Rf値(TLCの)は何の略?(2)
薄層クロマトグラフィーの「Rf値」の元の語について、続きです。
国際純正応用化学連合(IUPAC)の用語集「Gold Book」の「RF value, R F in chromatography」には「retardation factor(平面クロマトグラフィーにおける)を見よ」と書かれています。それに従って retardation factor, R F in planar chromatography に飛ぶと次のように書かれています。
Ratio of the distance travelled by the centre of the spot to the distance simultaneously travelled by the mobile phase:
R F = b / a
By definition the R F values are always less than unity. They are usually given to two decimal places. In order to simplify this presentation the values hR F may be used: they correspond to the R F values multiplied by 100. Ideally,R F values are identical to the R values used in column chromatography.
(津村訳)
遅延ファクター, R F(平面クロマトグラフィーにおける)
移動相が移動した距離に対するスポットの中心が移動した距離の比。
R F = b / a
定義によって、R F 値は常に1より小さい。通常小数点以下2桁まで表す。単純化のためにhR Fを使用できる。これはR F 値を100倍したものである。理想的にはR F 値はカラムクロマトグラフィーにおけるR 値と同一である。(訳おわり)
「カラムクロマトにおけるR 値と同じ」・・・R 値とは何でしょうか。
Gold Bookには「R 値」の項目がありませんが、「retention factor, k (カラムクロマトグラフィーにおける)」の項目の中にR が出てくるので、これのことかなと思います。書籍の中には「retention factor」がRf値の元の語と書かれたものがありますが、「retention factor」はカラムクロマトの用語、とされているようです。
ともかくGold BookにおいてはR F 値の元の語は「retardation factor」、これ以外は書かれていない、ということははっきりしました。
ところで、英語版のWikipedia「Retardation factor」に興味深い記述があります。この項目には3つの引用文献がありますが、3つともGold Bookからの引用で、すべて「オンライン修正版(2006-)」と書かれているのです。つまり、Gold BookにRf値の元の語として「retardation factor」が掲載されたのは2006年以降のようです。
日本語版Wikipediaは「retardation factor」に未対応で立項が無く、日本語版の「薄層クロマトグラフィー」には本日現在「R f 値(retention factor value、R f value [1])」と書かれています。(参考文献1は岩波 生物学辞典 第四版)
この先は私の想像ですが、Rf値の元の語を「retardation factor」とする勧告が1993年に出されたものの、Gold Bookは2006年まで13年間も未対応で、現在、書籍やメーカーの対応がゆっくり進んでいるところなのではないでしょうか。メルク本社のウェブサイトは早めに対応した一方で、メルク-シグマアルドリッチは未対応、そして多くの書籍も未対応、これから徐々に統一されていくのではないでしょうか。
2通り程度ならともかく、5通りもの語があるのは気持ちが悪いので、統一が進んでほしいです。
冒頭の画像は、大阪市立図書館で借りた薄層クロマトグラフィーの本6冊です。大阪市の図書館事情に満足しています で書いたとおり、貴重な本も最寄りの図書館に届きます。以前は最速2日で届いていましたが、現在業務が停滞しているとのことで、9日かかりました。
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