よそのお宅

2011.03.31

装置・試薬・学会・分析会社の更新情報をまとめ読みできるサイト

今までにも紹介したことがありますが、ぶんせきNET についてあらためて書いておきます。

ここでは化学分析に関連するサイトの更新情報をまとめて提供しています。対象は分析機器・実験器具・試薬メーカー、化学系学会、分析会社、業界団体等です。RSSリーダーに登録しておくとたいへん便利です。

2008年4月から「コンテンツ・マネジメント・システム(CMS)として、オープンソースのGeeklog」を使って提供されているようです。どういう意味か私にはよくわからないのですが、既に約3年間、安定してサービスが続いています。非常にありがたいです。

個人的にいちばん助かったのは、今年の1月のことです。「すべて分析化学者がお見通しです!」の著者校正も最終段階という頃、麻ひ性貝毒の国産検査キットが発売されたことをここ経由で知り、本の記述を少し変えました。

地震の直後も更新が止まることはなく、出荷遅延やイベント中止の情報が次々と流されています。最近は流通の正常化や定例イベントの復活の情報も増えてきて、業界の復旧の様子がわかります。

出てくるサイト名の多さから、化学系の仕事は特に様々な企業や団体の活動に支えられていることを実感します。ぶんせきNETのみなさんも、関連企業・団体のみなさんも、いつもどうもありがとうございます。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2009.01.24

サラリーマン分析屋ブログ用RSSリーダー

つむら@分析化学のRSSリーダー というページを作った。サラリーマン分析屋ブログの更新情報をまとめてチェックするためのもの。他にも該当ブログはたくさんあると思うので、知っている人は教えてください。

 サイドバーのリンク集を中止
5年前にこのブログを開設した頃は、まだブログという仕組み自体があまり知られていなくて、当然同業者のブログはほとんど見つけることができなかった。
徐々にブロガーが増えるにつれて発見するようになった同業者ブログを、ドリコムの「ブログリスト」を使って更新情報付きリンク集にしサイドバーに入れた。

同業者でない、いろいろな縁で知り合った人のブログはBlogPeopleを使って同じようにサイドバーに入れた。

この二つのサービス、当初は広告付きでなかったけど、利用者が増えた段階で広告が入るようになった。
私はこのブログと 本館 は有料サービスを使って維持しており、広告を一切入れたくないと思っている。ドリコムとBlogPeopleの配信してくる広告をうっとうしく思ったが、他の方法に切り換えるのも面倒で放置してきた。

でもそろそろなんとかしたいと、先週からこの二つをサイドバーからはずし、かわりにはてなを使って公開RSSリーダーを作成し、リンク情報を移した。

 このRSSリーダーの概要
私が5年前からはてなで開設している アンテナ は結構利用されているらしい。(PV数が公開されている。)はてなのサービスは無料で広告付きだけど、本館・ブログとは別のURLなので特に気にならない。RSSリーダーも同じように使えると思う。

はてなRSSリーダーはブログをグループ分けして更新情報を集めてくれる。今のところ「サラリーマン分析屋」「いろいろつながり」「食品安全情報ブログ」「分析の言葉検索」の4つのグループを作った。
「サラリーマン分析屋」はドリコムのリストに入れていたもので、RSSリーダーの表紙ページで表示される。これがこのリーダーのメイン。
「いろいろつながり」はBlogPeopleのリストに入れていたもの。
「食品安全情報ブログ」は畝山さんのブログだが、一日あたりの記事数が多いので独立したグループにした。
「分析の言葉検索」は、分析関連ネタを探すためのキーワード検索。

各記事の更新情報はタイトルのみ並ぶようにしてあり、タイトルにポインタを置くと概要が表示される。最新記事順なので更新頻度の低いブログの記事は見つけにくいが、サイドバーにある「サラリーマン分析屋 のフィード」に並ぶブログ名をクリックすれば、それぞれのフィードページでそのブログの記事だけを拾える。
ただし長期間更新のないブログの場合は記事が表示されないから元のブログまで読みに行くしかない。(サイドバーのアイコンOutsiteをクリックするか、またはフィードページのリンクから。)

