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2024.07.07

分析技術で一人起業(6)経営者として

世間では「スタートアップ」の語が流行し、若い人であっても起業はまれなことでなくなってきました。とはいえ、高額な分析機器を備える会社を起こして維持するのは簡単ではないでしょう。firoの経営面についてお聞きしました。

 資金調達
firoは株式会社で、資本金は800万円。これはすべて安藤さんによる出資だそうです。株主総会は議長も株主も社長も安藤さんという、一人三役で成立。これを報告する一人株式会社用の様式があるとのことです。
分析機器の購入には各種補助金を申請して充当しているそうです。ものづくり補助金(中小企業庁)、農産物の輸出促進補助金(農水省)などがあるそうです。補助金で支給されるのは購入額の3分の2で、残りの3分の1は会社負担ですが、これは銀行からのローン(5年)でまかないます。分析機器は5年で簿価はゼロになりますが、状態が良ければ5年後以降も使えるので、ローンが終われば利益が生まれるようになるとのことです。

 人材確保
firoの社員は正規1名、パートタイム2名です。信頼性確保や法令対応、多岐にわたる消耗品を切らさない経理事務など、正規社員である秘書がしっかりした方で、きちんとやっておられるそうです。なお、この秘書さんも社長の安藤さんも分析実務をされます。決算、納税、社会保険、労務管理、法令届出などもすべて自分たちで しているそうです。一人何役もこなしている感じです。

大豆なども粉末にできる強力な粉砕機は、容器だけで1個50万円だそうで、この容器が10個もありました。合計500万円。しかし少人数で検体を迅速に処理するためには器具の個数がけっこうポイントになるので、そこにお金をかけるのはうなずけました。

強力な粉砕機
右のスロットにセットされているのが1個50万円の容器
Firo17

 設立時の模索から軌道に乗るまで
設立から今年5月で5年経過したfiro。事業がまわるようになるまでには模索の期間がありました。安藤さんが公務員時代に開発した技術は全て前職に残してきて、会社では0から構築しようと決意し、前職の顧客以外を新規開拓するという営業方針を立て、 最初の1年は全国行脚して農薬分析の方法やニーズを探したそうです。その結果2年目からは 分析技術で一人起業(4) で紹介したとおりの分析法を確立し、受注を増やしてきたとのことです。

 他の人に勧めますか?
政府も積極的な起業を勧める昨今ですが、他の人に勧めますか?と安藤さんにおききしました。答えは
「手持ちのお金が2000万円あればやってもいいのでは?」
でした。3~5年で消える起業家が多いですが、これは生活できなくなるからだそうです。5年くらい生活できる資金が必要で、安藤さんの場合は前職の退職金があったそうです。

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