分析化学/化学分析

2024.05.20

第84回分析化学討論会

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さわやかな5月の土日の京都で開催された学会。自分なりの視点で拾った話題を書き留めておきます。土曜の懇親会時点の発表では参加者数900人台で、盛況だったようです。会場にも活気がありました。

 スペクトルの塔
会場の京都工芸繊維大学は初訪問でしたが、討論会ウェブサイトのイメージにも使われているこの塔がひときわ目立っています。絶対「スペクトルの塔」という名前だろうと思って説明板を読んだところ、『大学の塔「時を超えて」』という名称で、「スペクトル」の語はまったく出ていませんでした。「虹」の語はありましたが…。分光器によるスペクトルなら分析化学会にぴったりなのですが。
キャンパス内は大きな木が多く、あちこちに木陰とベンチがあり、比叡山が近くに見えて、心地よかったです。

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 市民公開講演会「宇宙と分析化学」
太陽系内での生命探査、SPring-8による小惑星試料の分析、地球外文明SETIの探索、というテーマで3つの講演がありました。はやぶさ1と2についてはニュースでたびたび見聞きして、断片的な情報はいろいろ持っていました。イトカワとリュウグウがどう違うか、それぞれの試料から何がわかったか、二つの小惑星についてどのような成り立ちが推定されるか、まとめて聞いてよく理解できました。

リュウグウの試料(微小)は、コンタミや紛失を防止するために、カーボンナノチューブの毛で作ったブラシのようなものに載せて保管・運搬されたそうです。接着剤など使わなくても分子間力でくっつくそうです。こういう細かなノウハウの話が分析化学らしくて楽しかったです。

小学生から高校生までの若い人たちも聴きに来ていて、質問が多く出ました。

 市民公開講演会「文化財をはかる,なおす,まもる分析化学」
こちらは京都らしい企画でした。文化庁が京都へ移転したところでもあり、職員の方の講演から始まりました。
寺院などに使われる赤色顔料にはベンガラ(Fe2O3)、朱(HgS)、鉛丹(Pb3O4)の3種類があり、さらにベンガラにも6種類あるそうです。なるほど文化財を調べて修復するにも分析化学は必須だなと思いました。
分析手法としてはXRFが圧倒的に多いようです。XRDも一部使われているようです。非破壊分析となると、やはりX線が主役のようです。

 その他の発表で聞いたことメモ
○基盤技術が大切という話
コベルコ科研の方がものづくりを支える分析化学のテーマで話され、
「新人には前処理や重量分析や容量分析といった基盤技術をまずやらせる。それなしで最先端の分析をやってもわからない」
と言っておられました。物質量を体感できるのは、確かに重量分析や容量分析ですね。

○顕微FT-IRではウール1本も破壊分析
犯罪捜査で単繊維を分析する話の中で、赤外の透過測定では衣類の繊維もつぶさなければ測れないと言われてました。発表自体は放射光によるXRFの話でしたが、あんな細いものでも透過IRは無理なのかと、変なところで感心しました。

○定量NMRで使う同軸チューブ
ポスター発表より。NMRチューブの中にもう1本の細いNMRチューブを入れ、その中に定量用標準物質の溶液が入っているというもの。標準物質を試料と混合しないので、繰り返し利用でき、吸湿性の試料には特に有利。これは便利そう。

○HPLC用フェニル系カラム
ナカライテスクのポスター発表。フェニル系のカラムには芳香環が一つのものだけでなく二つとか四つのものがありますが、環が増えるほど芳香族化合物の保持が強くなるかと思いきや、環の数だけが影響するわけではなかったという話。環のつながり方も大事で、ナフチル基やピレニル基のように平面的なものと、ビフェニル基のように自由回転するものとでは違っていたとのこと。多置換ブロモベンゼンを使って実験し考察した過程が面白かった。

 女性研究者ネットワークカフェ みんなのキャリアデザイン交流会
お弁当を食べながら、たまたま着席した場所が近い4人ずつが話す、というシンプルな企画でした。特にテーマは設定されておらず、各グループに運営側が入って話題提供するといったこともなく、完全に自由なおしゃべりの会でした。
私のグループはM1の学生さん2名と理研の研究者の方でした。こういう機会が無ければ話をすることなどないと思われる方々でした。
当然それぞれの仕事や研究の話をして、それが一とおり済んだところで理研の方が
「いま若い人たちには何が流行ってるの?」
と言われました。ゲームやSNS?と私は勝手に想像していましたが、意外に「麻雀」という答えでした。オンラインではなく、全自動卓でもなかったです。徹夜の測定の待ち時間中に行う麻雀で、誰が寝られるかを賭けて勝負するので、真剣だそうです。

 京都なのに「大阪締め」
懇親会は分析化学会近畿支部のいつもの雰囲気が色濃く、多くの種類の地酒の提供と紹介、「うーちまひょ」で始まる大阪締めと、にぎやかで和やかでした。
討論会を運営されたみなさま、お疲れさまでした。ありがとうございました。

参加者に配布されたバッグ。「おもしろおかしく」は堀場製作所の社是。字体が味わい深い。

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各プログラムの発表者名や所属は討論会ウェブサイトで見ることができます。
第84回分析化学討論会

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2024.04.21

資格について~実はTOEICが好きです

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化学分析に携わる人は、統計とパソコンと英語のスキルもある程度持つ方が良いと思います。統計については、通信講座の受講体験を書いたことがあるのでリンクしておきます。→ 現代統計実務講座を受講して(2004/6/20)) パソコンについては、私自身は業務上の必要に応じて基本ソフトの使い方を身につけてきただけで、特に書くことはありません。 今回は英語について書こうと思います。ただし、思い切り趣味的な視点からです。

私の場合、はるか昔に英検2級までは合格しましたが、一番力を入れてきたのはTOEICです。TOEICの悪評は世の中にたくさん出回っていますから、ここには書きません。検索すればいくらでも出てきます。悪評はさておいて、趣味嗜好として私はTOEICが好きです。
なぜ好きかというと、試験に集中する120分間の緊張感が良いのです。45分間のリスニング、続く75分間のリーディング。雑念をいっさい振り払って問題に集中する時間、終了時刻が迫って来る最後の10~20分間、相対的に丁寧に考える問題と直感だけでよしとする問題を見極める緊迫感、終了と同時に精神がゆるんで脳がどっと汗をかくような感覚、こういう濃密な時間が好きです。
試験自体は受検料がかかるので気軽には受けられませんが、公式問題集を何冊も買い、自宅で時間を計って解いてきました。問題内容を忘れた頃に、また1冊目に戻って解きました。
120分間といえば映画を1本観る程度の時間ですが、映画にも他の娯楽にも無い独自のエンタメ性がTOEICにはあると思います。

それから、TOEICのスコアは自分の英語力を周囲に示す指標として強力に働きます。指標として適切か疑わしいとは誰でも言うところですが、今のところ、TOEICのように低コストで代わりになるものが無いので仕方ありません。私はかれこれ10回近く受検し、最高スコアは950です。流暢にしゃべれるようなレベルではありませんが、職場内で英語ができる人として認められるにはこの程度で十分です。

また、TOEIC受検は世間の悪評ほど英語学習の役に立たないわけではないと私は考えています。公式問題集の音声を繰り返し聴くうちに、ある時点で急に耳から入る英語をそのまま理解できるようになりました。ただし発話はできるようにならないので、レアジョブも2年間くらいやりました。

以上は完全に私の趣味嗜好の話です。そんな嗜好はまったく無いという方には何の役にも立たないと思います。しかし、実は自分がTOEICが好きなことに気づいていない人がもしいれば、参考になるかもしれないと思って書きました。

画像はPixabayから。Image by Markus Winkler from Pixabay

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2024.04.14

資格について~LC分析士の出現は予想されていた?

