組織の人

2007.01.22

上司にブログを読まれたら

 インターネットコム(株)とJR 東海エクスプレスリサーチによる社員ブログに関する調査結果、「お行儀のいい日本人、上司が怒る社員 Blog はほとんどない」より。

 調査対象は官公庁、地方自治体、民間企業に勤務する管理職クラスの男女330人。

全体330人のうち、部下が Blog を書いていることを知っているのは14.5%、そのうちの68.8%(全体に対しては10%)33人が部下の Blog を読んだことがある、と回答した。

また、部下の Blog を読んだことのある33人のうち、内容が勤務先の内情に触れた不適切なものとして禁止したい、と思っているのは、わずか6.1%(全体に対しては0.6%)の2名に過ぎないことがわかった。

 上司が部下のブログを読んだのは、何らかの形でブログの存在を知ったからだ。部下は読まれても差し支えないブログだから直接・間接にブログの存在を漏らしたのだろう。そういう条件下で調査すれば、「お行儀のよい」ブログばかりというのは不思議でない。
 ブログ一般について、「自分がこのブロガーの上司なら怒る。そんなブログを見かけたことがあるか」という質問ならどんな結果になるのだろうか?

関連する過去記事

 「専門家は個人の責任で情報発信するな」について:補足
 たとえ上司に自分のブログを読まれているとしても、そのことを書くのはやめるほうがよいと思う。その理由。

 個人ページ内で自分の所属先を書くことについて
 所属先を書くか書かないかは、実名を書くか書かないかよりもずっと小さい影響しか持たないと思う。でも所属先名を書かないほうが負担は少ないだろう。

 匿名ブログが勤務先で問題にされたら
 ブログが上司に見つかっただけでなく「会社HPに社員として日記を書いてはどうか」と提案された人の話。

 仕事関係のことを突っ込んで書く私の工夫
 あなたのブログ、職場の人に見つかった場合、「どういうつもりでやってるんだ」と言われる心配はありませんか。そんな事態に備える工夫。

 ブログで書いたことが原因で解雇された社員
 米国の事例。

 国家公務員の実名ブログ
 実名・所属を明らかにして業務に密着したことを書き、毎日更新して、2年半も続いているブログの紹介。

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2006.03.15

経産省部長の「炎上」ブログ続報(朝日新聞)

 経済産業省の谷みどり消費経済部長のブログが約3週間で閉鎖に追い込まれた件について、朝日新聞夕刊2006年3月14日付け科学欄(記者席)にコメントが掲載された。科学医療部次長 高橋真理子「専門家の発信、生かせる環境に」という署名記事。筆者の主張が述べられている部分を引用しておく。

 だが、そもそもPSE法の広報は経産省の仕事であり、それが不十分だったことは当の経産省も認めている。足らざるを補う努力がなぜ職務でないのか、不思議である。
 情報の自由な流通を可能にしたインターネットは、一方で無法地帯といわれてきた。管理する者はどこにもおらず、悪意の情報もいくらでも流せる。善意の書き込みが思わぬハレーションを起こすこともある。
 だから、インターネットとの付き合いは慎重を期した方がいい。ただ、忙しい専門家が発信するのにこれほど便利なメディアもない。自らの知識と経験をもとに、社会の関心事をわかりやすく語る。使命感に基づくそんな活動が自由にできない環境は、何とも情けない。

 私は、個人サイトで所属組織の政策の広報をすることは「職務」でないと思う。
 その組織内でブログを広報に利用することを決め、担当者を選んで任せたなら「職務」だ。しかし、個人の判断で開いたブログが「職務」になり、勤務時間中に堂々と更新されるとしたら、ちょっと待ってくれと言いたい。
 そのようにして発信された情報の責任はどこにあるのか。突き詰めれば個人の判断でしかないものが、組織のお墨付きを受けたものであるかのように受け取られるのではないか。

 この問題については2年以上前にウェブ上で一大議論になり、相当多くの人たちが意見を述べた。火元になった徳保隆夫さんは、まとめページ 専門家の情報発信 を作っている。
 私の意見は 「専門家は個人の責任で情報発信するな」について:補足 に集約されている。組織のお墨付きでやるなら、企画として提案し、手続きを踏んで決裁を受けるべきだ。お墨付きを取るのが面倒なら、徹底的に個人の責任で(個人の時間とお金で)やるべきだ。どちらなのか見分けのつかない情報が飛び交うのは、納税者として納得いかないし、生活者として安心できない。

