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2024.07.04

分析技術で一人起業(3)分析結果だけではない

Firo11

土日も休まず即日結果を出す残留農薬検査。安藤さんのお話では、firoの提供する価値はそれだけではないそうです。

 台湾の規制状況を把握
台湾の農薬残留基準は厳しく、ポジティブリストにない農薬は「不検出」が基準です。検疫での検査もしっかりしています。そのリストの更新速度が遅く、日本の新しい農薬に対応していないのだそうです。平成後半以降に登録されたものはだいたい不可とのこと。日本の残留農薬基準では問題のない農産物も、台湾には輸出できないケースが珍しくないのです。firoでは輸出先国の規制状況を把握して分析結果を評価し、依頼者に伝えています。

 農業試験場出身ならでは
農業に関わってきた安藤さんは各農薬の残留特性を熟知しており、農家が使用した農薬の種類と使用時期を聞き取って、「おそらく基準を超えるから検査しても無駄」と判断して伝えることもあるそうです。「どれだけ待てば基準以下になりますか?」ときかれれば目安の期間を示して再検査を勧めるそうです。さらには、防除暦の段階から農家と関わり、輸出を前提とした生産の支援もしているとのことです。私は食品衛生出身で農業のことはわかりませんから、農業視点からの助言ができるのは強みだなと思いました。

 独自の勘どころ
さらに、firoには独自のノウハウがあります。それは輸出するリスクを評価する指標となる「安全率」です。firoが分析した検体と輸出先で検査される検体はぴったり同じではありません。したがって、検査値が基準を下回っていれば良いというのではなく、どの程度下回っていれば安全か、判断する必要が出てきます。そのための安全率がfiroの独自ノウハウです。また、ある圃場の複数か所から農産物をサンプリングしたら、それらを合わせて測定するのではなく、それぞれを測定し、一つでも安全な範囲を超えたら輸出しないよう助言するといいます。
台湾FDAの発表 によれば、今年台湾に輸出されたイチゴの検査では、多いときは一週間で10件の不合格が出たようで、firoのアドバイスにより輸出を控えた生産者から感謝されたそうです。

 輸出のメリット
そこまでして台湾に輸出する意味があるのかという話ですが、実は生産者にとって大きなメリットがあるそうです。台湾の基準は厳しく、台湾に入ってくる農産物の量が限られるため、価格が維持されていること、また、台湾への輸出で成功すると生産者の評価が高まり、ベトナム、ドバイ、タイなど他国からもオファーが来るのだそうです。


冒頭の写真はGC/MS/MS装置です。これもリビングにあります。

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