質量分析

2025.06.29

「質量分離」か「m/z分離」か

質量分析をしている皆さん、「質量分離」と「m/z分離」、どちらの言葉を使いますか?

個人的によく聞くのは「質量分離」だと思っています。

  • この装置の質量分離部はここだ。
  • 購入予定の装置の質量分離方式は?
  • TOF-MSはイオンが検出部に到達する時間に基づいて質量分離する。

といった使い方があります。

しかし、質量分析をやる人なら百も承知ですよね。実際にはイオンの質量で分けているわけではなく、m/zで分けているんだということを。
主要な用語集などではどうなっているか、調べてみました。この表のとおりです。

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IUPAC勧告(2013)では、立項はされていませんが「m/z separation」の語を使用しています。これに基づいている日本質量分析学会の用語集第4版(2020)も同じで、立項なしで「m/z分離」の語が使われています。

Grossの "Mass Spectrometry"(第3版)でも、1回だけですが「m/z separation」の語が使われています。(正確には「mass separation」の語も1回使われていますが、日本語の「質量分離」とは異なる意味。)

少なくとも英語では「mass separation」は分が悪いように思われます。しかしJISでは「質量分離」が圧倒的に優勢で、LC/MS通則では28回、ICP-MS通則では20回、GC/MS通則では6回使用されています。上の表は発行年順に並べていますが、2022年発行のICP-MS通則でも「質量分離」で、特に変化のきざしは無いようです。

正確でないとわかってはいるものの、「質量分離」は「m/z分離」よりも納まりがよくて伝わりやすい。私も当分「質量分離」を使い続けたいと思います。

2025/6/30 追記
「m/z分離」を通常推奨されている読み方で読むと「エムオーバージーぶんり」となり、「しつりょうぶんり」よりもかなり発音しにくい。

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2025.03.19

全イオン検出(TIM)という言葉(GC/MS, LC/MS)

全イオン検出または全イオンモニタリング(TIM, total ion monitoring)という言葉があります。私は選択イオンモニタリング(SIM)の対語として「スキャン測定」と同じ意味で使ってきました。ところが日本質量分析学会の「マススペクトロメトリー関係用語集第4版」には意外な意味が書かれていて驚いた、という話を書きます。

 MS学会用語集の「TIM」はスペクトルを取得しない
気づいたきっかけは、本の原稿を査読してくれた方からの
「TIMはスペクトル測定を意味しない」
という指摘でした。
「え?そうなんですか?」
あわてて質量分析学会の用語集を開くと次のように書かれていました。

total ion monitoring (TIM)
全イオンモニタリング:選択イオンモニタリング (selected ion monitoring) に対比される語で,液体クロマトグラフィー質量分析やガスクロマトグラフィー質量分析などにおいて,マススペクトルを取得する代わりに,検出されたすべてのイオン,もしくは特定の広い m/z の範囲のイオンの検出器応答値の総和を連続的に記録するように質量分析計を動作させること.

正直なところ戸惑いました。「マススペクトルを取得する代わりに」ということは、マススペクトルを取得しないということで、毎秒何枚ものマススペクトルを取得するスキャン測定とは別物です。
では何をモニターするかといえばイオンの検出器応答値の「総和」です。このような測定法があるのでしょうか? 私は、m/zで分離したイオンごとに測定する方法しかやったことがありません。
いやいや、実は、m/zで分離したイオンごとに測定したうえで、画面上の表示だけを総和で示すということなのでは?と思ってよく読んでも、はっきり「質量分析計を動作させること」とありますから、画面だけの話ではないようです。

 そういえば「TICC」の語も
これと似た話は、TICかTICCか でも書きました。IUPAC勧告も関連JISもTICCを「データから再構成したクロマトグラム」としているところ、MS学会用語集第4版だけ「全イオンモニター(total ion monitor),あるいはビームモニター (beam monitor) と呼ばれる特別な電極を設けて測定したm/z分離が行われる直前のイオン電流値」と定義しています。そして、このような測定は数十年前に行われていたことが J.H. Gross「マススペクトロメトリー 原書3版(日本版)」に書かれています。(無料サンプルページ p.672)

MS学会用語集の特殊な「TIM」の定義づけは、TICCの定義に出てくるtotal ion monitorという古い測定装置と整合性を持たせているのかもしれません。

 他の文献はどうなっている?
MS学会用語集に書かれている意味は現代では実用性がないと思いますが、査読者の指摘は重みがありますから、他の文献でどうなっているか調べました。

まず、この用語集が主に準拠している IUPAC勧告(2013) にTIMの語はありません。学会独自に立項したと考えられます。

JISはどうなのか。
「JIS K 0123:2018 GC/MS通則」の附属書Eでは、SIMに対する語として全イオンモニタリング(TIM)の語を使い、これはスペクトルを採取する測定を意味しています。

「JIS K 0136:2015 LC/MS通則」にも「全イオンモニタリング」の語があり、スペクトルを採取する測定を意味しています。こちらの方にはTIMの略語はありません。

「JIS K 0214:2013 分析化学用語(クロマトグラフィー部門)」には「全イオンモニタリング, 全イオン検出」の項があり、「GC/MS, LC/MSなどでイオン源で生じた全イオン,又は特定範囲のm/zのイオンを積算して連続的にモニタリングする方法」と書かれています。マススペクトルを取得するということか、MS学会用語集のようにマススペクトルを取らないということか、あいまいです。

日本分析化学会(編)「分析化学用語辞典」(2011)にも「全イオン検出」の項があり、JIS K 0214とほぼ同じ文言です。

「ガスクロ自由自在」も併せて表にするとこうなります。

Tim

 「スキャン」はTOFやFTでは非推奨
ところで、GC/MSやLC/MSのユーザーなら
「わざわざTIMなんて言葉を使わなくても、スキャンでいいのでは?」
と考えるかもしれません。

再びMS学会用語集から引用しますが、「スキャン」の項はこうなっています。

scan
走査またはスキャン:マススペクトルなどを測定するため磁場や電場の強さなどを一方向へ連続的に変化させること.
注:マススペクトルを取得する際このような操作を行わない飛行時間型質量分析計やフーリエ変換質量分析計を用いる場合もスキャン (scan) と表現されることがあるが,推奨されない.

つまり、TOFやフーリエ変換型(オービトラップなど)については「スキャン」の語が推奨されないのです。解説書では全部の質量分離方式に通用する語を使ってデータ処理法を説明する必要があるため、TOFやオービトラップにも使える「スキャン」相当の語が必要になるわけです。
とはいえ、MSユーザーの間で「TIM」の語はあまり使われておらず、「スキャン」の方が一般的ではあります。J.H.Gross "Mass Spectrometry ― A Textbook, 3rd ed"(無料PDF, 25 MB)では普通にscanning mode の語を使用しており、TIMの語はありません。(p.848-849)

 私の本にはどう書いたか
上記の調査を踏まえて、「図解入門 よくわかる最新分析化学の基本と仕組み 第3版」では第2版の記述と同様、JISのGC/MS通則及びLC/MS通則と同じ用法のままにしました。また、脚注でスキャンの語はTOFなどには「用いない」としていたところ、「非推奨」に表現をゆるめました。

「TIM」の語については以上の長い説明を 第2版から第3版への変更点(PDF, 452kB)に書ききれず、このようにブログ記事にしました。

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2025.03.13

「整数質量」という言葉、どう使う?