 サラリーマン分析屋とは
ところで、何を基準にしてサラリーマン分析屋ブログを集めているか、ちょっと書いておく。
まず、化学分析に関わる仕事をしていること。
次に、その分析が他者から依頼されて行うものであること。つまり、化学分析をしていても、メインの業務が研究とか有機合成とかで、分析するものを自分で決める立場の人は含んでいない。
そして、化学分析についての記事を少しでも書いていること。

でも、この基準は厳密なものでなく、ちょっと違うけれど近そうなブログも私の考えで含めている。

私のこのブログはあまり更新頻度が高いとは言えないし、固めの話題しか書いていない。他のサラリーマン分析屋の皆さんのブログはもっと活発で親しみやすい。
それぞれのブログに対して、特にリンクのお知らせはしていない。不都合があれば津村まで御連絡を。

 関連する過去記事
半年に一回書くblogをめざして

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.07.27

たぐいまれなゼロリスクblog

 前の記事 で「結局、ゼロリスクで満足感だけ得ようというのは、かなり虫がいい考えかもしれない」と書いた。ところでよく思い返したら、ゼロリスクに近く、手間もかかっていないにもかかわらず、それなりに読まれて続いている珍しいブログがあった。
 「公開の場で書きたいけどリスクは負いたくない、手間もかけたくない、でも読者を獲得したい」という難しい要求を持つ人には参考になると思う。

 そのブログは、Tristarさんの CONCORDE 。私はココログを始めた直後からこのブログを愛読している。
 CONCORDEのテーマは「反ブログ・フォーラム至上主義」。「"その他大勢"の一般人は、ブログなんて書いてもろくに読んでもらえない。それよりもフォーラムに集まって話しましょう」という主題。私のブログは扱う範囲が狭いけど、CONCORDEも負けず劣らずマイナーなテーマだ。

 このTristarさん、徹底的にリアルの自分の臭いを消している。私は全部の記事を読んでいるが、いまだに年齢も職業も家族構成も居住地域も全くわからない。いつどこへ出かけたなんて行動も、いっさい出てこない。知り合いらしき人による書き込みも皆無。
 フォーラム至上主義を標榜するなら、フォーラムの魅力を具体的に語ったら?と思ったりする。いったいどこのフォーラムで、どんなハンドル名で書いてるんですか?と ずばり質問 したこともあるが、完全にノーコメントだった。

 記事の書き方もきわめて慎重だ。たとえば、荒れているブログや掲示板に嘆息する発言がときどきあるけれど、絶対にリンクなし。どこのことか特定せず、「某所」とか書かれている。もちろん他者に対する批判はほとんどない。ネットで自分に降りかかってくるかもしれない色々な災厄を案ずる発言が多数ある。( どうか、どうか...から続くいくつかの記事など。)

 CONCORDEは根本的なパラドックスを一つ抱えている。「"その他大勢"はフォーラムへ」の主張の根拠は、普通の人がブログをやっても 《コメント(0)|トラックバック(0)》の死屍累々を突きつけられることになる ・・・という点にある。だから、CONCORDE自体が、「死屍累々」の見本でなければならない。実際に、このブログへのコメントとトラックバックはかなり少ない。
 が、コメントもトラックバックも滅多に来ないブログなんて、続ける気がするだろうか。Tristarさんは、誰からも読まれなくても平気で書き続けられる人なのだろうか。
 実は違う、ということは、Tristarさん自身が何度も告白している。読まれたい、アクセスされたい。そういう正直な気持ちが随所に書かれている。(例:「ブログする自分」を棚卸ししてみた

 ならば、一般人なりの努力の仕方というものもある。それは「マメになること」。自分からあちこちのブログへ出向いてコメントする、トラックバックする、特に才気がなくても、いわば足でつながりを作っていく、そういうマメなブロガーだって多いではないか。
 ところが、Tristarさんはほとんどそういう行動には出ていない。ひたすら「待ち」の姿勢。マメでもない、リスクも取らない、それでもいつか自分のブログに共感する誰かに見つけられることを期待して待つ。そういう煮え切らない姿勢自体が、このブログの突っ込みどころ。実際、これまでにも何人かがこの点を指摘した。(Tokyo Forum 近所の人ん家に出かけてみよう! とか、ずばり Tristarさんは「自分のブログを読んで欲しい」んですか? というコメントとか。)でも、あんまり叩いたら今にも消えそうなせいか、みんな深くは追求しないんですね。

