分析技術で一人起業(1)リビングのLC/MS装置
民家のリビングにLC/MS装置が置いてある、しかもTOF-MS。という話を聞いたのはもう3年くらい前のことで、ぜひ一度この目で見たいものだと思っていました。しかしその場所は宮崎市、なかなか赴く機会がないところです。そこでこのほど、思い切って休みを取って「リビングのLC/MS装置」だけを目当てに宮崎まで行ってきました。
訪問先は「株式会社 食品検査・研究機構」です。宮崎県総合農業試験場に勤務しておられた安藤 孝さんがたった一人で起業して2019年5月に設立された会社です。主にやっているのは農産物の残留農薬検査で、機能性成分やうまみ成分などの試験も時々依頼されるそうです。
JR宮崎駅からはバスと徒歩で15分ほど。県立美術館と図書館がある「文化公園」という大きな公園の近くの閑静な住宅街に、その民家があります。門構えも建物も完全に普通の民家です。普通の玄関で社長の安藤さんが出迎えてくださいました。




しかし庭は普通ではありませんでした。除草剤を使えないので草が生い茂り、大きなレモンの木に無農薬の実がついていました。そしてリビングには本当にLC/TOF-MS装置がありました。写真に写っているのは家庭用のエアコンです。TOF-MSのフライトチューブの首には農薬残留分析研究会の受賞記念メダルがかかっています。

分析ラボに必ずあるはずのドラフトチャンバーは?
それはキッチンにありました。家庭用のレンジフードです。たくさんのマイクロピペットが家庭用レンジの上に置かれている光景は、なかなか目にしたことがある人はいないでしょう。さらに、キッチンの水栓からは水道水と蒸留水が出ます。センサーで感知するので、手を触れずに切り替えられます。蒸留水のタンクはシンクの下にあるそうです。


こんなワンダーランドなのに、取材はこれまでゼロだったそうです。一度TVカメラが入ったことがありますが、それは会社で分析した製品の取材の一環だったため、このラボに着目したものではなかったそうです。
勤め人の個人ブログで「取材」というのもおこがましいですが、私は同じ分析屋としてラボや業務内容に興味しんしんですから、たっぷりお話を伺ってきました。その内容を何回かに分けてレポートします。

(写真の一部は安藤さんにご提供いただきました。)
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