先週 化学分析にかかわる資格(1)(2)(3) を書きましたが、実際に資格取得ってどの程度お勧めできるものなんだろう?とあらためて考えました。
私としては、あくまでどんな資格があるか紹介しただけで、個別の資格取得の価値については個人が判断すれば良いとの立場です。とはいえ、世の中には「資格ビジネス」「資格商法」「資格マニア」といった言葉が悪い意味で出回っている現実もあります。資格取得に当たって注意しなければならないことがあるならば、それも書いておこうと思い立ちました。

個人で大したことができるわけではないですが、図書館で資格に関する本を借りて読んでみました。次の6冊です。(刊行年の新しい順)

①『THE21』編集部『会社に頼れない時代の「資格」の教科書』PHPビジネス新書 (2019)
②佐藤留美『資格を取ると貧乏になります』新潮新書 (2014)
③高島徹治『40歳からは「この資格」を取りなさい』中公新書ラクレ (2013)
④須田美貴『資格ビジネスに騙されないために読む本』鹿砦社 (2012)
⑤佐々木賢『資格を取る前に読む本: 資格社会の秘密』三一新書 (1996)
⑥今野浩一郎・下田健人『資格の経済学: ホワイトカラーの再生シナリオ』中公新書 (1995)

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大雑把に言って、①③は資格取得を推奨、②④⑤は資格ビジネスや資格礼賛に批判的、⑥は経済学部の先生による資格研究です。

 「資格商法」について
一番気になったのは、「資格商法」なるものが、私が紹介したような化学系資格にも存在するのか?という点でした。これについては、②④⑤を読む限り、どうも無さそう、または、あっても目立ってはいないようだと感じました。
④『資格ビジネスに騙されないために読む本』に書かれていることですが、資格取得のための学校が
「資格を取れば開業できる」
と宣伝して生徒を集め、合格者に対しては「開業講座」を勧め、実際には修了者が開業しても一向に顧客がつかない・・・という事例があるそうです。開業講座は俗に「ヒヨコ食い」と呼ばれており、特に社会保険労務士と行政書士向けが多いと書かれています。「ヒヨコ食い」の語は②『資格を取ると貧乏になります』でも紹介されています。

このような話がどの程度本当なのかはわかりませんが、こういう商法が成り立つためには、資格取得そのものは超難関というほどでなく、目指したいと考える人(客)が多く、開業できそうな期待感がある・・・という条件が必要でしょう。私が紹介した資格はほとんど開業につながるようなものではありません。例外は技術士くらいですが、技術士は難関資格なうえに、受験資格として実務経験が必要です。というわけで、化学分析にかかわる資格は、商法のネタに向かないものばかりだと思います。
2024/4/16追記 なんと自分自身が統計の資格に関連して「資格商法」にはまっていたことを思い出しました。現代統計実務講座を受講して (2004/6/20)

 資格の分類
化学分析にかかわる資格(2) で資格を「国家資格」と「民間資格」に分けました。⑥『資格の経済学』によれば、もう一つ、「公的資格」に分類されるものもあるそうです。これは「資格付与の一定の基準を所管庁が認可し、それに関わる業務を外部の財団法人等の団体に実施させているもの」で、具体的には実用英語技能検定、消費生活アドバイザー、秘書技能検定などが該当するそうです。知りませんでした。
さらに、資格は「職業上、どのような機能をもっているか」という基準から「業務独占資格」と「能力認定資格」に分類できるそうです。
「業務独占資格」は資格がないと当該業務に従事できない資格。これはさらに「職種型」と「職務型」に分かれ、職種型は税理士、公認会計士、弁護士など、職務型は危険物取扱者、毒物劇物取扱責任者などです。
「能力認定資格」は一定の技能・知識を有していることを認定する資格で、技術士、技能士などです。世の中の資格の大多数は能力認定資格だそうです。

 資格重視は事務系より技術系?
「資格商法」など負の側面から資格を取り上げた書籍ではもっぱら事務系の資格が挙がっていました。資格といえば事務系がメジャーなのかなと思いましたが、『資格の経済学』では、技術系こそ資格が重視されていると述べています。
その理由は受験者の多さで、この本のまとめによれば、技術系主要資格の受験者数は事務系のそれを上回っているそうです。古い本なので1992年の数字ですが、技術系の受験者数は約92万人、事務系は約31万人だったそうです。
ただしその内容は、技術系は危険物取扱者41万人、情報処理技術者39万人など、事務系は宅地建物取引主任者約20万人、行政書士約3万6千人などなので、技術系VS事務系というより、危険物取扱者と情報処理技術者の受験者が際立って多いことを示しているだけかもしれません。
それから、挙げられた資格から気づいたのは、技術系は会社に言われて受験するような資格が多く、事務系は本人が独立開業できるような資格が多いということです。この点からも、技術系の資格は資格商法のターゲットになりにくそうだと思いました。

 これからの技術系資格を担うのは学会や専門機関?
『資格の経済学』は30年も前に出版された本ですが、興味深いことが書かれています。ちょうどバブルが崩壊して日本型の年功序列や終身雇用が変化し始めた頃で、新しい資格体系の整備が必要だと書かれています。そして誰がそれを主体的に進めるかについて、次のように書いています。
「当該の資格に直接関与する業界団体やホワイトカラーの職能団体が重要な役割を果たすことが期待される。」
「ホワイトカラーの分化した高度な専門能力は、その道の専門家集団しか評価できないからである。」
「技術者の場合には、幸いなことには、学会という一種の専門分野別の職能団体がある。」
「技術系ホワイトカラーの資格制度の整備は、専門家が集まる学会等の機関に任せてはどうであろうか。」
化学分析にかかわる資格(2) で紹介したとおり、日本分析化学会などの学会やその他の専門組織がいろいろな資格制度を運用しています。紹介した中では2006年に開始された環境測定分析士が最も早く、次いで2007年に検査分析士、2010年に液体クロマトグラフィー分析士が始まりました。
学会等が認定する資格制度・・・その必要性を訴える本が1995年に出ていたとは。制度を支えるみなさまに、あらためて敬意を持ちました。

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2024.04.09

化学分析にかかわる資格(3)関係がある国家資格

今回は、化学分析と何らかの関係がある国家資格を紹介します。これが3回シリーズの最終回です。

 公害防止管理者(国家資格)
公害防止管理者は「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」という長い名前の法律に基づく国家資格で、経済産業省と環境省の管轄、一般社団法人 産業環境管理協会が指定試験機関です。歴史的な背景など、詳しい紹介や受験案内がこちらに書かれています。
公害防止管理者(産業環境管理協会)
法律で定められている「特定工場」では公害防止管理者の選任が義務づけられています。公害防止管理者には大気関係第1種~4種、水質関係第1種~4種、騒音・振動関係・・・など13種があり、公害発生施設の区分ごとに選任できる資格者の種類が決まっています。国家試験の試験区分も13種類です。試験科目数は18で、13種類の区分ごとに18の中から必要な科目を受験します。試験科目は「公害総論」「大気概論」などで、直接化学分析を意味する科目名はありません。
ぶんせき誌2012年3号の解説では、公害防止管理者が行う業務が色々挙げられていますが、その中には「使用する燃料や原材料の検査」「排ガスや排出水等のモニタリング及びデータの管理」が含まれています。このあたりが化学分析に関係すると思われます。

 技術士(化学など)(国家資格)
化学分析にかかわる資格(1) で紹介したとおり、ぶんせき誌2012年5号の解説によれば、技術士の21の技術部門の中で環境部門にだけ「環境測定」という化学分析の比重高めの選択科目があります。この他にも化学、金属、資源工学、衛生工学、農業、林業、応用理学、生物工学、原子力・放射線、技術総合監理の10部門に化学系及び分析技術者・研究者に関わりの大きい選択科目が含まれるとのことです。
ミニファイル 分析がかかわる資格 技術士
受験方法などは 化学分析にかかわる資格(1) の技術士(環境)をお読みください。