 今回の「炎上」事件に関して私が注目したいのは、谷部長が勤務時間中の更新をとがめられて「職務専念義務違反」としてだけ注意を受けた点である。
 「組織の人のblog」過去ログ で書いたとおり、組織の人が個人的に情報発信すること自体が問題視される可能性もあると思ってきた。しかし、少なくとも経産省は、私が上記記事に書いたようなもろもろの懸念は表立って問題にしていないようだ。このことは、「組織の人のブログ」史上、画期的だと思う。

この記事のトラックバック先

谷みどり嬢、ブログ「谷みどりの消費者情報」問題で大臣官房から注意を受けていた(Garbagenews.com)

珍しく国会や役所のことに胸を痛めたこと(境真良(実名登録)の日々是雑感)

役人の情報公開は支援する方向で (事象の地平線)

谷みどりさんとPSE法(END_OF_SCAN)

公務中に個人ブログ更新~経産省キャリア(閑人斎の一刀両断)

ブログという場について考える(tata日記)

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2006.03.10

国家公務員の実名ブログ

 実名・所属を明らかにして業務に密着したことを書き、毎日更新して、1年半も続いているブログがある。3週間で閉鎖に追い込まれたブログ が話題になったのをきっかけに書いておく。

 はてなダイアリーで開設されている 食品安全情報blog。国立医薬品食品衛生研究所安全情報部主任研究官の 畝山智香子さん がやっている。

 安全情報部は、ヒトの健康に関わる情報を収集して厚生労働省の政策に生かしたり国民に情報提供することが業務だ。畝山さんは、業務の中で集まった情報の一部をこのブログで個人的に公開している。情報の範囲は食品の安全に関わる様々な事項(ダイオキシン、重金属、天然成分、食習慣、etc.)、情報源は、主に海外の論文、政府系サイトなど。膨大な記事が毎日発信される。

 私が 分析化学のページ でこのブログを紹介したのは、開設されて間もない頃、2004年10月だった。その後2005年1月に、日経BPのコラム 松永和紀のアグリ話 でも、 食品安全関係者必見!お役立ちブログ として紹介された。

 これだけ息長く続くとは、失礼ながら一年半前には思ってもいなかった。掛け値なしにすごい。
 このブログが関連業界の人たちにとってどれほど有用かは、松永さんの上記記事に詳しく書かれているので繰り返さない。私は、このブログのスタイルについてちょっと書いておく。

  • 公開情報の引用のみで構成
  • ブログ開設者の主観はあまり書かない
  • コメント欄はあるが目立たない(畝山さんはこまめに返信している。)
  • フルネームと所属はブログには書かれていない
  • 一見するとどういうサイトかわからない

 こういった特徴が、公務員の立場でも支障を起こさず、「炎上」などとは無縁に続いている秘訣だと思う。このブログを読む人の多くは、検索でアクセスする人たちだろう。「食」についてちょっと不安なニュースを聞いた時、日本語で検索して英語の情報源と簡単な解説がヒットする。これは非常にありがたいことだ。そういう一般消費者の人たちは、このブログがどんな素性のものかは知らないまま読み、去っていくのだろう。

 一方で、畝山さんの所属や業務内容を知った上で付いている固定読者もいる。それは、松永さんや私の紹介文を読んでこのブログを知った一部の人たちであり、業界の玄人たちだ。

 本来、国の機関が情報発信するとなると(たとえ単なる引用でも)正確さの精査のためにかなりの時間と労力が費やされるが、個人の情報発信ではそれほどのコストがかからない。もし畝山さんが公開しなければ、収集されるだけで広範囲の人の目には決して触れないであろう情報群が、ブログによって日の目を見ている。

 国家公務員の情報発信、こういうスタイルもあるということを紹介してみた。

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2006.03.08

小心でないサラリーマンのブログ

経産省部長ブログ「炎上」 PSE法巡り書き込み殺到 (asahi.com)

