何とか「魅力的」と思ってもらえるオチを作り、この仕事を志望する若者を減らさないようにするつもりです。
しかし根拠のない楽観論や嘘でオチを作るわけには行きませんから、まずは原因の究明です。面白くない話題ですが続けます。

前回まとめたデータでは、40代前半男性は2008年頃から、40代後半男性は2015年頃から、給与が下がり始めています。この原因は何なのか。
今回は企業規模との関係を調べてみます。

賃金構造基本統計調査では、常用労働者 1,000人以上を「大企業」、100~999人を「中企業」、10~99人を「小企業」に区分しています。

2019年には大企業で働く化学分析員は7,760人、中企業7,120人、小企業3,310人です。
そして企業規模別・年齢階級別の給与はこのグラフのようになっています。

2019
中企業と小企業の給与は同じくらいで、大企業の給与は60~64歳以外の全年代で高めのようです。

では、40~44歳男性の給与は年ごとにどのように変化してきたのでしょうか。企業規模別にまとめました。

4044
不思議なことに、明確な減少傾向は読み取れないように見えます。全企業の平均では2007年をピークに2008年頃から漸減しているのに、これはどうしたことでしょう。
もしかしたら、大企業に勤務する人が減り、中小企業に勤務する人が増えたのかもしれません。

次に45~49歳男性のグラフです。

4549
これはどの企業規模でも近年減少が起こったように見えます。ただし起こった時期は企業規模によって違います。

 大企業 2014年から
 中企業 2015年から
 小企業 2016年から

このように1年ずつずれて、大企業→中企業→小企業の順に40代後半の給与低下が起こりました。
そして平均では2015年から下がり始めました。

以上をまとめると、
 40代前半の給与は、企業規模別統計では明確な傾向なし(平均給与は2008年から下がっているのに)
 40代後半の給与は、どの企業規模でも2015年前後から下がり始めた。開始時期は大→中→小の順

このことから何が言えるでしょうか。私にはまだ何とも言えません。
とりあえず企業規模別の人数の変化を解析する必要がありますが、今回はここまでにします。

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2020.06.14

化学分析員の10年(2)就職氷河期世代?

「40代前半は就職氷河期世代では?」というご意見をtwitterでいただきました。
化学分析業では派遣社員や契約社員として働く方も多いです。給与が下がった世代はこれに重なるのではないか・・・ということです。

明確な区切りは付けにくいでしょうが、Wikipediaで「就職氷河期世代」を調べたら「1993年から2005年卒」との説が書かれていました。この方たちが平均22歳で就職したと仮定すると、2019年には36歳から48歳でした。確かに給与が下がった世代にぴったり一致します。(30代後半も11,000円下がりました。)

賃金構造基本統計調査では雇用形態も回答項目にあり、正社員または正職員かどうか調査されています。しかし職種ごとの結果は公表されていません。
直接確認できれば良いのですが無理なので、年齢階級ごとの給与の経年的な変化がどうだったか調べることにしました。賃金構造基本統計調査 (政府統計の総合窓口(e-Stat)) の中で2001年から2019年までのExcelファイル「職種・性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」をダウンロードし、データをグラフ化しました。
グラフが読みにくくなるため50歳以上は省きました。

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残念ながら全年代とも給与は伸び悩んでいるようです。
でも昇給については、基本的に20代前半から30代後半までは順調なようです。折れ線が交わることなく、19年間ずっと、年代が高まるほど給与も高くなっています。

しかし40代前半と40代後半で変調が起こったようです。2006年までは年代順に並んでいますが、2007年から逆転が見られるようになり、最新の2019年では30代後半から40代後半がダンゴ状態です。

就職氷河期世代説をあてはめてみましょう。
冒頭と同じように計算するとどの年代が就職氷河期世代でしょうか。

 2005年 22~34歳
 2010年 27~39歳
 2015年 32~44歳

40~44歳の給与は2007年をピークに2008年あたりから漸減傾向に見えます。でも2008年には就職氷河期世代はまだ25~36歳で、この年代に達していませんでした。

45~49歳の給与は年ごとの上下変動が大きいです。(サンプル数が少ない?)それでも2014年をピークに2015年から明確な減少が起こったようです。2015年には就職氷河期世代は32~44歳で、やはりこの年齢階級には達していません。

このように、Wikipediaでいう就職氷河期世代と化学分析員の給与減少はリンクしているとは言い難いと思われます。
しかしこの解析で、特定の世代の化学分析員が、その前の世代よりも給与が下がったことは見てとれます。それは2008年に40歳に達した人と2015年に45歳に達した人にまたがる世代です。短く言えば、

2020年6月におおよそ50歳から52歳の方は化学分析員受難時代の開始世代ではないか?