 エックス線作業主任者(国家資格)
エックス線作業主任者は、労働安全衛生法及び労働安全衛生法施行令の規定に基づく「電離放射線障害防止規則」に定められている国家資格です。厚生労働省の管轄で、指定試験機関は作業環境測定士と同じ、公益財団法人 安全衛生技術試験協会です。
エックス線作業主任者(安全衛生技術試験協会)
この資格はX線を発生する機器を安全に使用するための資格です。つまり、分析をする資格ではなく、分析に使う機器の安全のために必要な場合がある資格、ということです。
ぶんせき誌2012年10号の解説によれば、X線を発生する装置としてX線透過試験装置、X線回折装置、蛍光X線分析装置、X線マイクロアナライザー、X線応力測定装置が挙げられています。ただし、これらの装置で必ずエックス線作業主任者の選任が必要というわけではないようです。

 放射線取扱主任者(国家資格)
放射線取扱主任者は「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」に基づく国家資格で、文部科学省が管轄、公益財団法人 原子力安全技術センターが指定試験機関です。受験案内はこちらです。
放射線取扱主任者試験(第1種、第2種)(原子力安全技術センター)
放射性同位元素(RI)や放射線発生装置を使用する施設では、放射線取扱主任者(国家資格保有者)を選任しなければなりません。放射線取扱主任者には第1種~第3種があります。大雑把に言えば、第1種は密封線源も非密封線源も放射線発生装置も管理でき、第2種は密封線源だけを管理でき、第3種は小さな密封線源だけを管理できます。第1種と第2種は試験がありますが、第3種は講習の受講のみです。
化学分析との関係ですが、ラジオイムノアッセイや同位体希釈分析など、RIを使って高感度に分析する手法があります。また、放射性物質の分析を行う際に標準物質としてRIが必要です。
私は第1種放射線取扱主任者の資格を持っていますが、取得した目的は研究所の生物部門で使われるRIの管理のためでした。自分自身はRIを利用する分析をしたことはありません。ただ、ガスクロマトグラフの電子捕獲型検出器(ECD)には63Ni線源が使われていて、古い装置で第1種または第2種の資格が必要だったため、これも管理していました。
第1種放射線取扱主任者の試験は物理・化学・生物(放射線の生体への影響)・測定技術・管理技術・法令と盛りだくさんで難しかったです。試験には2回落ちて3回目にやっと合格しました。
30年以上前には生物の実験でRIを使うのは珍しくないことでしたが、他の技術への置き換えが進んでRI利用は減っていると思います。免状交付数を調べてみました。
放射線取扱主任者免状の公布状況(昭和33年度~令和元年度)(原子力規制委員会) (平成15年度までは5年ごとの合計であることに注意。また、「公布」は「交付」の誤りと思われる)
長期的には減少傾向ですが、平成24年度(2012年度)に第1種が急に増えました。2011年に福島第一原子力発電所の事故が起きたことによると思われます。

 危険物取扱者(国家資格)
危険物取扱者は消防法に基づく国家資格で、指定試験機関は一般財団法人 消防試験研究センターです。甲種、乙種、丙種があり、乙種には第1類から第6類があります。受験方法などはこちらです。
危険物取扱者試験(消防試験研究センター)
一定数量以上の危険物を貯蔵し、または取り扱う化学工場やガソリンスタンドなどには危険物取扱者を置かなければなりません。
危険物取扱者は身近な資格で、私の以前の勤務先では同僚に複数の資格保有者がいました。研究所で扱っていた危険物はたいした量ではなかったため危険物取扱者が必要というわけではありませんでしたが、資格を持っているだけで化学系としてカッコ良くていいな~と思いました。私の危険物取扱者に関する知識はこの程度です。ぶんせき誌の連載「ぶんせきがかかわる資格」で危険物取扱者は取り上げられなかったので、薄い内容になりすみません。

 薬剤師(国家資格)
薬剤師は薬剤師法に基づく国家資格で、厚生労働省が試験を行っています。受験案内はこちらです。
薬剤師国家試験(厚生労働省)
薬剤師という職業はヨーロッパでは歴史が古く、街の化学者という性格があったようです。現代の日本でも「薬局等構造設備規則」というものがあり、薬局にはビーカー、メスピペツト、メスフラスコまたはメスシリンダー、ロート(または、それぞれ同等以上の性質を有するもの)を備える必要があります。薬剤師と分析化学にどのような関係があるかは下記の解説に詳しく書かれています。
向日良夫「話題 資格試験から見る分析化学」ぶんせき, 2007, 145 (2007)
国家試験では滴定やクロマトはもちろん、原子吸光、NMR、熱分析、旋光度、導電率などなどが出題されます。薬剤師資格は2006年度から6年制に移行し、2012年度からそれに対応した国家試験になっています。それでも薬学部のコアカリキュラムを見る限り、分析化学の幅広い分野を履修することに変わりはないようです。
薬学教育モデル・コア・カリキュラム-令和4年度改訂版-(文部科学省)
薬剤師といえば医療職であることは間違いないですが、薬剤師なのに病院にも薬局にも勤務せずに化学分析に携わっている人は多いです。私もその一人です。健康に関わる分析においては、化学がわかって生物もわかる人材が重宝されるからではないかと思います。

 臨床検査技師(国家資格)
臨床検査技師は「臨床検査技師等に関する法律」に基づく国家資格で、厚生労働省が試験を行っています。「臨床検査技師等」の「等」がどういう意味か気になりますが、「衛生検査技師」が入っているようです。「衛生検査技師」は既に新規免許が廃止されている資格ですが、この資格を持って業務をしている資格者が引き続き業務をできる条項が「臨床検査技師等に関する法律」に含まれているようです。
臨床検査技師国家試験の受験案内はこちらです。
臨床検査技師国家試験の施行(厚生労働省)
ぶんせき誌2012年7号の解説によれば、民間資格で「臨床検査士」「緊急臨床検査士」があるようです。また、2007年3号の解説 によれば、国家試験では確認試験、各種分光法、クロマトグラフィー、免疫測定法、電気泳動法、画像診断法が出題されるそうです。

 診療放射線技師(国家資格)
診療放射線技師は診療放射線技師法に基づく国家資格で、厚生労働省が試験を行っています。受験案内はこちらです。
診療放射線技師国家試験の施行
ぶんせき誌2012年7号の解説によれば、X線写真撮影や造影検査のほか、放射線治療や核医学の分野で診療放射線技師が活躍しているとのことです。また、2007年3号の解説 によれば、国家試験では放射線測定、画像診断法、イムノアッセイ、クロマトグラフィー、電気泳動法が出題されるそうです。

以上、3回にわたって化学分析にかかわる資格をご紹介しました。私自身の知識に偏りがあるため、いずれの資格についても最適な解説にはなっていないと思います。興味のある資格が見つかったら、自分で調べてみてください。
なお、国家資格の場合、資格の名称で検索すれば非常に行き届いた解説も見つかりますが、有料で通信教育などを提供しているサイトにはリンクしませんでした。私がお勧めしているように受け取られたら良くないと考えたからです。ただし指定試験機関は有料のサービスがあってもリンクしました。

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2024.04.08

化学分析にかかわる資格(2)関係が深い民間資格

化学分析と関係が深い民間資格について書きます。
国家資格にはそれぞれ根拠法令があって、
「この資格を与えるのは○○大臣」
「この業務はこの資格がある人しかやってはダメ」
「この資格名を勝手に名乗ったらダメ」
などときちんと決まっています。これに対して、国家資格ではない資格が多数あります。「民間資格」という名称がどの程度正確かはわかりませんが、国家資格に対して民間資格と呼んでおきます。