質量分析ユーザーの間で「整数質量」の語は普通に使われていると思いますが、実はあまり認められていなくて使いにくい、という話をします。しかし最後にすばらしい文献をご紹介しますから、時間がない方は最後だけ読んでください。もっと時間がない方はこの表だけどうぞ。

Seisu

分子の例として、いま分析業界が対応に大わらわの物質PFASの一つPFOAを考えてみましょう。化学式はC8HF15O2で、天然存在度が最大の同位体ばかりの組合せの分子なら精密質量は413.9737 Da(小数点以下4桁まで表す場合)、これに対して整数質量は414 Da。つまり「精密質量」の対句のように使われるのが「整数質量」というのが私の認識です。

 IUPACと質量分析学会の用語集には無い
「整数質量」の語は、日本質量分析学会の「マススペクトロメトリー関係用語集第4版」には収載されていません。第3版にも収載されていませんでした。
「精密質量」の方は収載されています。「測定精密質量」と「計算精密質量」が定義されています。

この用語集が主に依拠している IUPACの用語集 にも「整数質量」に相当する語は見当たりません。

それではPFOAの414 Daという質量を、この用語集ではどう表現すればよいのでしょうか?
別途「質量数」の語が「原子,分子,またはイオンを構成する陽子と中性子の数の合計」と定義されていますから、「PFOAの質量数は414」と表現できます。「414」であって「414 Da」でないことに注意が必要です。質量数は無次元量です。
しかし、質量数は原子に対して使う言葉ではないでしょうか。私は「整数質量」と似た意味で分子やイオンについて「〇〇の質量数は400」などと表現された実例を見たことがありません。

 「ノミナル質量」という言葉
「マススペクトロメトリー関係用語集第4版」には「ノミナル質量」も定義されています。「各元素の天然存在度が最大の同位体の質量に最も近い整数値を用いて計算したイオンまたは分子の質量」です。「PFOAのノミナル質量は414 Da」と表現できます。

それなら「ノミナル質量」の語さえあれば良くて「整数質量」は不要ではないか、と考えてしまいそうですが、PFOAの分析でサロゲートとして使われる13C8-PFOAはどうでしょうか?
この物質は8個のCがすべて13Cなので、整数で表した質量は422 Daです。しかし13Cは「天然存在度が最大の同位体」でありませんから、「ノミナル質量」の定義に当てはまりません。「13C8-PFOAの整数質量は422 Da」と表現するしかないのではないでしょうか?

サロゲートの場合だけでなく、PFOAの炭素原子の一つまたは二つが13Cになっている415 Daや416 Daの分子由来のイオンは質量分析で常時観測されますが、これらも「ノミナル質量」ではないわけで、「整数質量」の語が必要ではないでしょうか?

さらに、極めて大きな分子ではノミナル質量でなくノミナル質量より1大きいイオンが最大ピークになりますが、これも「整数質量」と呼べなければ不便ではないでしょうか?

 JISではどうなっている?
「JIS K 0214:2013 分析化学用語(クロマトグラフィー部門)」には「整数質量」の語があります。しかしなんと、「ノミナル質量=整数質量」という定義です。これはJIS K 0214だけが採用している独特の定義ではないかと思います。

「JIS K 0136:2015 LC/MS通則」には定義はありませんが、分解能の説明をしているところに
「分析種イオンと整数質量が同じで精密質量が異なるイオンを」
と書かれています。これは天然存在度最大の同位体のみで構成されたイオンに限った記述ではないので、シンプルに整数で表した質量を意味していると解釈できます。

「JIS K 0123:2018 GC/MS通則」と「JIS K 0215:2016 分析化学用語(分析機器部門)」には「整数質量」の語はありません。

 書籍では?
「これならわかるマススペクトロメトリー」(2001)のp.51には次のように書かれています。
「整数質量:分子を構成する原子の質量数の総和.精密質量などの小数点以下を四捨五入や切り捨てした値ではないことに注意する.」
これは質量分析学会用語集の「質量数」と同じ意味で、無次元なので、「質量」と呼んで良いのか疑問です。

「ガスクロ自由自在Q&A GC/MS編」(2024)のp.11、質量分析計によるスペクトルの違いを説明したところに
「観測できるイオンの質量が整数質量か小数点以下を有する精密質量か」
とあります。天然存在度最大の同位体か否かは関係なく、シンプルに整数で表した質量を意味していると解釈できます。

「LC/MS、LC/MS/MSにおけるスペクトル解析」(2020)も確認しましたが、「整数質量」の語はありませんでした。

ここまでの調査で、私が考える「整数質量」の意味と同じ使いかたをしているのはJIS K 0136と「ガスクロ自由自在Q&A GC/MS編」だけでした。しかしどちらも用例であって、定義が書かれているわけではありません。
最後にたどり着いたのが日本分析化学会(編)「分析化学用語辞典」(2011)。実は私はこの辞典をあまり参照したことがなくて、一応持っているという感じだったのですが、これにすばらしい定義が書かれていました。全文を引用します。

整数質量 セイスウシツリョウ integer mass〔電磁気分析〕質量の計算値もしくは測定値の小数点以下を四捨五入して表記したもの.日本語の整数質量は「ノミナル質量(nominal mass)」を指すこともあるが,ある程度の高分子化合物ではinteger massとnominal massの値が異なることもあるので,整数質量をノミナル質量の同義語として使用することは好ましくない.

我が意を得たりです!JIS K 0214がおかしいことまできちんと指摘している。これが載っているだけで、8500円(税別)の本代を払ってよかったと思ったくらいです。

 私の本ではどう書いたか
「図解入門 よくわかる最新分析化学の基本と仕組み」の第2版では、「これならわかるマススペクトロメトリー」の定義に基づき、本文では「分子を構成する原子の質量数を合計したものを整数質量と呼びます。」と書くいっぽうで、図解ページでは「単位 Da」としていて矛盾がありました。
第3版では「分析化学用語辞典」に基づいて本文に
「分子やイオンの質量をDaで表して整数で近似したものを整数質量と呼びます。」
と書き、図解ページも記述を一致させました。

ちょっと自慢を書くと、「Daで表して」と書いたところが「分析化学用語辞典」よりも厳密になっています。質量の単位としてはグラムの方が普通だからです。第2版執筆時(2016)には「分析化学用語辞典」に行き着いていなかったので自慢できませんが…。

以上、「整数質量」の語についてはこのように長い説明があるので、第2版から第3版への変更点(PDF, 452kB)には書ききれませんでした。それでブログ記事にしました。

(注)この記事ではPFOAの分子について書きましたが、LC/MSで通常検出されるのはH+がはずれた陰イオンです。また、精密質量については電子の質量を考慮する必要があります。

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2024.07.02

分析技術で一人起業(1)リビングのLC/MS装置

民家のリビングにLC/MS装置が置いてある、しかもTOF-MS。という話を聞いたのはもう3年くらい前のことで、ぜひ一度この目で見たいものだと思っていました。しかしその場所は宮崎市、なかなか赴く機会がないところです。そこでこのほど、思い切って休みを取って「リビングのLC/MS装置」だけを目当てに宮崎まで行ってきました。

