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2024.04.07

化学分析にかかわる資格(1)関係が深い国家資格

新年度です。今年はいま桜が見ごろという地域が多いようです。新入学・新社会人・新年度にキャリア上の目標を何か持ちたいと考える方もおられると思い、化学分析にかかわる資格を調べてみました。写真は一昨日見た大阪市内の桜です。(靭公園から大阪科学技術館を望む。)

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化学分析にかかわる資格は予想外に多かったので、3回に分けて書きます。このリストで漏れているものにお気づきの方は、コメント欄または エックス でお知らせいただければ大変ありがたいです。
化学分析にかかわる資格

(1)関係が深い国家資格
環境計量士(濃度関係)
臭気判定士
作業環境測定士
化学分析技能士
職業訓練指導員(化学分析科)
技術士(環境)

(2)関係が深い民間資格
LC分析士
LC/MS分析士
IC分析士
医用質量分析認定士
医用質量分析指導士
検査分析士
環境測定分析士
食品分析士

(3)関係がある国家資格
公害防止管理者
技術士(化学 等)
エックス線作業主任者
放射線取扱主任者
危険物取扱者
薬剤師
臨床検査技師
診療放射線技師

参考にしたのは、日本分析化学会の機関誌「ぶんせき」で2012年1号から12号まで連載された「ミニファイル 分析がかかわる資格」と2007年3号に掲載された 向日良夫「資格試験から見る分析化学」です。

 環境計量士(濃度関係)(国家資格)
計量士は計量法に基づく国家資格で、経済産業省が試験を実施しています。
資格・試験に関するお知らせ(経済産業省)
計量士には一般計量士と環境計量士があり、環境計量士はさらに濃度関係と騒音・振動関係の二つに分かれています。環境計量士(濃度関係)は大気、水及び土壌中の物質の濃度を取り扱います。化学分析に関する試験問題は、JISに基づくものが多いです。
pHを「ピーエッチ」と読むか「ペーハー」と読むかで年齢がわかるという話がありますが、以前のJIS Z 8802 pH測定方法では「ピーエッチ」と定められていました。そして2011年に「ピーエッチ又はピーエイチ」と改正されました。それを受けてかどうかわかりませんが、2012年3月の環境計量士国家試験で「ピーエッチ又はペーハー」という選択肢を含む正誤問題が出ました。まるで「ペーハー」を敵視したかのような出題。ブログのネタにしました(pHをペーハーと読むのは誤り(JISでは))。きっちりJISに則った基本を学ぶ環境計量士さん、すごいなと思います。
脱線しましたが、真面目な解説はこちらで読めます。
ミニファイル 分析がかかわる資格 環境計量士

 臭気判定士(国家資格)
悪臭防止法に基づく国家資格で、環境省の管轄、公益社団法人 におい・かおり環境協会が指定試験機関(国に指定されて試験を実施する機関)です。
この資格を化学分析と関係が「深い」に分類するかどうか迷いました。というのは、ぶんせき誌の連載では「臭気判定士の業務において化学分析は一切行わない」と書かれているからです。
ミニファイル 分析がかかわる資格 臭気判定士
確かに、「化学分析」といえば滴定や分光やクロマトを使うものという考え方がメジャーかなと思います。しかし、私は官能試験も化学分析の一環ととらえ、「関係が深い」に分類することにしました。
すると、麻薬探知犬のハンドラーや調香技術師も化学分析をしているのか?という疑問が浮上しますが、これらは国家資格ではないので、今回調べる対象外にしました。
臭気判定士の受験方法などはこちらです。筆記試験と嗅覚検査があります。
国家資格「臭気判定士」(におい・かおり環境協会)