 液体クロマトグラフィー分析士
分析士とは、公益社団法人 日本分析化学会 が認証している資格です。分析全般というわけではなく、特定の分析手法に対応する分析士の称号があります。また、初段から五段の段位があります。手法と段位を組み合わせて「液体クロマトグラフィー分析士初段」のような称号となります。
日本分析化学会には分析手法や分野に応じて研究懇談会が設置されており、その数は現在19です。液体クロマトグラフィー分析士の認証試験は、研究懇談会の一つである液体クロマトグラフィー研究懇談会が担当しています。受験案内などはこちらです。
分析士認証試験(液体クロマトグラフィー研究懇談会)
初段は誰でも受験可能ですが、二段以降はそれぞれ前の段を合格し、登録されていなければ受験できません。また、同じ年度内には一つの段位しか受験できません。つまり、五段を取得したい場合には一年に一段ずつ、最低5か年度にわたって受験する必要があります。
五段ともなると「論文の査読・指導、学位論文の審査、国際会議において存在価値が評価される質疑応答ができる」ことが求められ、論文発表実績、講習会・講演会における講師実績、国際会議における座長・依頼講演実績などなどを申告するというすごい資格です。
どんな問題が出題されるのか、初段だけサンプル問題が分析化学会のサイトに掲載されています。初段は極めて簡単な問題が出るようです。五段までどのような階段になっているのか・・・相当の高低差がありそうです。
分析士会・分析士認証試験(日本分析化学会)
液体クロマトグラフィー分析士試験が初めて実施されたのは2010年10月で、その試験では約300名が合格したそうです。この資格を取得する意義などは下記を参照してください。
ミニファイル 分析がかかわる資格 クロマトグラフィー分析士
なお、分析化学会の組織として「分析士会」があり、ウェブサイトには分析士の名簿や行事案内が掲載されています。
公益社団法人 日本分析化学会 分析士会

 LC/MS分析士
LC/MS分析士も分析化学会が認証している分析士資格の一つで、液体クロマトグラフィー研究懇談会が担当しています。「液体クロマトグラフィー質量分析分析士」とは書かれておらず、「LC/MS分析士」が正式名称のようです。
受験案内はLC分析士試験と同じページにありますが、当面の実施予定は現時点では掲載されていません。
分析士認証試験(液体クロマトグラフィー研究懇談会)
初段のサンプル問題もLC分析士試験と同じページにあります。LC分析士初段よりは少し難しいですが、簡単な問題です。
分析士会・分析士認証試験(日本分析化学会)

 イオンクロマトグラフィー分析士
これも分析化学会が認証する分析士資格で、イオンクロマトグラフィー研究懇談会が担当しています。概要説明や過去の試験問題はこちらにあります。
イオンクロマトグラフィー分析士
イオンクロマトグラフィー分析士試験の当面の予定は掲載されていません。

日本分析化学会の研究懇談会は19もあるので、今後他にも「○○分析士」ができるのかもしれませんが、現時点では上記3分析士だけです。LC分析士があるならGC分析士も期待してしまいます・・・

 医用質量分析認定士
エックスのコメントで教えていただいた資格です。医用質量分析認定士は一般社団法人 日本医用マススペクトル学会が認定する資格で、2013年度に始まったそうです。資格取得の条件は、学会会員であることと、学会主催の医用質量分析認定士講習会に参加して同時に行われる試験に合格することの二つだそうです。規程には
「本制度は先天代謝異常症の診断、医薬品のTDM、薬物中毒診断、臨床化学、臨床微生物等、質量分析技術の医療応用に従事する者および従事予定の卒業見込み者を対象とする。」
とあります。これが資格内容も表していると考えられます。5年ごとの更新が必要です。詳しくは学会ウェブサイトをご覧ください。
一般社団法人 日本医用マススペクトル学会

 医用質量分析指導士
経歴10年以上の医用質量分析認定士に対して「医用質量分析指導士」の称号が付与されるそうです。ただし、医用質量分析認定士の資格が取り消されたときは医用質量分析指導士の資格を喪失するとのことです。
一般社団法人日本医用マススペクトル学会医用質量分析認定士制度規程

 検査分析士
検査分析士は、 特定非営利活動法人 分析産業人ネット が認定する資格です。初級、中級、上級、特級があります。
ここまでご紹介した資格はすべて分析手法に対応していましたが、検査分析士は「機器分析技術」が対象なので、範囲は広めのようです。初級の受験を申し込むと「初級検査分析士資格試験テキスト」が配布され、この範囲内で出題されるようです。下記から例題を読めますが、その限りでは吸光光度法、蛍光光度法、LCの3つが出ています。
2024年度検査分析士認定試験(一斉試験)について
検査分析士上級は、初級の範囲に加えて、16手法から2手法を選択して試験を受けるそうです。16手法が何かは上記リンクに書かれていて、LC、GC、LC-MS、GC-MS、UV/VIS、FT-IR、NMRなど一般的な機器分析手法が挙げられています。
検査分析士特級は、上級試験に合格した人だけが受験でき、論述試験と面接試験があるそうです。論述試験では出題された課題を自宅で10日間以内に作成して提出するとのことで、上記サイトにはどんな課題か書かれていませんが、ぶんせき誌2012年12号の解説によれば、「後継者の教育が可能なテキストの制作」だそうです。また、同解説によれば、検査分析士の試験は2007年に始まったそうです。
面白いのは、初級・上級・特級が世阿弥のいう「守、破、離」に対応しているという理念です。分析化学会の分析士が「段位」になっていることといい、何だか古風です。なお、中級は上級の受験者が1科目だけ合格した場合に与えられる級です。
資格認定基準
検査分析士会があり、継続的な教育制度が用意されているそうです。
検査分析士会

 シニア検査分析士
検査分析士資格を保持し、満60歳以上で、一定の条件があれば、「シニア検査分析士」の称号が付与されるそうです。ボランティア活動として機器分析を通じて社会への貢献をする時に役立つようです。
シニア検査分析士

 環境測定分析士
環境測定分析士は一般社団法人 日本環境測定分析協会が認定する資格で、1級から3級があります。2006年に開始されたそうです。こちらに詳しい説明があります。
環境測定分析士、環境騒音・振動測定士
パンフレットによれば、大阪府や鳥取県では入札の際に必要な業務責任者等の資格として環境計量士(濃度)、技術士(環境等)と並んで環境測定分析士が挙げられているそうです。環境計量士(濃度)と技術士(環境)、この2つの国家資格は 化学分析にかかわる資格(1) で取り上げましたが、どちらもかなり難度が高いと思います。これらに並ぶ資格とは、評価が高そうです。
試験範囲を確認したところ、環境計量士(濃度)と重なっているように見えます。しかし2級は3年以上、1級は5年以上の実務経験が必要であり、実技試験と面接試験もあります。3級はそのようなことはなく、選択式の筆記試験のみです。
以下は私の想像ですが、3級は環境計量士(濃度)にチャレンジ中の人が一定の実力を証明するため、2級と1級は環境計量士(濃度)では試験されない実務経験や実技スキルを証明するために利用されているのかなと思いました。
(間違っていればご指摘をお願いします。)

 食品分析士
食品分析士は 一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC が運営する認定制度で、2023年に始まったばかりの新しい資格です。詳しい受験案内などはこちらです。
食品分析士/食品品質管理士
栄養成分表示のための高含量成分の分析や、極めて低含量の有害物質の分析などに必要な法令、基礎的な分析操作、機器分析まで、幅広く体系的に学ぶことができるそうです。現時点では3級の案内だけが掲載されており、試験範囲は基礎的な化学や前処理に加えてGC、LC、原子吸光、ICP、ICP-MSの5つの機器分析です。受験はオンラインでいつでも可能(90分間)、不合格の場合には申し込みから180日間はもう1回だけ再受験可能だそうです。2024年度には2級も実施されるとのことです。

以上、化学分析と関係が深い民間資格をご紹介しました。
民間資格は国家資格とは異なり、法令によって特定業務と結びついているわけではないので、技能を客観的に証明したり個人の研鑽の目標にしたりといった利用法が中心になります。受験する場合は、目的と資格内容をよく検討してください。また、せっかく取得した資格は価値を持ち続けてほしいものですから、継続性も重要です。主催団体についてもよく調べてください。

個人的な感想ですが、どの主催団体の説明にも、日本の科学技術レベルを高めたい、後進を育てたい、との熱意を感じました。また、それぞれの資格は他にはない役割を持っていると思いました。国家資格でない資格を維持していくことには困難もあるでしょうが、資格者の方々への責任もありますから、主催者のみなさまには、対象の技術が必要とされる限り制度を続けていただきたいと思いました。