 本日(2006年3月8日)付けの朝日新聞夕刊に載った記事。既に多数のブックマークが付いている。これから多数のブログで言及されるに違いない。(はてなブックマーク 経産省部長ブログ「炎上」

 経済産業省の現役部長が役職と氏名を明示して開設したブログ「谷みどりの消費者情報」が炎上して閉鎖に追い込まれたという記事。谷さんは「公務中の更新を巡り、国民の非難を浴びた」として国家公務員法の職務専念義務違反で注意を受けたとのこと。

 私のブログで扱っているテーマの一つが 小心なサラリーマン専門家に何が書けるか を探ること。今回のは大胆すぎて守備範囲外だが、ネット事件簿に特記されそうな事例なので書き留めておく。

(私のブログでの関連カテゴリ:組織の人世間体

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2004.09.14

ブログで書いたことが原因で解雇された社員

 ちょっと最近、ネット上の情報にうとくなっている。すでに一回りしてしまった感じのニュースだが、このブログのテーマに照らしてはずせないので書いておく。

 あらきけいすけさんの日記(9月13日付け) で知った 個人ブログが「やぶ蛇」に--ネット企業が社員を解雇(CNET Japan、9月1日付け)の記事。

 Friendsterが米国時間8月30日、個人的に付けているBlogの内容に問題があったとして、従業員の1人を解雇した。同社は、オンラインソーシャルネットワーキングという新しい分野を開拓し、仲間うちでの自己表現を促進していることで有名な企業だ。解雇されたのは、カリフォルニア州サニーベル在住のウェブ開発者Joyce Park(35歳)だ。同氏は、個人的に書いていたBlog「Troutgirl」の内容が許容範囲を越えていると、30日に上司から告げられたという。また、最高経営責任者(CEO)Scott Sassaの決断だということ以外、解雇に関する説明は会社側から得られなかったと同氏は述べている。

 「解雇される前に、私がBlogのなかでFriendsterに言及したのは、3回だけだ。3回とも、一般に公開されている情報しか掲載していない。Blogをつける場合の社内規定もなかったし、(自分の行為について)事前に警告があったわけでもない。Blogの記載を取り下げるように言われたこともない」(Park)

 Friendsterの広報担当Lisa Koppは、従業員の人事についてはコメントしないと述べている。


 「一般に公開されている情報しか掲載しない」のは、私がとっている方針でもある。それでも問題が起こるのか?具体的に、どんな情報だったのか?会社側は説明していないが、記事にはこうある。
 Parkによると、同氏はそれまでJava J2EEで書かれた同社のウェブサイトをPHPに書き換えるため、今年1月に同社に採用されたという。新しいサイトは6月から運用が開始された。同社ではサイトのリニューアルについて大々的に宣伝しなかったが、外部の人たちのなかには、ウェブサイトのファイル拡張子が変わっていることに気が付いていた人も多い。

 ちょうどその頃、Parkは自身のBlog「Troutgirl」のなかで、Friendsterの以前のサイトは処理が「遅かった」と述べた。このコメントは、すぐにハイテクマニア向けの情報交換サイト「Slashdot」で取り上げられた。さらに8月には、このことがInfoWorldの記事のなかで書かれることになった。また、Parkは近ごろ、ソーシャルネットワークはもっと進化すべきだといった内容のコメントをBlogに掲載している。


 つまり、解雇された人がブログで書いたのは、自分の会社のリニューアル前のウェブサイトの処理が「遅かった」ことと、自分の会社が手がけているサービス分野が「もっと進化すべきだ」ということらしい。「遅かった」発言はメジャーなサイトで取り上げられたからある程度影響があったのだろうし、「進化すべきだ」のほうは、おそらく根拠=現状に対する批判を含んでいたのだろう。

 私は 「組織の人のblog」過去ログ の中で、組織の人のblogが問題になるとすればどんな場合が考えられるかについてまとめを書いた。今回のケースは、「たとえ既に公開されている情報であっても、組織として実施した事業内容に当事者の立場で言及するのは情報管理上好ましくないとして問題視される」というのに当たりそうだ。単に「言及」でなくネガティブな評価を述べたらしい。
 会社側がとった「解雇」という措置について論評はしないが、こういう事例があったことは心にとめておこう。