 そんなブログが既に半年続いていて、注目が集まった記事もいくつかあったみたいで、最近はなんか 始めたからには細くても長く続けてゆきたい という決意表明も出たりして、しかも「ココログプラス」のアクセス解析を使っている。ううむ・・・すごい・・・。
(ちょっと解説:ココログプラスのアクセス解析は、訪問者のIPアドレスやアクセス時刻を記録しないので、非常に 訪問者フレンドリー 。でも使用料がかかる。忍者システムズ等を使えば生々しい訪問者データを無料で取れるのに、それをしないでココログのアクセス解析を使うとは、なんと紳士的な・・・それに、ちゃんと自分のサイトを管理する姿勢の表れではないか・・・とココログスタンダードの私は感動するのでした。)

「公開の場で書きたいけどリスクは負いたくない。自分から他人に働きかけてまわるのもイヤ。でも読者を獲得したい」と考える人は非常に多いはず。しかしそれを堂々と言う人は滅多にいないし、ましてや実行してしまう人は極めて珍しい。少なくとも私はCONCORDE以外の例を知らない。
 私のブログは実名でリスクを負いながらやっているから長く続けられないけど、ほとんどリスクを取っていないCONCORDEは、この独自路線で長く続いていくのかもしれない。「なかなか言えないホンネ」を言ってくれるサイトには読者が付くものだ。このホンネの語り方は一つの芸になっているし、ますます磨きがかかっているように見える。

【補足1】
 Tristarさんが自分自身についてほとんど語らないのは、リスクを取りたくないという気持ち以外に、「社会的属性による先入観から自由でありたいから」という動機も強いらしい。(ただ、画面に映る文字のみで。

【補足2】
 他者に対する否定的意見をほとんど書かないTristarさんが例外的に書いた相手が3名。木村剛さんに向けた それは「ブログの力」ではなく、 、国枝まさみさんに向けた 群衆の中の孤独-ひとりでウェブに立ち向かうということ 、そして私に向けた ◎実名は隠す【強く推奨】--壊されないために、そして、壊れないために消えた(消された)人の声は見えない
 この人からちょっかい出されるってことは、「超優良絶対安全サイト」と認定されたようでうれしい(かも)。

【補足3】
 で、このブログに対してはトラックバックとコメントは遠慮したほうがいいのだろうか?盛況なブログになってしまったら、独自路線は単なる嫌味に変わる。私は既に何回か「ゼロ記事の死屍累々」を邪魔してしまっているので、今回はひっそりとリンクだけにしておきます。

| | Comments (4) | TrackBack (0)

2004.05.30

「タバコと学校生活」

 友人が個人サイトを開設した。ただ作りたいから作ったというページでなく、訴えたいことが明確で、しかもその主張内容にオリジナリティーがあるので、ここに紹介することにした。「技術系」とも「サラリーマン」とも「分析」とも全然関係ないけれど。

 このサイト タバコと学校生活 の開設者は、中学生の男の子を持つ母親。息子さんがタバコを吸うようになるとともに、学校生活になじめなくなり、「高校に行かない」と言い始めた。母親としてどうしたらいいのか。タバコについてインターネットで調べ、禁煙外来を訪れて、息子さんにタバコをやめさせようとする、現在進行形の記録。