訪問先は「株式会社 食品検査・研究機構」です。宮崎県総合農業試験場に勤務しておられた安藤 孝さんがたった一人で起業して2019年5月に設立された会社です。主にやっているのは農産物の残留農薬検査で、機能性成分やうまみ成分などの試験も時々依頼されるそうです。

JR宮崎駅からはバスと徒歩で15分ほど。県立美術館と図書館がある「文化公園」という大きな公園の近くの閑静な住宅街に、その民家があります。門構えも建物も完全に普通の民家です。普通の玄関で社長の安藤さんが出迎えてくださいました。

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しかし庭は普通ではありませんでした。除草剤を使えないので草が生い茂り、大きなレモンの木に無農薬の実がついていました。そしてリビングには本当にLC/TOF-MS装置がありました。写真に写っているのは家庭用のエアコンです。TOF-MSのフライトチューブの首には農薬残留分析研究会の受賞記念メダルがかかっています。

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分析ラボに必ずあるはずのドラフトチャンバーは?
それはキッチンにありました。家庭用のレンジフードです。たくさんのマイクロピペットが家庭用レンジの上に置かれている光景は、なかなか目にしたことがある人はいないでしょう。さらに、キッチンの水栓からは水道水と蒸留水が出ます。センサーで感知するので、手を触れずに切り替えられます。蒸留水のタンクはシンクの下にあるそうです。

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こんなワンダーランドなのに、取材はこれまでゼロだったそうです。一度TVカメラが入ったことがありますが、それは会社で分析した製品の取材の一環だったため、このラボに着目したものではなかったそうです。
勤め人の個人ブログで「取材」というのもおこがましいですが、私は同じ分析屋としてラボや業務内容に興味しんしんですから、たっぷりお話を伺ってきました。その内容を何回かに分けてレポートします。

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(写真の一部は安藤さんにご提供いただきました。)

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2023.12.03

TICかTICCか(GC/MSやLC/MSの用語)

この文章は長くなる見込みです。しかもくどくどしています。そこで、最初に結論を書きます。
「TICでもTICCでも良い。でもTICの方が短いから私は好き。」
結論だけ必要な方は、ここで読むのをやめてください。
なお、それぞれの語は次の語の略語です。
 TIC : total ion chromatogram
 (全イオンクロマトグラム)
 TICC : total ion current chromatogram
 (全イオン電流クロマトグラム)

1.TICとTICC 推奨状況の現状
国際純正・応用化学連合(IUPAC)は 2013年の勧告 でTICを非推奨、TICCを推奨としています。日本質量分析学会の「マススペクトロメトリー関係用語集(第4版)」はTIC、TICCとも認めていますが、後で述べるようにTICCの意味を限定していますので、一般的なユーザーにとっては実質的にTICが推奨語と思われます。
日本産業規格(JIS)の3つの規格
 JIS K 0214:2013 分析化学用語(クロマトグラフィー部門)
 JIS K 0123:2018 ガスクロマトグラフィー質量分析通則
 JIS K 0136:2015 高速液体クロマトグラフィー質量分析通則
はいずれもTICCのみを使用しており、TICの語を使っていません。
装置メーカーの対応は分かれており、分析画面やプリントアウトで表示される名称はTICの場合もTICCの場合もあります。

2.TICでなくTICCが推奨される根拠
日本質量分析学会の学会誌に2007年に掲載された解説「目から鱗のマススペクトロメトリー 第12回「Total Ion Chromatogram」と「TIC」∼「TIC」はトータルイオンクロマトグラムではありません∼」の内容を要約して紹介します。既にこの文章を読んだことがある方は3へ進んでください。

もともとTICの語はクロマトグラムを表すものでなく、「total ion current(全イオン電流)」の略語であったとのことです。そして、全イオン電流を保持時間に対してプロットしたクロマトグラムは「TIC chromatogram」と呼ばれます。「TIC chromatogram」を略さずに書けば
 total ion current chromatogram
すなわち「TICC」となります。それがなぜ「TIC」とも呼ばれるようになったのか。この解説では2つの説を述べています。
 説1 total ion current chromatogramからcurrentが欠落した。
 説2 TICのCがchromatogramのCであると誤解された。
いずれにしても、TICではイオンの何の数値を合わせたものか不明(電流値、質量などがあり得る)という理由から、TICCが正しく、TICは誤っていると書かれています。

3.IUPAC勧告の定義
TICCの項目はこのようになっています。

531. total ion current chromatogram (TICC)
   reconstructed total ion current chromatogram

Deprecated: total ion chromatogram.
Chromatogram created by plotting the total ion current in a series of mass spectra recorded as a function of retention time.
total ion chromatogramの略語としての「TIC」については明確に非推奨です。また、「reconstructed」つまり再構築されたものであることを示す語を並列で置いています。これがあることで、次に述べる日本質量分析学会の定義との違いが際立ちます。
なお、全イオン電流の意味での「TIC」は次の定義です。
530. total ion current (TIC)
Obsolete: after mass analysis, before mass analysis
Sum of all the separate ion currents carried by the ions of different m/z contributing to a complete mass spectrum or in a specified m/z range of a mass spectrum.
「質量分析前のTIC、質量分析後のTICといった表現は使われなくなった」と書かれています。この説明もまた、日本質量分析学会の定義との違いを際立たせます。

4.日本質量分析学会の定義
「マススペクトロメトリー関係用語集(第4版)」のTICとTICCの項目はこのようになっています。TICには2通りの意味があるとの立場です。

total ion chromatogram (TIC)
全イオンクロマトグラムまたはトータルイオンクロマトグラム:ガスクロマトグラフィー質量分析や液体クロマトグラフィー質量分析などにおいて,取得したマススペクトルの全体もしくは特定の広い m/z の範囲におけるイオンの検出器応答値の合計値をクロマトグラフィーの保持時間に対してプロットしたクロマトグラム.
注:略語 TIC を用いる場合は同じ略語が使用される全イオン電流 (total ion current: TIC) と混同されないよう留意する必要がある.

total ion current (TIC)
全イオン電流:ガスクロマトグラフィー質量分析などにおいて,質量分析装置に全イオンモニター(total ion monitor),あるいはビームモニター (beam monitor) と呼ばれる特別な電極を設けて測定した m/z 分離が行われる直前のイオン電流値.
注:略語 TIC を用いる場合は同じ略語が使用される全イオンクロマトグラムまたはトータルイオンクロマトグラム (total ion chromatogram: TIC) と混同されないよう留意する必要がある.

total ion current chromatogram (TICC)
全イオン電流クロマトグラム:ガスクロマトグラフィー質量分析などにおいて,全イオン電流値を保持時間に対してプロットしたクロマトグラム.