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2004.07.12

仕事関係のことを突っ込んで書く私の工夫

 誰にでも当てはまるとは思わないけれど、私が実践していること。
 「自分がウェブ上で書くのはこの範囲」と決めて、目立つところに掲載しておく。運用方針
 自分では、問題発言をする気は全然ない。でも、所属組織の関係者がたまたま私のサイトを目にしたら、そんな楽観的ではいられないかもしれない。どういうつもりでやっているんだとか、ききたくなるかもしれない。きかなくてもいいように、こちらから書いておく。
 「勤務先にはサイトを作っていることを伝えているんですか?」と質問されることがある。私は、 個人ページは本人だけの責任で作るもの と考えていて、勤務先に伝えているかどうか自体、ウェブ上では書かない。
 これは一つの考え方に過ぎず、むしろ勤務先で取り上げてもらってある程度の公認がもらえたほうがいい、という意見もあろうし、事例はどんどん公表してスタンダードが確立していくのに貢献すべきだ、という意見もあるかもしれない。

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2004.07.08

匿名ブログが勤務先で問題にされたら

 ブログで勤務先のことは一切書かない、という人も多いけど、結構書いている人も多い。匿名ならかなり自由に書けそうだな・・・と私は気楽に考えていた。
 ところが、秋月ナルさんの「顛末報告//日記再開のご挨拶。」を読んで驚いた。日記の記述が社内関係者の目にとまり、ちょっとした問題になったそうだ。秋月さんへの事情の聞き取りまであったらしい。
 「秋月日記」は環境分析の試験室の日常を描くウェブ日記だ。環境分析を実施している機関は多数あり、どこでも類似した日常業務が行われている。描写自体はリアルだが、それによって企業秘密が漏れたりすることはないと思う。また、日記の縦糸になっているのは「分析という仕事が好き」な気持ちで、これを読んだ人が秋月さん及び会社に持つイメージは、ほぼ間違いなくプラスの方向だと思う。
 ・・・ということが聞き取りでも認められたらしく、これまでどおり日記は続けられることになったようだ。それどころか、「会社HPに社員として日記を書いてはどうか」という提案まであったとか。
 これは面白い。実現すれば、分析業界どころか化学業界全体で初の画期的な試みになっていただろう。でも、秋月さんは断ったそうだ。その気持ちもわかる。私も、前の職場のサイト内でページを作成していたときは、熱心に更新する気にならなかった。
 ともかく、日記が続くことになってよかった。少なくとも私は、秋月さんの日記でたいへん助かっている。私のサイトは分析の専門家向けページとHP作成関連の一般向けページの2種類しかなく、一般向けに化学分析を紹介する内容は皆無なので、秋月日記のようなサイトが存在していることに感謝している。

追記(2007/1/22)
 このブログは移転しています。移転先:秋月日記。
 「顛末報告//日記再開のご挨拶。」の記事は削除されています。

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2004.06.17

「組織の人のblog」過去ログ

 先週書いた 「組織の人のblog」という話題 の続き。blogに限らず、ネットで組織の人が発言することに関する意見を整理して、知っている範囲内の過去ログもリンクしておこうと思う。

二分される姿勢 
 いろいろな人がいろいろなことを書いているが、基本姿勢は主に2通りある。組織の人が発言することに慎重さを求める意見と、あまり規制をかけるべきでない(日本社会の特質から来る「自主規制」も含めて)という意見だ。
 規制すべきでないという意見は、どんな立場の人から出てもおかしくない。それに対して、慎重さを求める意見では、まず発言者の立場が明らかにされる(はず)。
 というのは、他人が自由意志でする表現に干渉するわけだから、対象となっていない人まで「自分が言われた」と受け取ったり、強制力があるわけでもないのに強制されたと感じる人がいると、ネットでお決まりの反応になりがちだから。
 発言者の立場として一番ソフトなのは「私はこのように心がけています。参考になると思う人だけ参考にしてください」だろう。一番きついのは「こうするのが正しい。こうしないやつは社会正義に反している」といった主張の仕方だ。中間に、いろいろな立場がある。