というのが今の段階での私の見方です。「開始」ということは、これ以降の世代の方も受難世代ということです。おおよそ50歳から52歳の方は、先輩を見て期待していた通りにならなかった変わり目の世代ということです。
「就職氷河期世代」が給与減少の主因であるならば、終わりがあると予想されます。しかし別の永続的な原因があるなら、厳しいことですが、この傾向が続くかもしれません。

また、今回の解析では「変わり目の時期」はある程度つかめた気がしますが、「原因」には全く迫っていません。
いろいろな側面から原因を考えてつぶやいている皆さんがおられます。どうもありがとうございます。私のtwitter でリツイートしています。

賃金構造基本統計調査からもう少しデータを拾ってみようと思います。

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2020.06.13

化学分析員の10年(1)浮かび上がった謎

10年前の数字を最新の統計値に差し替えてさらっと終わるはずだった 化学分析員という仕事 2020 ですが、思いがけない謎が浮上したので私なりに原因を究明することにしました。

謎とは、なぜか40代男性化学分析員の給与が10年前よりかなり減ったことです。
まず、賃金構造基本統計調査のデータの場所を示して正確な減少幅を確認します。

2009年6月の調査
職種・性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額 (平成21年)

2019年6月の調査
職種・性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(令和元年)

企業規模計(10人以上)きまって支給する現金給与額

化学分析員(男)40~44歳
 461.8千円 → 382.8千円 79.0千円(17.1 %)減

化学分析員(男)45~49歳
 451.1千円 → 388.4千円 62.7千円(13.9 %)減

これは見過ごせない減少幅と言えるのではないでしょうか。統計データを見ながらこの原因を考えていきます。

まず、全年代の増減はどうなのか。グラフにしてみました。統計には19歳以下と65歳以上のデータもありますが省きました。

Photo_20200613072501
やはり40代の落ち込みは際立っています。

では、この傾向が化学分析員だけのものなのか、それとも、類似した他の職種でも同じことが起こったのか、見ていきます。もし一般的な傾向であるなら、化学分析員に限らない社会問題ということになり、私のブログでは手に負えない話です。

最初に自然科学系研究者(男)。

Photo_20200613074101
きれいなグラフです。ほぼ全年代で給与は増加し、増加幅は年齢が高いほど大きくなっています。

次に技術士(男)。

Photo_20200613074102
なんと全年代で増加、しかも増加幅は6万円~9万円近くという年代が多いです。
ところで What's 技術士!?「役職及び職種解説」によれば、機械技術士、船舶技術士、航空機技術士、電気技術士、化学技術士、資源工学技術士、建設技術士、経営工学技術士が含まれるそうです。化学も入っていますがほんの一部かもしれません。

そして薬剤師(男)。

Photo_20200613074201
40代前半で1万円減少しました。これは化学分析員における減少と何か共通の要因があるのかもしれませんが、減少幅はずっと小さい。それより目立つのは、40代後半と60代前半で8万円以上の大きな伸び。いったいどんな背景があるのでしょう。
なお、20代前半で減少したのは、薬学部が4年制から6年制に移行した影響があると思われるので、単純に減ったとは判断できません。

最後に臨床検査技師(男)。

Photo_20200613074301
こ、これは・・・40代後半と50代前半で減少しています。化学分析員で起こったことに似ています。ただし年代は5年ずれています。それから減少幅は小さいです。といっても、40代後半は55,000円減ですから、臨床検査技師さんたちにとって大きな問題ではないでしょうか。