 作業環境測定士(国家資格)
労働安全衛生法に基づく国家資格で、厚生労働省の管轄、公益財団法人 安全衛生技術試験協会が指定試験機関です。
作業環境測定士(安全衛生技術試験協会)
作業環境測定法施行令第1条で定める指定作業場(鉱物性粉じん、放射性物質、特定化学物質、金属類、有機溶剤を取り扱う作業場)の作業環境測定を行います。第一種と第二種があります。
化学分析を行う職場の場合、年に2回の作業環境測定を行っているはずですから、そのような職場のみなさんは、スタッフの誰かが資格を持っているか、あるいは作業環境測定機関に委託して測定してもらっているでしょう。環境計量士と無関係な化学分析現場では、最も身近な国家資格と言えるかもしれません。
私は測定報告書を読ませていただくだけですが、作業場のきれいな図面に試料採取場所が書かれていて、法令との関係もあり、化学分析以外のスキルもかなり求められそうだなと感じます。

 化学分析技能士(国家資格)
職業能力開発促進法に基づいて実施される技能検定の合格者が「技能士」と称されます。厚生労働省の管轄で、都道府県職業能力開発協会が試験を実施しています。技能検定が行われている職種は現在131あり、造園、めっき、染色、家具製作、酒造、とび、左官、畳製作といった職種が含まれています。「職人」と形容される職種が多いように思います。
技能検定のご案内(中央職業能力開発協会)
1級~3級があり、学科試験だけでなく実技試験もあるのが大きな特徴です。実技試験では金属イオンの検出と定量分析を行います。受検者の作業態度や作業時間、ビーカーなどの器具や薬品の扱い方も採点されるそうです。化学分析技能士の資格取得を目指している学生の中から、技能オリンピックに向けて強化選手が選ばれたりもしているようです。
より詳しくはこちらをどうぞ。
ミニファイル 分析がかかわる資格 化学分析技能士
特集 令和の分析化学教育 化学分析技能士の資格取得に向けた取り組みと技能五輪国際大会への挑戦

 職業訓練指導員(化学分析科)(国家資格)
技能士と同じく職業能力開発促進法に基づく資格で、管轄は厚生労働省です。123の免許職種があり、ほぼ技能検定に対応しているようです。当然ですが「職業訓練指導員(化学分析科)」は技能検定職種「化学分析」に対応しています。
私もよく知らないので、興味がある方は厚労省の案内をお読みください。
職業訓練指導員になるには(厚生労働省)

 技術士(環境)(国家資格)
技術士は技術士法に基づく国家資格で、管轄は文部科学省です。公益社団法人 日本技術士会が指定試験機関です。21の技術部門があります。
技術士 Professional Engineerとは
ぶんせき誌の記事によれば、技術士は非常に高度で専門的な資格であり、化学、金属、資源工学など11の部門の選択科目が化学及び分析化学にかかわっているようです。エックスのコメントで、技術士(環境)が化学分析の出題に結構分析化学が入っていると教えていただきました。試験科目を見ると、確かに、技術士(環境)だけ「環境測定」というズバリの科目があります。
ミニファイル 分析がかかわる資格 技術士
技術士の試験問題が公開されているので、試しに昨年度分の環境部門の二次試験(記述式)の問題を読んでみました。
令和5年度技術士第二次試験問題[環境部門]
なんとⅡ-2-1は、分析に用いる試薬や移動相などの供給不足に責任者として対処する方策を問う問題です。実際に過去または現在において供給不足となった物質名を1つ例示して説明せよとあります。第一に思い浮かぶのはヘリウム、次に思い浮かぶのはアセトニトリルですよね。しかし、分析業界にいない学生さんや転職希望者には何も書けないのではないかと思いました。技術士はとても高度で専門的な資格という印象を深くしました。
なお、技術士に準じる「技術士補」という資格もあります。

(参考)「ぶんせき」誌2012年連載「ミニファイル 分析がかかわる資格」の記事一覧を載せておきます。PDFが無料公開されているものはリンクしています。再録集(Vol.1) が販売されています。

1号 臭気判定士
2号 一般計量士
2号 環境計量士
3号 公害防止管理者
4号 作業環境測定士
5号 技術士
6号 化学分析技能士
6号 クロマトグラフィー分析士
7号 臨床検査技師
8号 診療放射線技師
9号 放射線取扱主任者
10号 エックス線作業主任者
11号 食品表示検定
11号 栄養情報担当者
12号 検査分析士

※技能検定については「受検」、その他の資格については「受験」と表記しました。

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