本の紹介「人生は化学反応・化学変化」
■ 丸山晴男さんについて
略歴は版元の書籍ページに書かれています。(Amazon等の書籍購入リンクもあります。)
人生は化学反応・化学変化(幻冬舎ルネッサンス)
岐阜県内の中学校・小学校・高校で42年間教諭や講師をされてきました。そのかたわら、自宅に「恵那エネルギー環境研究所」と「恵那ライブ気象台」を開設して研究活動や学校以外での教育活動を続けて来られました。
丸山さんの研究所と気象台には、太陽光発電システム、2種類の風力発電システム、太陽熱利用給湯システム、気象自動計測システム、ネットワークカメラ、放射線計測システムが設置されているとのことです。詳しくはウェブサイトに設置状況の写真などがあります。
恵那エネルギー環境研究所 総合 Web
また、丸山さんが講師を務められたオンライン市民講座の動画で、講義の様子がわかります。
食品の秘密(恵那市公式チャンネル)
■ 熱意ある実践の軌跡
「人生は化学反応・化学変化」で一貫しているのは「研究をしたい」「それを教育に生かしたい」という熱意で、自宅研究所を開設してだんだん充実させていった経緯や、活動ノウハウ、人生訓、それらを学校内外での教育で伝えてきたことなどが熱く語られています。
丸山さんの大学・大学院時代の専攻は応用化学科とのことですが、運営しておられる研究所は化学とはあまり関係がないようです。教職に就くため地元に戻る時、試験管、ビーカー、フラスコ、分液ろうとなどをそろえて持ち帰ったそうですが、個人で化学系の研究を続けることは難しく、模索の末に、発電システムや計測システムを使う研究をすることにしたそうです。
高額なシステムを設置するために自動車の買い替えを控えて中古車に10年以上乗っているといった裏話も書かれています。
また、本のタイトルにも表れていますが、人間関係をとても大切にされています。学生時代や仕事で出会った人ばかりでなく、メーカーへの問い合わせやメールで知り合いになった人に至るまで、人間関係を財産として捉えておられる姿勢に、特に学ぶことが多いと思いました。
■ オリジナルの誌面デザイン
この本の版元は文芸書を得意としていて、理系の本はあまり扱っていません。そのため、誌面デザインは一から構築する必要があり、なかなかたいへんだったそうです。その際に「分析化学の基本と仕組み」を参考にされたとのことです。これは出版社が何百冊も出しているシリーズ本の一つで、誌面デザインは出版社が作ったものです。でも、似たような誌面のマニュアル本は多数の出版社から出ているので、参考にしたからといって問題にはならないでしょう。でき上った誌面は随所にベンゼン環が描かれている2色刷りで、すっきりしたオリジナルなものになっています。
「人生は化学反応・化学変化」の最後の方に「研究・活動協力機関,協力者」のリストがあり、私の氏名も載せていただいています。人間関係を大切にする姿勢を形にされたのでしょう。私は、最初に分析機器の質問にお答えしたということはありますが、これまでのメールでは出版や執筆に関するやり取りの方が多かったです。そんな話も参考にしていただけたのかもしれません。
■ こんな人におすすめ
最後に、どんな方にこの本をおすすめできるか書きます。
間違いなくおすすめできるのは教育関係の方でしょう。教育実践の事例がいろいろ書かれているからです。
ただ、私自身は教育関係者ではないので、この本に書かれていることの新規性や有用性は判断できません。恵那エネルギー環境研究所ウェブサイト には講座メニューなど掲載されていますので、教育関係の方には判断できるのではないでしょうか。また、これから教員を目指される方には、自分の生き方のモデルとしても考えられると思います。
教育関係以外では、こんな人の参考になると思います。
・本業のかたわら研究をしたいと考える人
・エネルギッシュな生き方に触発されたい人
・個人で書籍を出版したい人
ただし「研究」については、普遍的に参考になるかどうかわかりません。というのは、論文リストを見る限り丸山さんの研究は教育実践に関するものがほとんどだからです。様々な機器を使用した計測・観測の結果どんな新しい発見があったかについてはこの本に書かれておらず、計測や観測の実践を教材として利用したことが書かれています。つまり、教材以外の目的で研究をしたい人にとっては、テーマの設定法など成果に直結するノウハウが得られるとは限らないかもしれません。
研究と教育にかける熱意、また、そのような半生を書籍という形にすることへの熱意が伝わってくる本です。そんな生き方に触発されたい皆さんに、本当におすすめです。
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