この定義にはびっくりするポイントが2つあります。
一つは、IUPAC勧告で非推奨とされているクロマトグラムの意味の「TIC」が非推奨でないこと。この用語集はIUPAC勧告準拠が基本方針なのに、異例です。もう一つは、「TICC」の意味が極めて限定的で、通常のGC/MSやLC/MSで出力されるクロマトグラムには使えず、実質的に「TIC」を推奨していると解釈できることです。

日本質量分析学会の「TICC」の意味が限定的とはどういうことか説明すると、電流のほうの「TIC」を「全イオンモニターあるいはビームモニターと呼ばれる特別な電極を設けて測定した m/z 分離が行われる直前のイオン電流値」と定義しているからです。
普通のGC/MSやLC/MSのユーザーにとっては、全イオンのクロマトグラムと言えば、マススペクトルに表れている各m/zのイオンの信号を総和してプロットしたものでしょう。「m/z 分離が行われる直前のイオン電流値」をプロットしているとは考えないし、私の知る限り、装置はそのような仕様になっていないと思います。
また、3で書いたとおりIUPAC勧告では「質量分析前のTIC、質量分析後のTICといった表現は使われなくなった」と述べているのですから、第4版で新たにこのように定義した理由がまったくわかりません。(用語集第3版では、TICは質量分離後に合計したものという意味になっていました。)

第4版が出た2020年以降、私はこの転換にモヤモヤしていましたが、一会員には情報が入りません。学会誌では追補版が出ていますが、そこでも説明されていません。
ところが最近、
「質量分析学会が翻訳しているGrossの教科書と関係があるかもしれない」
と聞きました。そこでその教科書を確認してみました。

5.Grossの教科書
その教科書とは J.H. Gross「マススペクトロメトリー 原書3版(日本版)」です。この教科書ではTICについてどのように書かれているのでしょうか。
冒頭に略語集があり、次のとおり3つが並んでいます。

TIC total ion chromatogram;  全イオンクロマトグラム;
   total ion current  全イオン電流
TICC total ion current chromatogram 全イオン電流クロマトグラム
いずれも非推奨でありません。一見、質量分析学会の定義に似ているように思われます。しかし、total ion currentの意味が異なっています。p.672にこのように書かれています。
 数十年前は全イオン電流(total ion current : TIC)が,質量分析に先立ってハードウェアTICモニター(hardware TIC monitor)で測定されていた(nA~µAの範囲).今日では,それに相当するものが質量分析後に再構成(reconstructed)または抽出(extracted)される.
これを素直に読めば、質量分析学会は数十年前に使われていたTIC(全イオン電流)の意味をわざわざ復活させて2020年発行の用語集に載せたことになります。Grossの解説は、IUPACの勧告にある「質量分析前のTIC、質量分析後のTICといった表現は使われなくなった」とも整合します。

ところで、Grossはクロマトグラムの意味ではTICとTICC、どちらの略語を推奨しているのでしょうか?その答えは実に明解で合理的です。p.673の表には、TICとTICCの他にRTIC(再構成全イオンクロマトグラム)とRTICC(再構成全イオン電流クロマトグラム)も挙げた上で、コメントとして次のように書かれています。

測定時間,保持時間,またはスキャン数に対して,マススペクトルあたりのピーク強度の総和をプロットしたもの.実際にはこれらはほとんど同じ意味で使用される.ここでは最も単純な語であるTICが推奨される.

6.結局どちらを使えばいいのか?
以上、各資料の記述をまとめると下の表のようになります。質量分析学会用語集第3版はIUPAC勧告と同じ定義でした。日本産業規格は1に挙げた3つの規格の状況ですが、いずれも学会用語集第3版に準拠しており、TICCの語だけを使用しています。

Ticticc

私は用語で迷った時にはできるだけ「最大公約数」を採用するようにしています。どの定義にも反しないように語を選ぶのです。学会用語集第3版までは、「TICC」を使っておけば「非推奨」に引っかかることはありませんでした。
しかし用語集第4版では、「TICC」の定義は極めて特殊な内容になりました。現在のGC/MSやLC/MSではほとんど使われない測定技術によるクロマトグラムが「TICC」であるとの定義になりました。

これはフルネームtotal ion current chromatogramを書けば解決するという問題ではありません。total ion current chromatogramの定義自体が変わってしまったからです。普通のクロマトグラムをTICCと呼びたければ、「質量分離後に再構成されたクロマトグラム」といった説明が必要になります。

いったいどうすればいいのか頭を抱えてしまいますが、Grossに習うのがストレスが少なそうだと思います。Grossの「マススペクトロメトリー」は、商品名だとして非推奨にされがちなDARTやOrbitrapの語も商品名とことわった上で使っています。TICもTICCもRTICもRTICCも紹介した上で、一番単純なTICがいいんじゃないのと言っています。実用性重視だと思います。
「TIC」の語はIUPAC勧告では非推奨、JISでは不掲載ですが、total ion chromatogramの略であることをちゃんと書いておけば、少なくとも誤解は生じません。逆に「TICC」を使った場合、学会用語集第4版に基づいて解釈されたら変な意味になってしまいます。

というわけで、冒頭に書いたとおり
「TICでもTICCでも良い。でもTICの方が短いから私は好き。」
というのが私の立場です。どちらの使用例を見てもいちゃもんはつけません。自分自身は好みで選びます。

2023/12/5 追記
J.H.Grossの教科書「マススペクトロメトリー」は税込み21,560円と高額ですが、TIC推奨部分を含むサンプルページのPDFが無料で公開されています。(p.673の表)
第14章サンプルページ

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2020.05.24

GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(21)まとめ:使い分け回避派!

全国の多くの府県で緊急事態宣言が解除され、首都圏と北海道もあと少しで解除される見込みです。長かったステイホームの日々も一応の区切りがつきそう。録画や動画配信サービスで映画やドラマを観て過ごした人も多かったようですが、私は結局ハイフンとスラッシュばかりでした。なんとも絶妙なタイミングで日本質量分析学会の用語集が改訂されたものです。

このブログで書いてきた調査結果を踏まえて、私のサイトの方針を示すページ ハイフンとスラッシュについて に加筆しました。

思い起こせば4年前には、雑誌 Rapid Communications in Mass Spectrometry が影響力を発揮してスラッシュへの統一が進むのではないかと予想していました。しかし相変わらず世界ではハイフンが圧倒的多数派です。
国内では日本食品衛生学会「食品衛生学雑誌」の 編集規定・投稿規定 がハイフン派と知りました。

いっぽうGC/MSの規格(JIS K 0123)はスラッシュで踏ん張っています。この規格も次の改訂で「ハイフン:装置、スラッシュ:分析法」の使い分けを行うだろうと予想していたのに、2018年の改訂では「スラッシュだけ」が維持されました。

私の願いは一つです。どちらでもいいからどちらかに統一されてほしい。好みはハイフンですが、統一されればどちらでも従います。ただ「両方を使い分ける」はしたくない。だから当面はスラッシュだけ使います。ハイフンが好きですが、日本国内ではハイフンは「装置」を表すと考える人が一定数いるわけなので、「分析法」を意味するスラッシュの方が私にとって使い勝手がいいのです。