私の姿勢 
 私はずっと、慎重派の発言をしている。自分が保身を心がけながらネット活動しているから、それを方法論としてまとめると当然慎重なものになる。
 しかも、単に「参考になれば」より踏み込んだ干渉をする場合がある。というのは、「組織の専門家がウェブで発言すること」を勧める文章を何度も書いているからだ。これらの文章を読んでサイトを開く気になった人がいるとすれば、私は多少なりとも責任を感じる。あらかじめ予測されるトラブルならできるだけ避けて、快適なネット活動をしていってほしい。
 また同業の人に対しては、化学分析業界への不信を招くことは書かないでほしいという気持ちがある。そういうことがあると、私にもデメリットが及ぶ。
 それから、すべての組織の人に対して、他業界にまで影響するほど大きな問題は起こさないでほしいという気持ちもある。私自身が所属組織から規制を受けるようになったら困る。
 というわけで、私が書く内容には、単なる方法論以上に差し出がましいところがある。しかし、もちろん強制力はないので、うるさいことを言うヤツめと感じる人は、読まないようにしてください。

業種による違い
 業界の性質によって、組織の人の発言に慎重さが求められる度合いはかなり違うように見える。問題があってもやり直しのきく業界・娯楽や文化的要素の強い業界・個別構成員の問題が組織全体につながりにくい業界・ユーザーが簡単にサービス等の良否を見分けられる業界ほどオープンなほうへ意見が傾く。逆に、やり直しのきかない業界・人命や財産に関わる業界・組織的に仕事する業界・ユーザーがサービス等の良否を見分けるのが困難で信用が重んじられる業界ほど慎重な意見になる。(ちなみに 私がいる業界の場合 は最大限慎重にならざるをえない。)

 それから、「ウチの業界(会社)の情報は漏らしたくない。でも、他の業界(会社)の情報が漏れてくるのは大歓迎」という立場もある。私だってそうだ。私がいる業界と、他業界で扱われている個人情報、これだけが守られるなら、残りはすべてオープンになってもらいたい、というのが本音だ。

どんな問題が考えられるか
 「組織の人のネット活動」に慎重な意見が出るのは、なんらかの問題が予測されるからだ。私が考え付く限りでは、些末なものまで入っているが、下記のような問題が起こる可能性がある。(あくまで可能性。)

  • 個人的な意見が組織の見解であるかのように受け取られる。(特に行政関連の組織の場合問題。)

  • 顧客情報、新製品開発情報など、組織外へ出るべきでない情報が流出する。

  • ウェブ上で表現されている道徳性や職業倫理観が特殊で、組織の製品やサービスへの不信感を招く。

  • ウェブ上で表現されている専門的技量が低いために、組織の製品やサービスへの不信感を招く。

  • 組織内の様子の描写が、組織の製品やサービスへの不信感を招くような内容である。

  • 長期間・高密度の情報発信が続くと、本業に専念しているのかと疑われる。(これは、特に給料が税金から支払われる公的立場の場合問題。)

  • 組織の資金や勤務時間を使って得た研修、文献、学会等の情報を私的に流すことを問題視される。(公的立場の場合は、むしろ推奨されることかも。)

  • たとえ既に公開されている情報であっても、組織として実施した事業内容に当事者の立場で言及するのは情報管理上好ましくないとして問題視される。

 他にも色々とありそうだ。
 こういう問題の可能性を含みつつも、組織の人が発言する「意義」もあるはずだが、それについてはあまり考えていない。そのうちまとめるかも。

組織のトップの人のblog
 「組織の人」って、当然サラリーマンと思い込んでいたが、経営側の人にとっても(経営側だからこそ)重くのしかかってくる問題らしい。前回の記事にトラックバックをいただいた 「Sunの社員ブログ」 (中小企業診断士/ITコーディネータ 春日一秀さんのブログ)によれば、経営者の場合、ブログでの発言が株価に影響を与えたりすることもあるそうだ。春日さんの最近の記事に 社長ブログをひさびさに巡回してみました。というのもある。技術系blogで使えそうな芸風 で紹介した矢澤到さんのコラムも、経営者による情報発信だ。