以上でわかったことは、40代での給与減額は一般的なことではない、そして臨床検査技師で似た動向が見られる、です。

社会問題に疎い個人がどこまで原因に迫れるかわかりませんが、引き続き不要不急の外出をひかえながらデータを解析していきます。

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2020.06.11

化学分析員という仕事 2020

「化学分析員」はどんな仕事か、全国に何人くらいいるのか、男女比はどうか、年齢ごとの給与はどの程度か、他の似た職種と比べて給与は高いのか低いのか、そんな情報をまとめた記事を10年前に書きました。この記事は現在に至るまで当ブログのPV数の上位をキープしています。

最近twitterで分析屋さんの収入についての話題があったので、最新の統計値を使って記事を修正しました。文章の構成は10年前と同じです。大きな変化はないかと思いきや、衝撃の事実が・・・(参考:化学分析員という仕事 2010

 賃金構造基本統計調査

ご紹介する統計は厚生労働省が行っている賃金構造基本統計調査です。令和元年6月分の賃金等(賞与、期末手当等については平成30年1年間)について、7月に調査を行ったものです。下記サイトで公開されています。

賃金構造基本統計調査(厚生労働省)
賃金構造基本統計調査 (政府統計の総合窓口(e-Stat))

賃金の調査ですが、賃金だけでなく、職種別の就業人数・年齢分布・男女比・勤続年数分布なども知ることができます。
全国から抽出された78,482事業所のうち有効回答を得た53,867事業所から、10人以上の常用労働者を雇用する民間事業所(47,148事業所)について集計したものです。

 職種「化学分析員」

この統計では労働者を約130の職種に分類していますが、その中に「化学分析員」があります。仕事の内容は 役職及び職種解説 に次のように書かれています。

化学分析員
○(含まれる職種) 分析工、試験工

<仕事の概要>
無機化合物及び有機化合物の定性分析、定量分析、容量分析、機器分析等の化学分析の仕事に従事する者をいう。

<除外>
1) 金属材料の引張試験、組織顕微鏡試験などの仕事に従事する者
2) 専ら、分析用器材の製作、補修の仕事に従事する者

検査会社で環境分析・食品分析・材料分析などを行う人、製造業で品質管理のための分析を行う人は化学分析員に含まれると思われます。

 化学分析員の人数

この調査は抽出調査ですから、調査した労働者の数ではなく、母集団に対応する数字として推計(復元)した労働者の数が発表されています。それによると

一般労働者(企業規模10人以上)
 男 18,190人
 女 10,750人
 計 28,930人

短時間労働者(企業規模10人以上)
 男  780人
 女 1,510人
 計 2,290人
(10人未満切捨て)


全国には合わせて3万人余の化学分析員がいるようです。
個人的な感覚ではもっと多いような気がするのですが。公務員が除外されること、また、一人の労働者が役職(係長以上)と職種にまたがる場合には役職の方へ分類されることから、実感より少なくなるのかもしれません。また、「その職種の仕事を行うのに必要な技能を見習修得中の労働者で、その都度指図を受けなければ普通の仕事のできないものは、その職種に分類しない」とあります。分析の現場では、このような補助的なスタッフが多いかもしれません。

ちなみに同じ統計で一般労働者3万人程度の他の職種は、診療放射線・診療エックス線技師、歯科衛生士、大学講師、調理師見習、電車運転士、金属検査工、板金工、仕上工、紙器工、配管工・・・等となっています。いずれも極端に珍しくもなくありふれてもいない職種で、何となく納得します。

なお、10年前の人数と比較すると、化学分析員の一般労働者は約1,000人減少し、短時間労働者は約600人増加しました。

 化学分析員のプロフィール

企業規模10人以上の事業所に勤務する一般労働者の平均は次のとおりです。

男性の平均
 年齢 38.6歳
 勤続年数 11.7年
 所定内実労働時間数 155時間
 超過実労働時間数 13時間
 きまって支給する現金給与額 344,700円
 年間賞与その他特別給与額 1,279,400円

女性の平均
 年齢 37.8歳
 勤続年数 9.9年
 所定内実労働時間数 152時間
 超過実労働時間数 8時間
 きまって支給する現金給与額 277,500円
 年間賞与その他特別給与額 831,500円