 彼女の悩みを最初にきいたとき私は、「息子さんが、タバコを勧めるような友達との付き合いをやめたり、学校生活への興味を取り戻せば、タバコもやめられるのでは?」と言った。私は教育の専門家でも何でもないので、ただ、自分にとっての常識的な考えを述べただけだ。
 ところが、彼女の発想は逆だった。「タバコへの依存が形成されてしまっているから、学校になじめなくなったのでは?」と言うのだった。
 中学校にしろ高校にしろ、堂々とタバコを吸うことはできない。少なくとも授業時間中は我慢しなければならないし、休み時間に吸うにしても、限られた時間と空間で慌しく吸うしかないだろう。
 大人の喫煙者にとっても最近は結構きびしい環境になっているが、子供の喫煙者にとって中学校や高校の居心地の悪さは、また格別に違いない。

 彼女の話を聞いて私は、なるほどと思った。「学校に不適応を起こした少年が非行化してタバコを吸う」という図式しか思い浮かばなかったが、「タバコをやめられなくなったために学校に不適応を起こす」という因果関係も確かにあるような気がした。
 これは、母親の実感から導かれた仮説に過ぎないかもしれないし、逆に、既に専門家の間では定説となっていることかもしれない。でも、少なくとも私はそういう説を聞いたことがないし、この視点で未成年の喫煙を見直してみるのは問題解決の糸口になりそうな気もする。だから、できるだけ多くの人に、彼女の訴えを読んでみてほしい。

 ところで、tf2さんの タバコをやめて1年 からリンクされている 喫煙者を救え! の岩城保さんは、鈴木クニエさんの 大学時代の知り合い だとか。ひょんなことからネット上で知り合いを見つけるのは、うれしいものですね。

| | Comments (2) | TrackBack (1)

2004.05.21

平林純さん「史上最強科学のムダ知識」を読んだ

 もう2ヶ月も前のことになるが、 「役に立たないように見えること」 の記事から多数のアクセスがあって驚いた。いったい何故この日記からこんなに人が来るのかと、前後何週間かぶんを読んでみたが、よくわからなかった。
 先日、書店で「著者・平林純」とある本を見かけ、あ、この人だ、と思ったので買い求めた。カバー絵や内容紹介の雰囲気は、私が普段読んでいる類の本とはかなり違う。( bk1amazon

 一気に読んでしまった。納得した。なぜ平林さんのhirax.netが人気を集めているかを。
 もしかしたら、hirax.netを知らないなんて言ったら、技術系サラリーマンとしてモグリだと言われるほどメジャーなのかも?
 知らなかったのは私だけなのかもしれないが、一応紹介。

>毎日眺めるワイドショーや色んな景色の中に満ちあふれる「さまざまな謎」を強力な(無駄なほどの)科学の馬鹿力で解決する!?色んな話が入った本です。

 これが著者自身による本の説明。そして、本はhirax.netで公開されたものの中から選りすぐりを集めたもの。まったく、「科学の馬鹿力」という言葉がぴったりしている。「さまざまな謎」を、その重みと不釣合いに大仰な法則や公式やコンピュータ技術を使って解明する、アンバランスさが面白い。

 こういう世界には既視観があるなあ・・・と辿ってみると、そう、学生時代だ。私は薬学部だったが、理学部の学生とも関わりがあり、人となりがだいたいわかるくらいの付き合いだった人が20人か30人くらいはいる。そのサンプル数の範囲での印象ではあるが、理学部の学生が複数いると、ほんのくだらないことで小難しい理論を使った議論が始まって、「おおっ、そうか。ここにも○○の法則が成立していると。」「ついに○○論が予測しなかった域にまで人類は達したと。」等々のもっともらしい話へと発展するのだった。(最後に「と。」で終わる話し方も思い出した。当時の流行だったのか。)
 そうか。卒業してもあれを続けている人がいたのか・・・。(しかも学生の戯れ言レベルよりはるかに高度だ。論理構成も投入資源も。)

 そう言えば「物理帝国主義」という言葉も存在した。物理系は、化学系よりも生物系よりも数学系よりも断然態度が大きかった。(これは私の印象にすぎません。)今また再認識した。天体も人体も、「タレントの人気」までも、物理の手法ではモデル化して解析できてしまう。