私が知っている過去ログ
 今の時点で知っているものだけピックアップ。

専門家は個人の責任で情報発信するな
 徳保隆夫さんの記事に対して、多数の人が意見を書いた。徳保さんは丁寧にリンクを張ってコメントしておられて、議論の流れを追いやすい。「極端なタイトルと実名風ハンドルネームと硬派な文体」という道具立てから、普通は関わらないような層まで関わってしまったような気もするけれど(あくまで私見)、だからこそ、各界のかたがたによるそれぞれの発言は興味深い。
 ところで徳保さんは 本名で Web サイトを開こうと思う とのことで、現在のサイトの更新頻度は今後激減するそうだ。「私の本名を知らない方も、徳保隆夫という名前から容易に本名を推察できるはず」って、できませんよ。どう検索したらいいんですか。本名を教えてください。

匿名かハンドルか
 高木浩光さん主宰の Java House メーリングリスト 内での議論にて、YAMADA Takeoさんの発言

だから私は、所属組織を明らかにすべきではないと思うし、所属組織ドメインのメールアドレスで参加すべきではないと考えます。

 に対して、高木さん自身が多数回にわたるメールのやり取りをして発言撤回を求められたもの。他の参加者からの意見や体験談もあり、興味深い議論になっている。一参加者の発言に主宰者自身がここまで執拗に撤回を求めるのはなぜ?という印象も持ったのだが、最近の高木さんの日記 6月12日付け を読んで納得した。メーリングリストでは「反論がなければ同意したものとみなされる」「『最後の主張が正しいらしい』と済ます読者がいる」可能性があるらしい。
 (余談だが、この日記の後半は崎山伸夫さんの記事への長い反論になっている。内容は技術的なことで私には理解できないが、崎山さんは上記徳保さんの一件でも登場しておられた。)

技術系メーリングリストで質問するときのパターン・ランゲージ
 結城浩さんの「心がけ」の一つ。肩書き ―― 会社の名前を背負っていることを忘れないように の項がある。

真・技術系メーリングリスト FAQ
 「私はISO9000シリーズの認定を受けた社会的に品質保証に信用のある企業に勤める者です。そのような会社に勤めている私がメーリングリストでマニュアルを調べればすぐに分かるような初歩的な質問をしても問題はないでしょうか?」といった項目がある。

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2004.06.08

「組織の人のblog」という話題

 「組織の人のblog」が、じわじわと話題になっているみたいだ。特定の「組織の人のblog」で何か注目されるようなことがあったという話ではなく、日本では組織の中の個人が自由に発言しにくい状況があるが、こういう中で「組織の人のblog」はどんな形になっていくのだろうか・・・といった話。

 これは私のblogの主題でもあるし、情報発信する個人のストレスを少なくする一つの方法論として昨年 組織の中の研究者・技術者がウェブで語るとき を公開している。

 話題がさらに広がるきっかけになりそうな記事 Sunのブログサイトが伝える「生の声」(ITmediaニュース) が6月5日付けで掲載されている。

外部とのコミュニケーション改善を目的に、Sunは最近、全社員がsun.com上にブログを作成できるシステムを導入した。このシステムは、新タイプの草の根企業コミュニケーションのモデルとなるかもしれないとSun担当者は話している。

 この記事に対する反応が、下記のようなblogで書かれている。
Sunのブログへの取り組み方 (utahblog)
Sunのブログサイトが伝える「生の声」 (Modern Syntax)
やられた! 社内ブログ (中妻穣太の日記)
 どれもほぼ、「画期的なことだが、日本では(まだ)無理だろうな」といった論調。私もそう思う。

 それから、鈴木聡さんの 0x0a では、以前からたびたびこの関連の情報がリンクされている。そちらからピックアップ。(鈴木さんって、まだ学生なのに、渋いテーマに興味を持ってらっしゃいますね。)
BLOGのゴスペル(Junjiro Hara's Blog)
「組織内の人がどれだけ自由に発言できるか」が blog の鍵 (NDO::Weblog)
Webにおける危機管理は一筋縄ではいかない (鈴木さん自身の記事)
まずは釘を刺せ,事が起こってからでは遅過ぎる(同)

 日本の場合、いったん大きな問題が起こったら、一斉に過剰な安全対策がとられるものだ。組織内の個人の情報発信を規制する動きで右ならえになる可能性もある。そういう事態にはなってほしくないから、大きな問題が起こらないよう祈っている。

2004/6/17 追記 続きを書きました:「組織の人のblog」過去ログ

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