ハイフン派のみなさん、ごめんなさい。私はスラッシュ派というわけではないのです。「使い分け回避派」です。そこんとこよろしくお願いします。

また何年か先に、新たな動きがあればシリーズ記事を再開します。その時にはどんな表記が優勢になっているのでしょうね。

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2020.05.23

GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(20)IUPAC勧告2013「先取り」の経緯

あくまで個人の感想ですが、略語を作るならハイフンが普通でスラッシュは特殊だと思います。ましてや両方を使い分けて装置と分析法の意味にするなんてややこし過ぎます。
そのややこしい、IUPAC勧告2013が採用しなかったルールを、日本質量分析学会(MS学会)は2009年に「先取り」したわけですが、どんな経緯があったのか気になります。今回は、その頃の経緯を示す文書を読み込んでみます。

紹介するのは内藤康秀さん(光産業創成大学院大学)の3つの文書です。この方はIUPACのプロジェクトの7人のメンバーの一人だったそうです。

 日本質量分析学会会誌:2006

内藤康秀「Letter to the Editor: 国際純正・応用化学連合委託プロジェクト「質量分析関連用語の標準定義」について」J. Mass Spectrom. Soc. Jpn., 54, 25-31 (2006)

(プロジェクトは)Louisiana State University (USA)のKermit K. Murrayを代表とする作業グループが遂行している.作業グループの他のメンバーはRobert K. Boyd (Institute for National Measurement Standards, Canada), Marcos N. Eberlin (State University of Campinas, Brazil), G. John Langley (University ofSouthampton, UK), Liang Li (University of Alberta,Canada), Jean Claude Tabet (Universite Pierre et Marie Curie, France), 内藤康秀(光産業創成大学院大学)である.

最終的な IUPAC勧告2013 の著者は6名です。Jean Claude Tabetさんの名前が無くなっています。

以下に,原稿第2案で提案されている用語(見出し語)の一覧を示す.
1.2 Acronyms
―列挙されたものから抜粋―
 GC-MS

えっ、これだけ!?
GC/MSもLC-MSもLC/MSもありません。GC-MSの正式名称もありません。

2006年度は「マススペクトロメトリー関係用語集」の全面改訂を行うので,本資料を題材にして用語集改訂に関する議論が活発に行われることを切に願う.

「本資料」とは「原稿第2案」ですが、原文はIUPACのサイトでリンク切れになっていて読むことができません。この時点ではMS学会の用語集の改訂を2006年に行うことになっていたようです。実際に改訂されたのは2009年ですから、おそらく3年程度はIUPACの勧告を待ったのですね。

 日本分析化学会会誌:2007

内藤康秀「話題:IUPAC委託プロジェクトによる質量分析の標準用語の改訂」ぶんせき, 2007, 362-363 (2007)

質量分析用語についての新しい勧告は,IUPACのオフィシャルジャーナルPure and Applied Chemistry誌の掲載記事として公表される。その原稿は作業部会によって約3年かけて準備され,投稿された原稿は世界各国の約30名の査読員によって審査される。2006年12月現在では,査読意見に基づく改訂稿の準備が行われている段階である。

ここまで来ればあと一歩で勧告が出せると誰でも思いますよね。まさかここからさらに7年もかかるとは…
この解説にはIUPACの組織や活動についてやや詳しく書かれているので、IUPACがどういうものか基礎知識を得たい方には一読の価値があります。ただしMS用語そのものについては一覧でなく抜粋だけが載っています。一覧は次に紹介する解説に載っています。

 日本質量分析学会会誌:2007

内藤康秀「COMMENTARRY: 質量分析関連用語の基礎知識 」J. Mass Spectrom. Soc. Jpn., 55,149-156 (2007)

国内ではIUPAC委託プロジェクトの動向を反映しながら用語集の改訂を進めており、IUPAC勧告後に速やかに新用語集が発行される予定である.
日本側は準備を整えてIUPAC勧告の正式決定を待っていたようです。

不思議なことに、用語の一覧の中にはGC-MS, GC/MS, LC-MS, LC/MSの略号も正式名称もいっさい入っていません。この時点の勧告原稿でどう扱われていたのかわかりません。
しかし内藤さんのこの解説ではハイフンとスラッシュについて詳しく書かれています。長くなりますが引用します。

2.10 ハイフン“-”とスラッシュ“/”の使い分けについて
 ハイフネーテッドマススペクトロメトリー hyphenated mass spectrometry という言葉があるにもかかわらず,複合技法の略語における区切り記号の意味のハイフン(-)は使用されなくなりつつある.その代わりスラッシュ(/)で区切るのがより一般的になっている.
 複合技法の区切り記号にはスラッシュを用い,異なる装置間の接続を意味する記号にはハイフンを用いる使い分けが提唱されている18).例えば,液体クロマトグラフィー質量分析 liquid chromatography/mass spectrometry (LC/MS) の場合はスラッシュ,液体クロマトグラフ質量分析計 liquid chromatograph-mass spectrometer (LC-MS) の場合はハイフンとする.また,(複合技法ではない)単一の分析法の略語にはスラッシュやハイフンを用いない.例えば,飛行時間型質量分析 time-of-flight mass spectrometry の略語表記はTOFMSとする.一方,MS を質量分析計 mass spectrometer の略語として用いる場合,飛行時間型質量分析計 time-of-flight mass spectrometer の略語は TOF-MS とする.さらに,イオン化法の略語の後ろにはスペース(空白)を入れる.例えば,エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析計 electrospray ionization time-of-flight mass spectrometry の略語は ESI TOFMS,電子イオン化飛行時間型質量分析計 electron ionization time-of-flight mass spectrometer の略語は EI TOF-MS とする.この表記ルールはIUPACによって正式に採用されたものではないが,用語を略語にする場合に統一性をもたせるのに有益な見解である.
 なお,現行のIUPACでは略語 GC/MS と LC/MS を,それぞれガスクロマトグラフィー質量分析 gas chromatography / mass spectrometry と液体クロマトグラフィー質量分析 liquid chromatography/mass spectrometry の意味の正式な用語として認めているが,次回のIUPAC勧告ではこのような特例はなくなり,他の略語と同様に扱われる予定である.

まず赤字のところにびっくり!2013年以前は、IUPACはGC/MSとLC/MSを正式な用語にしていたんですね! 知りませんでした。

最初のほうの太字のところ「ハイフン(-)は使用されなくなりつつある.その代わりスラッシュ(/)で区切るのがより一般的になっている」は、私が英語論文の現状を調査した限りでは事実でありませんが、2007年ごろにはそうだったのかもしれません。何しろ当時はIUPACがスラッシュの方だけを正式な用語にしていたらしいので。

それから下線のところ「IUPACによって正式に採用されたものではない」とありますが、では何なのかといえば、引用文献18番、David Sparkmanの本「Mass Spectrometry Desk Reference」で書かれているルールですね。

以上3つの解説からわかることは、
1 IUPAC勧告の原稿に「ハイフン:装置、スラッシュ:分析法」のルールが書かれていたかどうかは不明
2 使い分けを含むSparkmanのルールを「有益な見解」と紹介する文章が用語集編纂時期のMS学会の会誌に掲載された

ということです。

これだけを見ると、MS学会はIUPACの態度があいまいなのでSparkmanに従うことにしたと思われるのですが、IUPAC勧告の当時の原稿を読めないのでよくわかりません。

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2020.05.17

GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(19)私が考える理想形

GC/MSとLC/MSに関わるほとんどの方が一度は悩んだと思われるハイフン/スラッシュ問題、結局皆さんどうしてますか?私は既に自分のサイトでの方針を決めていますが、あらためて白紙から理想を語ってみます。

白紙と言っても既定の状況がいろいろあって、現実は自由ではないのですが、仮想の自由な状態から順番に制限を増やして考えてみます。

 第1段階:世界中に何も制約がない場合

あり得ない話ですが、世界にまだ略語GC-MSもGC/MSも存在しておらず、私が決められる立場だとします。略語創造主の津村はどうするでしょうか?