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2024.04.07

化学分析にかかわる資格(1)関係が深い国家資格

新年度です。今年はいま桜が見ごろという地域が多いようです。新入学・新社会人・新年度にキャリア上の目標を何か持ちたいと考える方もおられると思い、化学分析にかかわる資格を調べてみました。写真は一昨日見た大阪市内の桜です。(靭公園から大阪科学技術館を望む。)

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化学分析にかかわる資格は予想外に多かったので、3回に分けて書きます。このリストで漏れているものにお気づきの方は、コメント欄または エックス でお知らせいただければ大変ありがたいです。
化学分析にかかわる資格

(1)関係が深い国家資格
環境計量士(濃度関係)
臭気判定士
作業環境測定士
化学分析技能士
職業訓練指導員(化学分析科)
技術士(環境)

(2)関係が深い民間資格
LC分析士
LC/MS分析士
IC分析士
医用質量分析認定士
医用質量分析指導士
検査分析士
環境測定分析士
食品分析士

(3)関係がある国家資格
公害防止管理者
技術士(化学 等)
エックス線作業主任者
放射線取扱主任者
危険物取扱者
薬剤師
臨床検査技師
診療放射線技師

参考にしたのは、日本分析化学会の機関誌「ぶんせき」で2012年1号から12号まで連載された「ミニファイル 分析がかかわる資格」と2007年3号に掲載された 向日良夫「資格試験から見る分析化学」です。

 環境計量士(濃度関係)(国家資格)
計量士は計量法に基づく国家資格で、経済産業省が試験を実施しています。
資格・試験に関するお知らせ(経済産業省)
計量士には一般計量士と環境計量士があり、環境計量士はさらに濃度関係と騒音・振動関係の二つに分かれています。環境計量士(濃度関係)は大気、水及び土壌中の物質の濃度を取り扱います。化学分析に関する試験問題は、JISに基づくものが多いです。
pHを「ピーエッチ」と読むか「ペーハー」と読むかで年齢がわかるという話がありますが、以前のJIS Z 8802 pH測定方法では「ピーエッチ」と定められていました。そして2011年に「ピーエッチ又はピーエイチ」と改正されました。それを受けてかどうかわかりませんが、2012年3月の環境計量士国家試験で「ピーエッチ又はペーハー」という選択肢を含む正誤問題が出ました。まるで「ペーハー」を敵視したかのような出題。ブログのネタにしました(pHをペーハーと読むのは誤り(JISでは))。きっちりJISに則った基本を学ぶ環境計量士さん、すごいなと思います。
脱線しましたが、真面目な解説はこちらで読めます。
ミニファイル 分析がかかわる資格 環境計量士

 臭気判定士(国家資格)
悪臭防止法に基づく国家資格で、環境省の管轄、公益社団法人 におい・かおり環境協会が指定試験機関(国に指定されて試験を実施する機関)です。
この資格を化学分析と関係が「深い」に分類するかどうか迷いました。というのは、ぶんせき誌の連載では「臭気判定士の業務において化学分析は一切行わない」と書かれているからです。
ミニファイル 分析がかかわる資格 臭気判定士
確かに、「化学分析」といえば滴定や分光やクロマトを使うものという考え方がメジャーかなと思います。しかし、私は官能試験も化学分析の一環ととらえ、「関係が深い」に分類することにしました。
すると、麻薬探知犬のハンドラーや調香技術師も化学分析をしているのか?という疑問が浮上しますが、これらは国家資格ではないので、今回調べる対象外にしました。
臭気判定士の受験方法などはこちらです。筆記試験と嗅覚検査があります。
国家資格「臭気判定士」(におい・かおり環境協会)

 作業環境測定士(国家資格)
労働安全衛生法に基づく国家資格で、厚生労働省の管轄、公益財団法人 安全衛生技術試験協会が指定試験機関です。
作業環境測定士(安全衛生技術試験協会)
作業環境測定法施行令第1条で定める指定作業場(鉱物性粉じん、放射性物質、特定化学物質、金属類、有機溶剤を取り扱う作業場)の作業環境測定を行います。第一種と第二種があります。
化学分析を行う職場の場合、年に2回の作業環境測定を行っているはずですから、そのような職場のみなさんは、スタッフの誰かが資格を持っているか、あるいは作業環境測定機関に委託して測定してもらっているでしょう。環境計量士と無関係な化学分析現場では、最も身近な国家資格と言えるかもしれません。
私は測定報告書を読ませていただくだけですが、作業場のきれいな図面に試料採取場所が書かれていて、法令との関係もあり、化学分析以外のスキルもかなり求められそうだなと感じます。

 化学分析技能士(国家資格)
職業能力開発促進法に基づいて実施される技能検定の合格者が「技能士」と称されます。厚生労働省の管轄で、都道府県職業能力開発協会が試験を実施しています。技能検定が行われている職種は現在131あり、造園、めっき、染色、家具製作、酒造、とび、左官、畳製作といった職種が含まれています。「職人」と形容される職種が多いように思います。
技能検定のご案内(中央職業能力開発協会)
1級~3級があり、学科試験だけでなく実技試験もあるのが大きな特徴です。実技試験では金属イオンの検出と定量分析を行います。受検者の作業態度や作業時間、ビーカーなどの器具や薬品の扱い方も採点されるそうです。化学分析技能士の資格取得を目指している学生の中から、技能オリンピックに向けて強化選手が選ばれたりもしているようです。
より詳しくはこちらをどうぞ。
ミニファイル 分析がかかわる資格 化学分析技能士
特集 令和の分析化学教育 化学分析技能士の資格取得に向けた取り組みと技能五輪国際大会への挑戦

 職業訓練指導員(化学分析科)(国家資格)
技能士と同じく職業能力開発促進法に基づく資格で、管轄は厚生労働省です。123の免許職種があり、ほぼ技能検定に対応しているようです。当然ですが「職業訓練指導員(化学分析科)」は技能検定職種「化学分析」に対応しています。
私もよく知らないので、興味がある方は厚労省の案内をお読みください。
職業訓練指導員になるには(厚生労働省)

 技術士(環境)(国家資格)
技術士は技術士法に基づく国家資格で、管轄は文部科学省です。公益社団法人 日本技術士会が指定試験機関です。21の技術部門があります。
技術士 Professional Engineerとは
ぶんせき誌の記事によれば、技術士は非常に高度で専門的な資格であり、化学、金属、資源工学など11の部門の選択科目が化学及び分析化学にかかわっているようです。エックスのコメントで、技術士(環境)が化学分析の出題に結構分析化学が入っていると教えていただきました。試験科目を見ると、確かに、技術士(環境)だけ「環境測定」というズバリの科目があります。
ミニファイル 分析がかかわる資格 技術士
技術士の試験問題が公開されているので、試しに昨年度分の環境部門の二次試験(記述式)の問題を読んでみました。
令和5年度技術士第二次試験問題[環境部門]
なんとⅡ-2-1は、分析に用いる試薬や移動相などの供給不測に責任者として対処する方策を問う問題です。実際に過去または現在において供給不足となった物質名を1つ例示して説明せよとあります。第一に思い浮かぶのはヘリウム、次に思い浮かぶのはアセトニトリルですよね。しかし、分析業界にいない学生さんや転職希望者には何も書けないのではないかと思いました。技術士はとても高度で専門的な資格という印象を深くしました。
なお、技術士に準じる「技術士補」という資格もあります。

(参考)「ぶんせき」誌2012年連載「ミニファイル 分析がかかわる資格」の記事一覧を載せておきます。PDFが無料公開されているものはリンクしています。再録集(Vol.1) が販売されています。

1号 臭気判定士
2号 一般計量士
2号 環境計量士
3号 公害防止管理者
4号 作業環境測定士
5号 技術士
6号 化学分析技能士
6号 クロマトグラフィー分析士
7号 臨床検査技師
8号 診療放射線技師
9号 放射線取扱主任者
10号 エックス線作業主任者
11号 食品表示検定
11号 栄養情報担当者
12号 検査分析士