10年前と比較すると男性の平均年齢が1.7歳、女性の平均年齢が4.0歳、それぞれ上昇しています。給与額も若干上がっています。

 化学分析員の年齢分布と給与

なぜか男性の一般労働者についてしかデータがありません。(理由はどこかに書かれているのでしょうが、私は見つけられませんでした。)
10年前には25歳から39歳までを合わせると61%を占めていましたが、令和元年は50%でした。若い人の比率が減少したようです。

「きまって支給する現金給与額」を見て驚きました。
えっ?40代は10年前よりかなり給与が減ってる!?
20代前半23万円、20代後半31万円、30代前半34万円、30代後半37万円、40代は前半も後半も38万円、ピークは50~54歳で48万円となっています。20代と30代は10年前より給与が上がりましたが、40代は下がりました。
10年前には40代前半が給与のピークで約46万円でした。この年代は約8万円減ったことになります。40代後半は45万円から7万円の減。これは相当大きな減額と言えるでしょう。

 他の類似した職種との比較

給与が最も高くなる年代とその金額を他の類似した職種と比較したらどうでしょう。
60代後半が最も高額という職種がありますが、例外的と思われるのでカッコ書きしました。

自然科学系研究者(男) 50代前半 68万円
  (60代後半 73万円)
技術士(男)50代前半 50万円
技術士(女)50代後半 42万円
薬剤師(男) 50代前半 52万円
薬剤師(女) 50代前半 49万円
臨床検査技師(男) 50代前半 45万円
  (60代後半 45万円)
臨床検査技師(女) 50代前半 37万円
栄養士(女)50代後半 29万円

男性の化学分析員の給与は、単純にピーク時の金額で比較すると、臨床検査技師よりは高く、技術士・薬剤師よりは低く、自然科学系研究者よりは相当低いと言えます。
ただし、管理職になると「化学分析員」に分類されなくなるので、個人単位で見た場合、給与が伸び悩んだわけではなく昇進した人も多いかもしれません。

 まとめ

10年前にこの記事を書いたときには、「化学分析員の給与は悪くないようです」と締めくくりました。
しかし最新のデータを参照すると、そうとも言いきれないようです。10年で8万円も月給が減った40代前半男性化学分析員。何が起こったのでしょうか?統計をさらに詳しく読んで、何日か後に私なりの考察を書きたいと思います。

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2020.05.24

GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(21)まとめ:使い分け回避派!

全国の多くの府県で緊急事態宣言が解除され、首都圏と北海道もあと少しで解除される見込みです。長かったステイホームの日々も一応の区切りがつきそう。録画や動画配信サービスで映画やドラマを観て過ごした人も多かったようですが、私は結局ハイフンとスラッシュばかりでした。なんとも絶妙なタイミングで日本質量分析学会の用語集が改訂されたものです。

このブログで書いてきた調査結果を踏まえて、私のサイトの方針を示すページ ハイフンとスラッシュについて に加筆しました。

思い起こせば4年前には、雑誌 Rapid Communications in Mass Spectrometry が影響力を発揮してスラッシュへの統一が進むのではないかと予想していました。しかし相変わらず世界ではハイフンが圧倒的多数派です。
国内では日本食品衛生学会「食品衛生学雑誌」の 編集規定・投稿規定 がハイフン派と知りました。

いっぽうGC/MSの規格(JIS K 0123)はスラッシュで踏ん張っています。この規格も次の改訂で「ハイフン:装置、スラッシュ:分析法」の使い分けを行うだろうと予想していたのに、2018年の改訂では「スラッシュだけ」が維持されました。

私の願いは一つです。どちらでもいいからどちらかに統一されてほしい。好みはハイフンですが、統一されればどちらでも従います。ただ「両方を使い分ける」はしたくない。だから当面はスラッシュだけ使います。ハイフンが好きですが、日本国内ではハイフンは「装置」を表すと考える人が一定数いるわけなので、「分析法」を意味するスラッシュの方が私にとって使い勝手がいいのです。

ハイフン派のみなさん、ごめんなさい。私はスラッシュ派というわけではないのです。「使い分け回避派」です。そこんとこよろしくお願いします。

また何年か先に、新たな動きがあればシリーズ記事を再開します。その時にはどんな表記が優勢になっているのでしょうね。

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