 一見ムダみたいなことを手間ひまかけてやる人たちがいるなーという感想は学生時代から持っているが、そういうムダみたいなことが社会的に結構評価されることも知っている。ただし誰でも評価されるわけでなく、「ムダだけどすごい、面白い」と感心させるか、「何か飛躍的な発明や発見が生まれる土壌になりそうだ」と期待感を持たせなければならない。つまり、才能がなければ、見向きもされない。
 私にはそういう才能はないので、狭い分野でほんの少し役立つことを積み重ねていく地道な路線を歩んでいる。分析化学に携わるみなさんへ:サイト開設のお誘い みたいな感じで、何らかの専門家であれば誰でもできることを考えている。

 hirax.netの人気のもう一つの秘密として、平林さんの嫌味のない語り口、育ちのよさといったパーソナリティがあると思う。
 しかし、「『史上最強科学のムダ知識』を全部読んだ」と公言するのは、やや恥ずかしかったりする。「育ちのよさ」と「恥ずかしい内容」が両立しているのもまた味がある。(というより、両立させなければ堂々と売れる本にならないのか。)

 とりあえずhirax.netから何か読んでみたい気になった人への私のお奨めは 14ミリグラムの「いろんな気持ち」
だ。一般的には 私と二度めに出会う「水」 の視点のほうがウケそうな気がするが、化学屋のこだわりとして「14ミリグラム」の方が好き。
 リンクするのははばかられるが、力が入っているのはこのあたりという一例は モンロー・ウォークの伝説X 。もっと力の入っているテーマもあるけれど、ちょっとタイトルを書けない。

| | Comments (4) | TrackBack (0)

2004.05.14

もう一つあった分析化学のサイト

 前の記事 の一部訂正。分析化学の個人サイトはもう一つあることを思い出した。ただ、紹介していいものやら、少し戸惑うところがあるので、サイト名は書かず、リンクだけ示しておく。
 自己紹介ページ
 サイトそのもの

「液クロ龍の巻」「液クロ彪の巻」の執筆者に名を連ねているかたのホームページとあって、いやがうえにも期待は大きいのだが、残念ながら枠だけで中身がなく、3年間経過しているらしい。
 前の記事で「今ならこの分野で『無記事○○年』の最長記録を作れるポジション(名乗りだけは一番に挙げたという実績)を確保できる」と書いたが、既に3年という記録が樹立されて現在も更新中では、抜くのはかなり難しいと思う。やはり無記事記録は諦めて、普通に更新頻度や記事量で勝負するのがいいかもしれない。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.05.12

分析化学に携わるみなさんへ:サイト開設のお誘い

 本館 からこのblogへも来てくれている同業者は非常に少ないかもしれないけれど、そろそろ一番訴えたいことを書いてみる。「分析化学の個人サイトを開設しませんか」ということを。

専門情報サイトを作る面白さ
 これまでにも繰り返し書いてきたが、「専門知識を文章にしてネットで公開する」ということは、けっこう面白い。コンピュータやインターネット関連の専門知識は既に大量に公開され続けているからオリジナリティーのあるものを作るのは難しいだろうが、それ以外の専門知識は、まだまだ充実しているとは言いがたく、日本語の情報がまったく存在しないものも多い。
 そういう情報(主に活字)を自分なりにまとめて公開するだけで、検索に拾われて誰かの役に立つ。今ではアクセス解析を手軽に利用できて、サイトを訪れた人がどんな業種か、検索語は何か、初回来訪かリピーターか等、閲覧のされ方が簡単にわかる。
 これは知識の産直活動みたいなものだと私は思っている。流通経路としてはメインになり得なくても、「生産者の顔が見える」「消費者と触れ合える」物流が根強く支持されるように、やっている当人にとって嬉しい。また、パーソナリティと結びついた専門知識が公開されることは、世の中の多彩さ・豊かさを増すと思う。
 分析のように、ともすれば黙々と実験室の中でデータを出すだけになりがちな職種にとって、こういう産直活動は仕事の励みになるのではないだろうか。