※技能検定については「受検」、その他の資格については「受験」と表記しました。

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2023.12.03

TICかTICCか(GC/MSやLC/MSの用語)

この文章は長くなる見込みです。しかもくどくどしています。そこで、最初に結論を書きます。
「TICでもTICCでも良い。でもTICの方が短いから私は好き。」
結論だけ必要な方は、ここで読むのをやめてください。
なお、それぞれの語は次の語の略語です。
 TIC : total ion chromatogram
 (全イオンクロマトグラム)
 TICC : total ion current chromatogram
 (全イオン電流クロマトグラム)

1.TICとTICC 推奨状況の現状
国際純正・応用化学連合(IUPAC)は 2013年の勧告 でTICを非推奨、TICCを推奨としています。日本質量分析学会の「マススペクトロメトリー関係用語集(第4版)」はTIC、TICCとも認めていますが、後で述べるようにTICCの意味を限定していますので、一般的なユーザーにとっては実質的にTICが推奨語と思われます。
日本産業規格(JIS)の3つの規格
 JIS K 0214:2013 分析化学用語(クロマトグラフィー部門)
 JIS K 0123:2018 ガスクロマトグラフィー質量分析通則
 JIS K 0136:2015 高速液体クロマトグラフィー質量分析通則
はいずれもTICCのみを使用しており、TICの語を使っていません。
装置メーカーの対応は分かれており、分析画面やプリントアウトで表示される名称はTICの場合もTICCの場合もあります。

2.TICでなくTICCが推奨される根拠
日本質量分析学会の学会誌に2007年に掲載された解説「目から鱗のマススペクトロメトリー 第12回「Total Ion Chromatogram」と「TIC」∼「TIC」はトータルイオンクロマトグラムではありません∼」の内容を要約して紹介します。既にこの文章を読んだことがある方は3へ進んでください。

もともとTICの語はクロマトグラムを表すものでなく、「total ion current(全イオン電流)」の略語であったとのことです。そして、全イオン電流を保持時間に対してプロットしたクロマトグラムは「TIC chromatogram」と呼ばれます。「TIC chromatogram」を略さずに書けば
 total ion current chromatogram
すなわち「TICC」となります。それがなぜ「TIC」とも呼ばれるようになったのか。この解説では2つの説を述べています。
 説1 total ion current chromatogramからcurrentが欠落した。
 説2 TICのCがchromatogramのCであると誤解された。
いずれにしても、TICではイオンの何の数値を合わせたものか不明(電流値、質量などがあり得る)という理由から、TICCが正しく、TICは誤っていると書かれています。

3.IUPAC勧告の定義
TICCの項目はこのようになっています。

531. total ion current chromatogram (TICC)
   reconstructed total ion current chromatogram

Deprecated: total ion chromatogram.
Chromatogram created by plotting the total ion current in a series of mass spectra recorded as a function of retention time.
total ion chromatogramの略語としての「TIC」については明確に非推奨です。また、「reconstructed」つまり再構築されたものであることを示す語を並列で置いています。これがあることで、次に述べる日本質量分析学会の定義との違いが際立ちます。
なお、全イオン電流の意味での「TIC」は次の定義です。
530. total ion current (TIC)
Obsolete: after mass analysis, before mass analysis
Sum of all the separate ion currents carried by the ions of different m/z contributing to a complete mass spectrum or in a specified m/z range of a mass spectrum.
「質量分析前のTIC、質量分析後のTICといった表現は使われなくなった」と書かれています。この説明もまた、日本質量分析学会の定義との違いを際立たせます。

4.日本質量分析学会の定義
「マススペクトロメトリー関係用語集(第4版)」のTICとTICCの項目はこのようになっています。TICには2通りの意味があるとの立場です。

total ion chromatogram (TIC)
全イオンクロマトグラムまたはトータルイオンクロマトグラム:ガスクロマトグラフィー質量分析や液体クロマトグラフィー質量分析などにおいて,取得したマススペクトルの全体もしくは特定の広い m/z の範囲におけるイオンの検出器応答値の合計値をクロマトグラフィーの保持時間に対してプロットしたクロマトグラム.
注:略語 TIC を用いる場合は同じ略語が使用される全イオン電流 (total ion current: TIC) と混同されないよう留意する必要がある.

total ion current (TIC)
全イオン電流:ガスクロマトグラフィー質量分析などにおいて,質量分析装置に全イオンモニター(total ion monitor),あるいはビームモニター (beam monitor) と呼ばれる特別な電極を設けて測定した m/z 分離が行われる直前のイオン電流値.
注:略語 TIC を用いる場合は同じ略語が使用される全イオンクロマトグラムまたはトータルイオンクロマトグラム (total ion chromatogram: TIC) と混同されないよう留意する必要がある.

total ion current chromatogram (TICC)
全イオン電流クロマトグラム:ガスクロマトグラフィー質量分析などにおいて,全イオン電流値を保持時間に対してプロットしたクロマトグラム.

この定義にはびっくりするポイントが2つあります。
一つは、IUPAC勧告で非推奨とされているクロマトグラムの意味の「TIC」が非推奨でないこと。この用語集はIUPAC勧告準拠が基本方針なのに、異例です。もう一つは、「TICC」の意味が極めて限定的で、通常のGC/MSやLC/MSで出力されるクロマトグラムには使えず、実質的に「TIC」を推奨していると解釈できることです。

日本質量分析学会の「TICC」の意味が限定的とはどういうことか説明すると、電流のほうの「TIC」を「全イオンモニターあるいはビームモニターと呼ばれる特別な電極を設けて測定した m/z 分離が行われる直前のイオン電流値」と定義しているからです。
普通のGC/MSやLC/MSのユーザーにとっては、全イオンのクロマトグラムと言えば、マススペクトルに表れている各m/zのイオンの信号を総和してプロットしたものでしょう。「m/z 分離が行われる直前のイオン電流値」をプロットしているとは考えないし、私の知る限り、装置はそのような仕様になっていないと思います。
また、3で書いたとおりIUPAC勧告では「質量分析前のTIC、質量分析後のTICといった表現は使われなくなった」と述べているのですから、第4版で新たにこのように定義した理由がまったくわかりません。(用語集第3版では、TICは質量分離後に合計したものという意味になっていました。)

第4版が出た2020年以降、私はこの転換にモヤモヤしていましたが、一会員には情報が入りません。学会誌では追補版が出ていますが、そこでも説明されていません。
ところが最近、
「質量分析学会が翻訳しているGrossの教科書と関係があるかもしれない」
と聞きました。そこでその教科書を確認してみました。

5.Grossの教科書
その教科書とは J.H. Gross「マススペクトロメトリー 原書3版(日本版)」です。この教科書ではTICについてどのように書かれているのでしょうか。
冒頭に略語集があり、次のとおり3つが並んでいます。

TIC total ion chromatogram;  全イオンクロマトグラム;
   total ion current  全イオン電流
TICC total ion current chromatogram 全イオン電流クロマトグラム
いずれも非推奨でありません。一見、質量分析学会の定義に似ているように思われます。しかし、total ion currentの意味が異なっています。p.672にこのように書かれています。
 数十年前は全イオン電流(total ion current : TIC)が,質量分析に先立ってハードウェアTICモニター(hardware TIC monitor)で測定されていた(nA~µAの範囲).今日では,それに相当するものが質量分析後に再構成(reconstructed)または抽出(extracted)される.
これを素直に読めば、質量分析学会は数十年前に使われていたTIC(全イオン電流)の意味をわざわざ復活させて2020年発行の用語集に載せたことになります。Grossの解説は、IUPACの勧告にある「質量分析前のTIC、質量分析後のTICといった表現は使われなくなった」とも整合します。

ところで、Grossはクロマトグラムの意味ではTICとTICC、どちらの略語を推奨しているのでしょうか?その答えは実に明解で合理的です。p.673の表には、TICとTICCの他にRTIC(再構成全イオンクロマトグラム)とRTICC(再構成全イオン電流クロマトグラム)も挙げた上で、コメントとして次のように書かれています。

測定時間,保持時間,またはスキャン数に対して,マススペクトルあたりのピーク強度の総和をプロットしたもの.実際にはこれらはほとんど同じ意味で使用される.ここでは最も単純な語であるTICが推奨される.