それはもう、
「ハイフンを使ってGC-MS及びLC-MSと書く。これらは分析法の意味でも装置の意味でも使える。特定する場合は『法』『装置』などを付けること。」
の一択です。

これ、特に珍しくも何ともない発想ですよね。GCもLCもMSもそういう使われ方をしている略語で、それがハイフンで結ばれただけ。また、略語を作る際にはハイフンを使うのが普通でしょう。こんな略語を「創造」しても分析化学史に名前は残らないと思います。

こうしてみると、最初にスラッシュを使った奴だれ?と言いたくなりますが、調べるのはたいへんそうなのでやめておきます。

 第2段階:現状の世界で私が決められる場合

これまたあり得ない話ですが、現状の世界で、私が独裁的に決められるとすればどうするでしょうか。

この場合でも第一段階と同じで、
「ハイフンを使ってGC-MS及びLC-MSと書く。これらは分析法の意味でも装置の意味でも使える。特定する場合は『法』『装置』などを付けること。」
にしますね。

私の想像ですが、2013年のIUPAC勧告の審議過程でもこのように主張した人がいたのではないでしょうか。世に出ている論文の圧倒的多数はハイフンを使用しているのですから。

しかしこのようには決まらず、ハイフンもスラッシュも使える混沌とした状態を追認する形になりました。勧告が決まる過程でどんな力関係が働いたんでしょう。知りたいものです。

 第3段階:世界の現状を踏まえて私が日本の方針を決められる場合

では、世界がハイフン/スラッシュ混在状態の中、私が日本の方針を決められるとしたらどうでしょう。例えば文部省「学術用語集 化学編」(1986)のような事業がまた行われて、多くの学会や公定法や行政用語に影響を与えられるとしたら?

そのような場合は、
「ハイフンを使ってGC-MS及びLC-MSと書く。これらは分析法の意味でも装置の意味でも使える。特定する場合は『法』『装置』などを付けること。ただし科学教育においては、国際的にスラッシュを使ってGC/MS及びLC/MSと表記する場合もあることを教えること。」
にすると思います。

国際論文誌に出てくるGC/MSやLC/MSの意味がわからなかったら困りますし、「Rapid Communications in Mass Spectrometry (RCM)」のようにGC-MSやLC-MSを禁止している雑誌もあります。

それから、忘れてならないのは、
「国際情勢がスラッシュ優勢になってきた場合、または新たなIUPAC勧告でスラッシュ使用が決められた場合は、GC/MS及びLC/MSに切り替える。」
です。
そんな事態になるのかどうかは不明ですが、あくまで日本の規格や日本語論文を統一するための暫定的なルールであると明記しておきます。

なお、現実の学術用語集には「gas chromatograph-mass spectrometer (GC-MS)」だけが掲載されており、分析法はどう表すのか、液クロはどうなのか、まったくわかりません。

 第4段階:世界と日本の現状を踏まえて小規模な組織での方針を決める場合

このあたりになるとかなり現実的です。皆さんも、手順書や報告書などでどう書くべきか悩んだことがあるのではないでしょうか。

私が考える一番無難な道は、
「自分たちの分析業務において一番影響力の大きい公定法や団体の方針に従う。ただしハイフンまたはスラッシュのどちらかだけを使用することにする。」
です。

私が調べた範囲では、日本質量分析学会、日本分析化学会、クロマト用語のJIS、そしてLC/MSのJISは、「ハイフン:装置、スラッシュ:分析法」の使い分けを定めています。
これをそのまま使うと、同じ組織内の文書にハイフンとスラッシュが混在することになり、事務方から誤植を疑われるなどの面倒が起こりかねません。

そこで、これらの学会やJISの影響力が大きいと考えるのであれば、自分たちの組織としてはハイフンまたはスラッシュのどちらかだけを使用することに決めて、
 GC-MS(装置) GC-MS法(分析法)
   または
 GC/MS(分析法) GC/MS装置(装置)
の組み合わせのどちらかを選んで組織のルールにしてしまいます。

日本食品衛生学会はハイフンの使用だけを投稿規定で決めているので、この学会の影響力が大きいなら、
 GC-MS(装置) GC-MS法(分析法)
の一択です。

GC/MSのJIS本文はスラッシュだけを使用しているので、このJISだけを重視するなら
 GC/MS(分析法) GC/MS装置(装置)
となります。(ただしGC/MSのJISはクロマト用語のJISも含むことになっているのでハイフンでもよい。)

 第5段階:現実の中で個人の方針を決める場合

私自身の方針は4年前と変わりません。「ハイフンとスラッシュについて」で表明している通り、
 GC/MS(分析法) GC/MS装置(装置)
です。

好みとしてはハイフン派ですが、使い勝手などを考えてスラッシュを選びました。
また、本当はいちいち「装置」を付けたくはありません。私が書く文章はたいてい分析法が中心なのですが、時には装置が中心になることもあります。そんな時には「装置」の意味でGC/MSと書きたい。特に図表の中で使う場合は、2文字多いだけでも窮屈になります。

それでも質量分析学会やJISが決めていることに反することをしたくはないので、やむを得ず「GC/MS装置」と書くことにしています。

 まとめ

私の願いとしては、ハイフンかスラッシュのどちらかに早く世界が統一されてほしいです。RCMがスラッシュ推しでがんばっているのは確かですが、4年前に期待したほど浸透していないようです。まだまだ統一までは遠い道のりのように思えます。

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2020.05.16

GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(18)使い分けのメリットとは?

そろそろ一連の調査と考察をまとめたいと思っています。すると「ハイフン:装置、スラッシュ:分析法」の使い分けのメリットについての考察が抜けていたことに気づきました。

私はこの使い分けに疑問を感じていますが、何ごともメリットとデメリットのバランスで考える必要があります。世界で一般的でないのに日本ではJISにまでなっている使い分け、何かメリットがあるに違いありません。今回はこの点を深めてみます。

 日本質量分析学会(MS学会)の会誌に掲載された見解

そもそもの始まりは、2009年にMS学会の用語集でこの使い分けが採用されたことです。IUPAC勧告を先取りしたはずだったのに、2013年に出たIUPAC勧告では使い分けしないことになりました。しかしMS学会は軌道修正はせず、使い分けを続ける立場をとりました。その経緯を説明したコメンタリーをもう一度読んでみました。

吉野健一「ハイフンとスラッシュの使い分けについて(コメンタリー)」 J. Mass Spectrom. Soc. Jpn., 62(5), 61-64 (2014)

一部の専門家がハイフンとスラッシュの使い分けを提案した最大の理由は,“LC-MS”や“LC/MS”という略語が定義なしに用いられた場合,その略語が装置である液体クロマトグラフ質量分析計(liquid chromatograph-mass spectrometer)を表しているのか,分析法である液体クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography/mass spectrometry)を表しているのか,区別ができないという問題を解消させるためである.
“LC-MS”や“LC/MS”に限らず,同一の文書内で同じ略語を複数の用語に対して使用することは,読み手の混乱を招くことから,これを避けなければならないことはIUPAC recommendations 2013であえて言及する必要のない科学的な文献を記述するルールの一つである.