一人ではリピーター確保が難しい
 サイトを開設していてうれしいのは、やはりリピーターの存在だ。検索でヒットして訪問されても、自分の提供した情報が役立ったのかどうかはわかりにくい。再度来訪してくれる人がいれば、「自分が既に提供している情報」だけでなく「自分がこれから提供するかもしれない情報」つまり自分本人に対して何か期待してくれたみたいだと思うことができる。
 しかし、専門情報をコンスタントに提供し続けるのは難しい。私の場合も、昨年は開設1年目だったから、これまでの研究内容から少しずつ引用することで毎週の更新を続けた。でも、今はそのネタがほぼ尽きて、毎週というのは難しくなった。
 提供したら喜ばれそうな情報自体は山ほどある。(主に書評や文献の要約や総説的なもの。)でも、それらを文章にするのは手間がかかることだから、私の場合は、まあ月に1回程度が限度かなと思っている。
 でも、月に1回の更新では、リピーターは来てくれないだろう。だから、似たようなことをする人が他にも大勢現れたらいいのに・・・と考えることになる。

一群のサイトへのリンク
 似たようなサイトを集めてどうするか。
 分析化学に関連する個人サイトは 私のはてなアンテナ に登録させてもらいたいと思っている。(別に私のアンテナでなくても、誰のものでもかまわない。)こういう自動巡回のリンク集に載っていれば、半年ぶり・一年ぶりの更新でも気付いてもらえる。
 blogの場合は、MyblogList にも加えさせていただきたい。このリストは、サイドバーの中に表示され、新しく更新されるたびに各blog名が上のほうへ移動する。(今のところ私のMyblogListは、分析化学関連だけでは寂しすぎるので、幅を広くして化学関連blogを集めている。ただし開設者がサラリーマンまたはウーマンという限定付き。)

一般向けに書くか専門家向けに書くか
 一般向けサイトか専門家向けサイトかは、開設する人の好みや条件に応じて選べばいいことだ。参考までに、私が専門家向けに作っている理由を挙げると
 ・一般向けにわかる説明を書くのは面倒。
 ・自分の勉強したいことだけ書くとどうしても専門家向けになる。
 ・専門用語が多いほうが検索で拾われやすい。
 ・中途半端な説明になって一般の人に誤解されるのが怖い。
 このように、まったく自分の都合だけで専門家向けにしている。
 付け加えるならば、職場からのアクセス(主に専門家)は所属先の見当がつくが、自宅からのアクセス(主に一般の人)は訪問者層がさっぱりわからない。

blogかHTMLファイル自作か
 目下、blogは急速に広がっている。私がこのblogで公開した文章量が反映しているとおり、ファイルの管理がとても楽だ。ややこしいことが苦手な人は、blogから始めるのがいいと思う。
 でも、記事が増えてくるとインデックスを作りたくなる。また、恒常的に掲載して随時改定していきたい文書とか、大がかりなページ構成や図表配置をしたい文書もできてくるだろう。そうなると、HTMLファイルをいじれるサイトを持ちたいと考えるようになると思う。
 そういうことも見越した上で、とりあえずblogから始めるのは、最も労力が少なくて済む方法だと思う。(結局、HTMLファイルをいじりたいほど多くの文章は書かないかもしれないし・・・)
 なお、HTMLファイルの作成が苦にならないという人も、blogを併用することにはメリットがある。よく言われることだが、blogは相互のリンクが強固なので検索結果で高順位になりやすいし、読者の目に触れるさまざまな機会も用意されているからだ。

個人サイト募集
 そういうわけで、分析化学関連の個人サイトを開設された方は、メール・コメント・トラックバックのいずれかで御連絡をください。また、私が知らないサイトがあれば、教えてください。
 とりあえず、中身がない自己紹介だけのサイトでも面白いと思う。「半年以内には第一回の記事を書きます」とだけ宣言して、それを目標に本や論文を読むとか。結局記事が書けないまま何年も経ってしまうかもしれないが、今ならこの分野で「無記事○○年」の最長記録を作れるポジション(名乗りだけは一番に挙げたという実績)を確保できる。
 学生の頃には当たり前に与えられていた「輪読会」「レポート提出」などの機会だが、社会人になってしまったらほとんど得られない。インターネットを利用すれば、学費を払わなくてもそういう機会を作れる。
 なお、私が現在把握している分析化学関連個人サイトは下記の3つだけです。それぞれに個性がありますから、訪れて参考にしてください。
 丹羽誠さんの「分析化学・薬物動態学ホームページ」
 クロやんさんの「インターネット随想」(注意:音楽が鳴ります。)
 秋月ナルさんと綺羅さんの「秋月日記」

| | Comments (2) | TrackBack (2)