6.結局どちらを使えばいいのか?
以上、各資料の記述をまとめると下の表のようになります。質量分析学会用語集第3版はIUPAC勧告と同じ定義でした。日本産業規格は1に挙げた3つの規格の状況ですが、いずれも学会用語集第3版に準拠しており、TICCの語だけを使用しています。

Ticticc

私は用語で迷った時にはできるだけ「最大公約数」を採用するようにしています。どの定義にも反しないように語を選ぶのです。学会用語集第3版までは、「TICC」を使っておけば「非推奨」に引っかかることはありませんでした。
しかし用語集第4版では、「TICC」の定義は極めて特殊な内容になりました。現在のGC/MSやLC/MSではほとんど使われない測定技術によるクロマトグラムが「TICC」であるとの定義になりました。

これはフルネームtotal ion current chromatogramを書けば解決するという問題ではありません。total ion current chromatogramの定義自体が変わってしまったからです。普通のクロマトグラムをTICCと呼びたければ、「質量分離後に再構成されたクロマトグラム」といった説明が必要になります。

いったいどうすればいいのか頭を抱えてしまいますが、Grossに習うのがストレスが少なそうだと思います。Grossの「マススペクトロメトリー」は、商品名だとして非推奨にされがちなDARTやOrbitrapの語も商品名とことわった上で使っています。TICもTICCもRTICもRTICCも紹介した上で、一番単純なTICがいいんじゃないのと言っています。実用性重視だと思います。
「TIC」の語はIUPAC勧告では非推奨、JISでは不掲載ですが、total ion chromatogramの略であることをちゃんと書いておけば、少なくとも誤解は生じません。逆に「TICC」を使った場合、学会用語集第4版に基づいて解釈されたら変な意味になってしまいます。

というわけで、冒頭に書いたとおり
「TICでもTICCでも良い。でもTICの方が短いから私は好き。」
というのが私の立場です。どちらの使用例を見てもいちゃもんはつけません。自分自身は好みで選びます。

2023/12/5 追記
J.H.Grossの教科書「マススペクトロメトリー」は税込み21,560円と高額ですが、TIC推奨部分を含むサンプルページのPDFが無料で公開されています。(p.673の表)
第14章サンプルページ

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2023.08.07

「ゼロから学ぶ 分析法バリデーション」

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分析法バリデーションに特化した学習用書籍、20年ぶりの刊行です。20年前に出た本は試薬会社による発行でしたから、出版社によるものとしては初めてではないでしょうか。価格が高めなので、購入判断のための情報が欲しいと思っている方がいるかもしれません。そのような方にも役立つように内容を紹介したいと思います。

 本の概要
「ゼロから学ぶ 分析法バリデーション」
香取 典子/著
2023年7月25日 発行
B5判 136ページ
6,600円(税込)

じほう社による書籍紹介 (概要、目次、序文を掲載)

42ページまでが本文で、ICH Q2に沿った分析法バリデーションの解説です。次にAppendixとして統計的な解析の解説が16ページ、用語解説が9ページ、資料編(ICH Q2(R2)分析法バリデーションガイドライン案、第十八改正日本薬局方第一追補よりクロマトグラフィー総論とシステム適合性)が56ページという構成です。

 ICHって何?
私のブログの読者で医薬品分析をしている人は少ないと思うので簡単に説明します。
ICHとは「医薬品規制調和国際会議」の略称です。医薬品の承認申請のルールを日米欧の3極間で調和させる活動をしています。詳しくは下記を参照してください。

ICH 医薬品規制調和国際会議 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構)

ICHでは色々なガイドラインを合意していますが、それぞれのガイドラインには記号が付けられています。例えば品質に関するものにはQ、安全性に関するものにはS、有効性に関するものにはEといった具合です。
Q2は分析法バリデーションに関するガイドラインです。これは1990年代に合意されたものですが、30年近くぶりの改正という大きな節目に差しかかっています。また、新たにICH-Q14が合意されようとしており これは分析法の開発に関するものです。このように分析法バリデーションに関わるICHのガイドラインが大きく変わる時期であるために、「ゼロから学ぶ 分析法バリデーション」が刊行されたと思われます。
現時点で2つのガイドライン案は、各極におけるパブコメや寄せられた意見に基づく修正段階のようです。案(原文、和訳)や最新の進捗状況は下記を参照してください。

ICH-Q2 分析法バリデーション (独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
ICH-Q14 分析法の開発 (同上)

 何が変わるの?
というわけで、「ゼロから学ぶ 分析法バリデーション」には、ICH-Q2の変更点と新設されるICH-Q14の内容が解説されています。主なポイントを紹介します。

・「分析法のライフサイクル」という概念の追加
・多変量分析法(近赤外分析など)に対応
・「特異性」は「特異性/選択性」に
・「直線性」「検出限界」「定量限界」は「稼働範囲」に
・「範囲」は「報告値範囲」に
・「頑強性」「システム適合性試験」はICH-Q14に

個人的には「報告値」という概念が新しいと感じました。これは、「測定値」が必ずしもそのまま報告されるわけではないからだそうです。言われてみれば確かに…と思います。

 食品分析や環境分析への影響は?
では、ICHにおける分析法バリデーションの変更は、食品分析や環境分析の分野にはどのように影響するのでしょうか?
ひとことで言えば、そんなにすぐに影響するわけではないと思います。ICHは医薬品の承認申請のためのガイドラインなので、直接関係があるのは製薬会社とその分析委託先です。いずれ日本薬局方に反映されるはずなので、そうなれば薬剤師の国家試験を受験する人も直接影響を受けるでしょう。
食品分析のGLPは厚労省の管轄ですし、薬品分析との技術的共通点も多い(ガスクロ・液クロが多用される、有機化合物の分析が多いなど)ので、日本薬局方が変わればそれに呼応した変更はあり得ると思います。環境分析はJISになっているものが多いので、薬局方は無関係と私は考えています。なお、私が知る限りJISに分析法バリデーションの規格はありません。(真度、併行精度、再現精度等の定義や求め方の規格はあります。)

 基本の解説もあり
ICHの変更点だけが解説されているなら読者対象はICHを熟知している人に限られそうですが、この本には「ゼロから学ぶ」と書名にある通り、変更点理解の前提となる基礎事項の説明があります。真度や精度の意味、統計の基礎(平均、標準偏差、母集団と標本、分散など)が書かれています。

 本を買うべき?読むべき?
それでは、この本を買うかどうか迷っている方のために、判断材料になりそうなことを書きます。書店で手に取ってみるのが一番ですが、それができない方は参考にしてください。なお、医薬品分析関係の方は職場で購入されるでしょうから、それ以外の分野を念頭に置いています。あくまで個人の見解です。

【買う価値がありそうな人】
〇分析法のバリデーションをする立場の人
〇分析法の論文を書く人
〇検量線の点数や精度評価の試行数をどうするか根拠がほしい人
〇分析法バリデーションに関する知識を整理したい人

【買うまでもないと思われる人】
ICH Q2(R2)案ICH-Q14案 を解説無しで理解できる人
△分析法のバリデーションをしない人
△自分の分野に波及してから対応すれば良いと思われる人

なお、ページ数のおよそ4割は「資料編」で、ここにはネットで無料公開されている文書が掲載されています。
ICH Q2(R2)分析法バリデーションガイドライン案(e-Govパブリック・コメント)
第十八改正日本薬局方第一追補

個人的には色々な情報を整理できて得るところが多かったです。このブログに書きたいトピックもあるので、おいおい記事にしていきます。

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2023.07.10

「ぶんせき」誌無料公開記事のPDFがある場所

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日本分析化学会の機関誌「ぶんせき」は、なかなか優れものの雑誌です。分析化学の基礎(サンプリングや各分析手法やデータの信頼性etc)から応用(環境や食品やバイオetc)まで、数ページから十数ページ程度の解説が毎月5報ほど掲載されています。ネットで検索しても得られない詳しい情報がまとめられ、しかも公式な文書に引用可能な文献の形で掲載されています。