このように書かれているのですが、具体的にどのような「問題」や「混乱」が起こるのかに触れていません。

 具体的に考えてみる

それではということで、私自身が考えてみました。
私はGC/MSやLC/MSの専門家ではなく、一ユーザーに過ぎません。ですから、分析法や装置そのものについて極めて専門的な表現が必要になることはありません。
しかし私はこれらを使用した研究の論文を書くことがありますし、これらに関する書籍も出版していますから、用語はきちんと使いたいと考えています。このような立場での考察であることをお断りしておきます。

よく使う表現から思い浮かべていくと、そもそも区別が不要なシーンがけっこう多いことに気づきました。
 「GC/MSで分析した」
 「GC/MSの条件は」
これらは分析法なのか装置なのか、どちらで解釈されても支障ないでしょう。

次に、文脈から意味がわかるケースも多いと思います。
 「GC/MSのデータによれば」(たぶん分析法)
 「GC/MSの結果では」(たぶん分析法)
 「このGC/MSの大きさは」(たぶん装置)
もしかしたら書き手の意図は違うかもしれませんが、違っていたとしても大きな違いではないと思います。

こうなるとどんな場合に使い分けが必要でメリットがあるのか困ってきますが、こんな例はどうでしょうか。
 「GC/MSが必要」
これだけでは分析法なのか装置なのかわかりません。
でも普通の文章の中だったら・・・?
 「この試験室にはGC/MSが必要」(たぶん装置)
 「この成分の同定にはGC/MSが必要」(たぶん分析法)

あれこれ考えた挙句、こんなのを思いつきました。
 「GC/MSの費用は」
これは装置の価格なのか分析を行う際のコストなのか、前後の文脈を多めに読まないとわからないと思われます。まあ、1,000万円なら装置で1万円なら分析単価でしょう。

 「装置」や「法」を付ければ区別できる

以上のような簡単な事例では、問題も混乱も特に思い浮かびませんでした。ただし、より複雑な記述になるほど、区別すべきシーンもあるかもしれません。その場合には「GC/MS装置」「GC/MS法」のように書くことができます。

すなわち、ハイフンとスラッシュで区別しなくても別の方法があることを考えに入れる必要があります。ハイフンとスラッシュはそれぞれ半角1文字であるのに対して「装置」「法」は文字数が多いですが、使うのが不便なほど長いわけではありません。

 使い分けの不徹底

考察する中で逆に
「そんなに使い分けが必要なら、もっと徹底しなければおかしいのでは?」
と思ったことがあります。

まず、GC、LC、MSの語が使い分けられていないことです。これらはそれぞれ装置の意味でも分析法の意味でも使われますが、必要性が極めて高いのであれば、これらも使い分け法が工夫されているはずです。あるいは、結合した時だけ使い分けなければならないのであれば、その理由を知りたいところです。

さらに、ハイフンとスラッシュは表記だけの違いであり音では区別できないことにも疑問を感じます。GC/MSもGC-MSも読みは同じ「ジーシーエムエス」です。これまた、必要性が極めて高いのであれば音でも区別できるようにするべきでしょう。音で区別できるという意味では「GC/MS装置」「GC/MS法」の方がすぐれています。

 ハイフンとスラッシュが混在するデメリットはある

以上の通り、少なくとも私の経験では「ハイフン:装置、スラッシュ:分析法」の使い分けによるメリットを感じたことはありませんが、使い分けのデメリットを感じたことはあります。私もほんの短期間ですが、使い分けを実践してみた時期があるのです。

まず、書き分けがわずらわしい。前半で述べたように装置・分析法の区別が不要な文脈もあるのに、いちいち判断しなければなりません。

自分が面倒なだけならまだ良いのですが、誤植を疑われて説明が必要になる、これが一番困りました。読み手は分析の専門家でないクライアントだったり装置を調達する事務方だったりもします。同じ文書内にGC/MSとGC-MSが混在していたら「どちらかが間違いだろう」と推定するのが人情です。冒頭でそれぞれの正式名を書いたとしても、すべての文書が冒頭から丹念に読まれるわけではありません。世間の人たちは忙しいです。

質量分析の専門誌「Rapid Communications in Mass Spectrometry (RCM)」はスラッシュだけを使用していますが、これは同じ論文誌の中でハイフンとスラッシュが混在することにデメリットがあると判断したからではないかと思います。

 結論

使い分けのメリットを探すという私の試みは成功しませんでした。まあ、「装置」「法」を付けるより文字数が少ないというメリットはありますが、デメリットに見合う大きさのメリットでしょうか。もっと他にメリットがあるのではないでしょうか。ご存知の方がおられたら教えてほしいと思います。

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2020.05.09

GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(17)日本語論文誌では?

英語で書かれた論文は、「GC-MS」「LC-MS」で分析法も装置も表現したものが多い―これが前記事の調査結果でした。日本国内で発行されている日本語の論文はどうでしょうか?
4年前にはこんな調査はしませんでしたが、今は全国的にステイホーム。私も時間があります。やってみました。

最初に私の立場を書いておきます。
こんなにしつこくハイフンvsスラッシュ問題を取り上げるのは、国際的にほとんど行われていない「ハイフン=装置、スラッシュ=分析法」の使い分けを日本国内だけで推し進めることに疑問を感じるからです。

したがって、英語論文の調査は
「国際的な動向をありのままに読み取る」
姿勢で、できるだけ中立的に結果を解釈しましたが、日本語論文については
「使い分けを推奨している論文誌に対して懐疑的」
な姿勢になります。中立でありません。色々な立場があると思いますが、これが私の本心ですので、最初にお断りしておきます。

 調査の方法

国立情報学研究所の CiNii(サイニィ) を使いました。
全論文を対象に「クロマトグラフィー 質量分析」で検索し、ヒットした最新60報の掲載誌を調べ、その投稿規定・執筆要領を見に行きました。

紀要、所内報、研究助成団体などが発行しているもの、それから要旨集は除きました。

 全体的な傾向

予想していたことですが、独自に略語の使い方まで決めている学術誌はそれほど多くありませんでした。
用語については特に定めがないか、JIS、文部省「学術用語集」、日本化学会「化学便覧」等に従うよう書かれていました。これらの中で「学術用語集(化学編)」は1986年刊で古書でしか手に入りません。また「化学便覧」は2004年刊、定価5万円以上です。
現実的にはJISを参照する人が多いのではないでしょうか。やはりJISの影響は大きそうだと感じました。

なお、IUPACに従うように書いているものは少数でした。(ただし化合物名はIUPAC準拠が多い。)

 明確に使い分けを規定している学術誌

「ハイフン=装置、スラッシュ=分析法」を掲げる用語集を発行している日本質量分析学会の「質量分析」(Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan)はどうでしょうか。投稿規程 には「8. 略語の使用について」という項があり、

略語の使用は著者と専門が異なる読者が内容を理解する際の障害となるおそれがありますので,文中に頻出する用語以外での略語の使用はできる限り避け,使用する際は必ず初出時に定義をして下さい.また同じ語句を異なる用語の略語として用いることは認められません.
と書かれています。

直接ハイフンとスラッシュの使い分けが書かれているわけではありませんが、「同じ語句を異なる用語の略語として用いる」を禁止しています。

それから日本分析化学会の「分析化学」は、もっと明確に使い分けを要求しています。
投稿 のページに「論文題名に使用できる略語の例」が掲載されています。

論文、および論文タイトルで使用できる略語の例です.これら以外でも一般的と認められる略語は使用することができます.