2004.05.08

分析屋は口が固い

 残念ながら、化学分析の仕事が好きという人ばかりが分析屋になるわけではない。
 学生の頃、友人が「理系だと、とりあえず分析はできることが期待されるんだよなあ」とつぶやいたことがあった。当人は基礎的な生物学を専攻していて、でも、そういう分野での研究が続けられる見込みはあまりなくて・・・という状況下での言葉だった。

 大雑把に言って、未知のものを探究したり、新しいものを生み出す仕事は楽しいだろう。それに対して、決まったことを確実にこなすだけの仕事は面白くないと感じる人が多いと思う。また、決まったことをこなす仕事であっても、顧客との接触があって自分が役立っている実感があったり感謝されたりすれば、それがやりがいにつながるに違いない。
 分析は、正しい分析値を出して当たり前という世界で、成果が評価される機会は非常に少なく、失敗が命取りになる危険は常につきまとう。しかも、たいてい顧客と直接顔を合わせることはなく、検体を受け取ってデータを返すだけになる。
 そのせいかどうかわからないが、あまり強く志望したわけでなく、技術を持っているからとか、他に就職口がなかったからという理由で分析技術者になっている人はけっこういるようだ。

 以前 分析技術者のかた発見 で紹介した齋藤 喬さんのココログ オールインワン日記。齋藤さんは新年度から異動されて分析の仕事から離れたらしい。
 あまり分析がお好きでないことは以前からうかがえたが、 4月1日付けの記事 では

 とはいえ、内心で悩んでいる部分が無きにしも非ず。私がこれまで覆面勤労大学院生などという奇妙な形態で翻訳の勉強を続けてきた、その原動力としては、「こんな仕事、辞めてやる!」という後ろ向きな情念が非常に大きかったわけなのです。負の思考をなるべく有意義なかたちにねじ曲げながら、もう一息で大学院を卒業できそうなところまでたどり着きました。
 しかし今さら仕事が面白くなり、辞めたい気持ちが無くなったら、翻訳の方はどうすればよいのでしょうか。もちろんここまで来た以上、なんとしてでも大学院は卒業しますが、そのあとは……?
 そこまでだったとは。
 齋藤さんの記事をいくつか読むだけで、きっちりとした文章、端正な暮らしぶり、人間関係での誠実さがうかがえる。こういう人にこそ、分析の仕事は向いているように思うのだが・・・。
 いったい、どんなところに不満を持っていたのか、ちらっとでも書いてくれないかなと思いつつ時々のぞいてみたが、一ヶ月経ってもいっさい理由らしきことは書かれていない。分析機関の管理職の人たちには興味のあるところだと思うのだが。

 しかし、ペンネームとはいえ、公開の場で具体的なことは何一つ書かないというのもまた、分析屋らしい心がけだ。
 日本分析化学会の会誌「ぶんせき」2004年2号の巻頭言で、財団法人日本分析センターの高田芳矩さんが述べておられる。

分析技術者は古くから、(1)うそをついてはならない、(2)依頼者の秘密は守る、(3)信頼を失う行為はしない、ことを徹底的に躾けられてきた。その結果、分析技術者には無口の人が多くなった。

 分析屋は口が固いのだ。

2004/5/20 追記
 この記事に関連してクロやんさんが 気まぐれ日誌(5/15付け) で、自分自身はどんないきさつで「好きでもない分析屋」になったのか書かれました。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.05.04