私は10年ほど前に2年間「ぶんせき」の編集委員を務めさせていただきましたが、執筆依頼のたびに、各分野の専門家の方が実に快く引き受けてくださることに感心しました。分析化学会の歴史や信頼のなせるわざと思っています。

そういう「ぶんせき」ですが、過去分をまとめ読みしようとしたら、かなり参照しにくくなっていることに気づきました。再び探すのはちょっとたいへんなので、自分のメモのためにもどうなっているか書いておきます。

(1)2021年3号-現在の「ぶんせき」のウェブサイトはこちらです。
日本分析化学会機関誌「ぶんせき」
各号の目次が掲載され、伝統的に毎月一部の記事は無料公開されています。今後刊行される号もここに追加されていくと思われます。

(2)2019年1号-2021年3号の「ぶんせき」のウェブサイトはこちらです。
機関誌「ぶんせき」(アーカイブ)
残念ながら無料公開分の記事のみのリンク集です。目次が無いのでその他の記事のタイトルや著者はわかりません。
2023/11/4追記 このリンクは残念ながら無効になりました。(1)の範囲は増えていませんので、非会員は2019年1号-2021年3号の記事内容を参照できません。

(3)1996年1号-2019年12号の「ぶんせき」のウェブサイトはこちらです。
「ぶんせき」目次
全記事の目次と無料公開分の記事へのリンクがあります。現時点ではバックナンバーのほとんどはこのサイトにあります。

利用者の立場からは、3か所に分かれているよりは、全期間分を(1)のウェブサイトで閲覧できる方が便利だと思います。現状では(1)には(2)と(3)の存在について全く書かれていないので、事情を知らなければ、2021年2号以前の「ぶんせき」のサイトに行きつけません。

ところで驚いたのが広告ページの多さ。(1)で無料公開されている解説記事のPDF冒頭には約15ページも広告が付いています。従量課金の環境下ではダウンロードしないように注意した方が良いと思います。ただ、このような広告は(1)の中の解説記事だけのようです。(1)の中の技術紹介やリレーエッセイ等、また、(2)(3)からリンクしている全てのPDFには広告は無いようです。

なお、分析化学会の会員は会員マイページから2001年1号以降の全てのPDFをダウンロードできます。(1)の期間の解説記事についても広告なしのPDFとなっています。

冒頭の写真は会員に配布された最後の冊子版の「ぶんせき」です。表紙左下には次号から電子版に移行する旨のお知らせが書かれています。ちょっと寂しい記念写真です。

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2023.06.25

分析化学会近畿支部 創設70周年記念式典

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日本分析化学会の設立は1952年ですが、近畿支部はその翌年、1953年に創設されたそうです。昨日70周年記念式典が開催されました。 現時点で 近畿支部のウェブサイト に掲載されているのは3月2日付けの案内のみで、ここには記念講演の演者名があるものの、詳細なプログラムは書かれていません。いずれ「ぶんきんニュース」等で詳しい内容が掲載されると思いますが、一足早くレポートします。

日本分析化学会近畿支部創設70周年記念式典
―未来につながる分析化学―

2023年6月24日(土)
大阪工業大学梅田キャンパスOIT梅田タワーにて

10:30-11:30 【プレ企画】常翔ホール前
 学生ポスター発表 27題

13:00-17:00 【記念式典】常翔ホール

1.開会式

2.記念講演
「異分野融合による分析化学の価値向上と国際社会への貢献」
 島津製作所 代表取締役会長 上田 輝久
「科楽のすすめ ―知ることとはかること―」
 紀本電子工業 代表取締役社長 紀本 岳志

3.パネルディスカッション
「分析化学の将来をどう切り開くか」
 進行役 辻 幸一 (大阪公立大学工学研究科)
 支部長 山本 雅博(甲南大学理工学部)
 パネラー
  森 良弘 (同志社大学ビジネス研究科)
  吉田 裕美 (京都工芸繊維大学工芸科学研究科)
  永井 秀典 (産業技術総合研究所)
  鈴木 雅登 (兵庫県立大学理学研究科)

4.学生ポスター優秀賞表彰式
 審査委員長 白井 理 (京都大学農学研究科)

5.閉会式

17:30-19:30 【懇親会】リストランテ翔21

702
学会の支部の講演会に島津製作所の会長が!?
これにまず驚きました。上田会長のお話は、自身の経験から得てきた教訓、現在の島津の取り組み、パンデミックが社会を変えた世界史を振り返りつつ未来への展望、という流れでした。分析計測機器の世界市場規模は年間10兆円、島津のシェアは世界第8位だそうです。2026年に市場規模は14兆円になると予測されており、大きな市場というわけではないが確実に伸びているとのことです。世界企業らしい雄大なビジネスの話でした。

紀本社長は近畿支部の個性を表象しているような方で、「はかってなんぼ」のタイトルを考案された方です。100万年前に人類が道具を使い始めて以来の人類史を10万年前、1万年前、1000年前、100年前と対数目盛で俯瞰し、ギリシャ哲学者から現代の理論物理学者までの言葉を引きつつ、観測の重要性や基礎科学衰退への警鐘を語る内容でした。なかなか普段触れることのない教養です。ラファエロなどの絵に青いはっぴ姿の酔っぱらいが隠れている趣向でした。

パネルディスカッションは、最初に山本支部長から、支部会員の年齢層のピークが55~65歳にあり、若手を増やさなければ近い将来支部が衰退しかねない現状が報告されました。それを受けて、学会だけでなく分析化学そのものをどう発展させていくかについて話し合われました。
パネラーの皆さんの意見で共通していたのは、日頃自分が接する範囲の外の専門家と接する機会が欲しいということでした。その際、企業の専門家は対外発表のハードルが高いので、可能な範囲でしゃべれるような工夫が欲しいとか、くじ引きや席の近さでランダムに少人数で話せる場も良いとか、業務で参加すると情報収集が目的になるのでもっと自由に「妄想」を話せればとか、色々なアイデアが出ました。

懇親会で幅広い方々とお話ししました。私は2019年に東京へ転勤しましたが(東京へ転勤&国立衛研旧庁舎)、この春に近畿へ戻ってきました。近畿支部の行事に出席したのも久しぶりでした。しかし話を聞くと、私だけでなく近畿にずっとおられた皆さんもお互い結構久しぶりだったようです。新型コロナウイルス感染症の流行で対面の行事が制約された3年間、その制約が無くなって最初の大きな行事だったようです。
懇親会の締めくくりは恒例の紀本社長による「大阪じめ」でした。

森内実行委員長の発表によれば記念式典は143人、懇親会は104人の参加で、たいへん盛況だったようです。私がこれまでに参加した支部行事の中で一番大きかったと思います。

会場がまた素晴らしかったです。大阪工業大学の梅田キャンパスで、よくあるサテライトキャンパスではなく、高層ビルが丸ごとキャンパスだそうです。冒頭の画像は最上階のレストラン(懇親会場)から見下ろしたHEP FIVEの赤い観覧車です。梅田には高層ビルがいくつもありますが、観覧車を見下ろす眺めにははっとしました。
阪急ターミナルビルとヨドバシカメラとJR大阪駅がどんな位置関係にあるか、地上ではよくわかっていませんでしたが、俯瞰すると理解できました。写真を付けておきます。

この会場、一度は9月に記念式典の日程が決まって確保したのに、分析化学会年会と重なってしまったため急きょ6月に取り直したとのことでした。一等地の大人気の会場で、演者のスケジュール調整も含め、並々ならぬご苦労があったようです。これだけの企画を3カ月も前倒しとは、どんなに大変だったでしょう。タイミングとしては、先月新型コロナウイルス感染症が5類に移行したばかりで、解放感と祝賀ムードが一層盛り上がったように思います。

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