―列挙されたものから抜粋―
 GC-MS(装置)
 GC/MS(分析法)
 LC-MS(装置)
 LC/MS(分析法)


上記の中でカッコ内には英語正式名が書かれていますが、わかりやすくするため装置・分析法と書きました。

以上の通り、日本質量分析学会と日本分析化学会は足並みをそろえて「ハイフン=装置、スラッシュ=分析法」の使い分けを推進しています。

 ハイフン推しの学術誌

日本食品衛生学会「食品衛生学雑誌」の 編集規定・投稿規定 は非常にユニークです。

「本誌で定義なしで用いることができる略語の例を別表3に示す.なお,表題,ランニングタイトルでは,原則として定義を要する略語は使用しない.

―別表3に列挙されたものから抜粋―
 GC-MS(装置)
 GC-MS/MS(装置;分析法)
 LC-MS(装置)
 LC-MS/MS(装置;分析法)

これはびっくりです!定義なしで用いることができる略語はハイフンの方だけ。スラッシュを使うこともできますが、その場合は正式名称を書く必要があり、表題とランニングタイトルには使えないというのです。
しかも、タンデム質量分析に関しては「*C-MS/MS」で装置も分析法も兼ねるそうです。

私がこの雑誌に投稿するなら、ハイフンだけを使って「*C-MS:装置、*C-MS法:分析法」と書くでしょう。個人的にはめちゃくちゃ好みに合ってます。国際的に主流になっている使い方ともよく一致しています。

ただし上記は私の推測です。食品衛生学会にはかつてたいへんお世話になりましたが、今は会員でないので掲載論文を読むことができず、残念ながら実際の文章はわかりません。

 読者にゆだねている学術誌

略語の使い方を決めている学術誌はそれほど多くありません。その中で「日本プロテオーム学会誌」は 投稿規程 に「別表2 題名,要旨及び本文に用いることのできる略語」が付いています。
この中にはGCもHPLCもLCもMSもあるのに、これらを組み合わせた略語はリストされていません。

私の深読みかもしれませんが、あえて執筆者が自由に選択できる仕組みのようにも思えます。IUPACの勧告は大きな自由度を持たせていますが、それに沿っていると解釈することもできます。

 意図がわからない学術誌

日本薬学会「薬学雑誌」の 投稿規定 には略語の項目があり、このように書かれています。

スペルアウトしないで使用できる略語は次のとおりです.

―列挙されたものから抜粋―
 GC-MS(分析法)
 LC/MS(分析法)

これは驚きの使い分けです!どちらも分析法なのにガスクロはハイフン、液クロはスラッシュを使うんですね。私にはこの意図がわかりません。

この投稿規定でもう一つ変わっているのが
MS(mass spectrum)
です。通常は質量分析(分析法)もしくは質量分析計(装置)をMSと定義しますが、なんとマススペクトル(データ)にMSを割り当てています。

日本薬学会は140年の歴史を持つ学会ですから、何か深遠な理由があるのかもしれません。

 早いもの勝ち?の学術誌

日本水道協会「水道協会雑誌」の 投稿規定 に「キーワード一覧表」が付いています。

令和元年12月現在までに使用されたキーワードの一覧表です。キーワードの類似を避けるため、なるべく下記の一覧表よりお選びください。

―列挙されたものから抜粋―
 HS-GC/MS
 ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)
 GC-TOFMS
 熱分解GC-MS
 PT-GC/MS
 LC-MS
 LC-MS/MS

これは、各論文に5個まで付けるキーワードを、できる限り統一するためのリストだそうです。このリストに無い語をキーワードにすることもできますが、その場合は「※」を付けて独自の語であることを示すことになっているようです。

並んでいる語の中でGC/MSだけ意味が書かれていますが「装置」です。その他の語が何を意味しているかは書かれていません。ハイフンとスラッシュの両方が使われています。もしかしたら「早いもの勝ち」で、誰かがキーワードとして使用したら、以後の執筆者は既存の中から選ぶのかもしれません。

 用語集が高価すぎる学術誌

日本栄養・食糧学会は「日本栄養・食糧学会誌」を発行しています。この学会のサイトに 用語管理 のページがあり、

本学会では学会誌など学会活動で用いる用語を、栄養・食糧学用語辞典〔第2版〕(公益社団法人日本栄養・食糧学会編, 建帛社(2015))により管理しています。

と書かれています。用語辞典の出版後の修正を毎年公開するなど、用語をとても大切にしている姿勢がわかります。しかしこの用語辞典は税込み定価 12,100円だそうで、気軽に買えるようなものでありません。これだけ用語にこだわる学会がハイフンvsスラッシュをどう扱っているか知りたいですが、手が出ません。

 特に方針を示していない学術誌

以下の学術誌は検索にヒットした論文が最低1報ありますが、クロマトグラフィーと質量分析の結合を表す略語に関する規定が見つかりませんでした。特に決めていない学術誌が大部分ということでしょう。

医学書院「臨床検査」
環境技術学会「環境技術」
強化プラスチック協会「強化プラスチックス」
国際環境研究協会「地球環境」
室内環境学会「室内環境」
日本アロマ環境協会「アロマテラピー学雑誌」
日本エネルギー学会「日本エネルギー学会誌」
日本化学会「化学と教育」
日本環境測定分析協会「環境と測定技術」
日本空気清浄協会「空気清浄」
日本接着学会「日本接着学会誌」
日本透析医学会「日本透析医学会雑誌」
日本塗装技術協会「塗装工学」
日本乳業技術協会「乳業技術」
日本法科学技術学会「日本法科学技術学会誌」
日本防錆技術協会「防錆管理」
日本水環境学会「水環境学会誌」
日本木材学会「木材学会誌」
日本臨床検査医学会「臨床病理」
日本臨床衛生検査技師会「医学検査」

 まとめ

今回調査した中で学会としての姿勢が明確なのは3つと思われます。

日本質量分析学会、日本分析化学会
「ハイフン=装置、スラッシュ=分析法」

日本食品衛生学会 
「ハイフンのみ使用」

Rapid Communications in Mass Spectrometry (RCM)に追随してスラッシュだけを使用する学術誌が一つくらいはあるのではないかと思っていましたが、見つかりませんでした。

それにしてもクロマトとMSを使う分野は本当に幅広いんですね。あらためて驚きました。多くは、暮らしに身近な環境や製品の分野のようです。
日本の科学技術のあらゆる現場で、技術革新や分析値の質向上に励む人たちがいるんだと実感しました。

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