ずっと前から注目しているblog

 私がココログを始めた当初から注目しているblogがある。tf2さんの Do you think for the future? だ。
 中西準子さんや安井至さんのサイトが好きな人なら、間違いなくこのblogも好きになると思う。環境問題を中心に、健康や安全に関する幅広い話題を、独自の切り口で論評していくスタイル。
 tf2さんは「昨年21年間勤めた総合化学会社を辞めて沈思黙考中」のかただけあって、背景となっている知識が広く深いことがいつも感じられる。(特に知財や材料関係。)特定の研究分野や社会的立場に立脚しての論評でなく、一市民の視点からの考察。
 感心するのは、次々と興味深い本(固いものが多い)の書評が書き込まれる点と、インターネット上のさまざまな情報源を探し出して丁寧にリンクが張られ、資料集としても毎回充実している点。相当手間がかかっている感じがする。
 正直なところ最初の頃は、このスタイルでいつまで続くのかなと思っていたのだが、もう5か月目に入っている。個人でこれだけ内容の濃い情報を提供し続けるのは並大抵のことでないと思う。

 最近の記事で私がいいなと思ったのは 「青色発光ダイオード」。中村修二教授と日亜化学の争いで、このほど日亜化学側が出した本に関する論評。(もと)サラリーマン技術者らしいバランス感覚のある論に、私もうなずいた。

 一つだけ、読みにくいと感じている点がある。新聞記事からの引用が多く、しかも長いのだが、それらがblockquoteで指定されているのか、行頭も行末も全部字下げになっていて、私のディスプレイの設定では1行が23文字しかない。だから分量の割に、延々と長いスクロールをしなければならない。実のところ、スクロール疲れで読み飛ばしたことが何度もある。
 ココログのデザインは、ただでさえ一行が短すぎて読みにくく、長文の記事向きでないと思う。長文の多い私は大いに不満を持っている。長文の上、字下げを多用されるtf2さんは、もっと不満ではないだろうか。

 ところで、筆名の由来は

 ニックネームの "tf2" は "think for the future" の略です。自分では「ティエフスクエア」と読むことにしてます。

ということだ。
 最初の記事 では姓を名乗っておられるし、フルネームも変則的な形で公開されているが、手が込んだ公開法だ。気付かない読者も多いのでは。

 以下は、本館の読者が興味を持ちそうな記事(食品と生活安全に関するもの)を拾ってみた。
リスクラーニング
 asahi.comの記事「化学物質の健康リスク判定 産総研がソフトを開発し提供 」を読み、tf2さんが実際にソフトをダウンロードして使用してみた体験談。
BSE:安全性の科学的な根拠ってなんだ?
続:BSE検査の科学的根拠

2004/5/8 追記
 超臨界流体抽出をやっているかたには雑談として面白そうな話題が出たからリンク追加。
超臨界CO2クリーニング

| | Comments (4) | TrackBack (0)

2004.03.19

「ある化学者の屋根裏部屋」閉鎖

 某化学会社の研究所勤務 出羽俊和さんの個人ページ ある化学者の屋根裏部屋 が閉鎖されるそうだ。「今度の人事異動で研究所から離れることになり,この機会に閉鎖することにしました.最後の更新から久しいですが,これも潮時というものでしょう.今まで本当にありがとうございました.」とのこと。
 サイト内の 私に質問メールを送信する方に だけは、まだ読むことができる。正直いって私は、この文章を読んだときには、専門的な内容のウェブページを作ったらたいへんなめに遭うのではないかと、びびってしまった。

私は無料相談員でも便利屋でもありませんし,専門性の高いWebページを公開しているからと云って,無原則に質問を受け付けている訳でもありません.私は企業人として既に解決すべき課題を数多く抱えています.自分のWebサイトの維持に多大の時間と労力と費用を費やしています.本名すら明らかにしない無礼な人間のために割く時間など,あり得ると思いますか?

 ・・・幸い、個人ページ開設から一年間、私はほとんどこういう目には遭っていない。(それに、専門的な質問をしてくる方に対しては、ある共通解を用意してある。)

 「化学」2000年5月号の特集「Webで活躍する化学者たち」で紹介された歴史のあるサイトの閉鎖に、なごりは尽きない。出羽さん、気が向いたらまた戻ってきてください。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

より以前の記事一覧