分けないのもまたクロマト
先月島津本社で開催された「水道水質分析セミナー」を聴講しました。私自身は水道水の分析に携わったことはないのですが、おやっと思うことがありました。
今年度から水道水中の陰イオン界面活性剤の検査方法としてLC/MSが追加されたのですが、そのカラムの例としてはC18(1種類)以外にC8(2種類)が挙げられているとのことです。クロマトグラムを見ると、C18では分析対象である5種類の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)のピークが2本ずつ現れているのに対して、C8では1本になっています。LASの各同族体は異性体の混合物なのですが、分析目的に照らせばこれらの異性体を分離する必要はなく、C18で分けてしまうよりもC8で単ピークとして検出する方が解析処理が楽、分析時間も短い、とのことでした。
なるほど。分けるのがクロマトですが、あえて分けないのもまたクロマトだな…と思いました。
この検査法(厚生労働省の告示法)は2023年4月1日から適用されているそうです。
水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法等の一部改正について(施行通知)
国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部のサイトにQ&Aが掲載されています。
水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法 質疑応答集 (Q&A)
冒頭の写真は島津本社の建物の一つです。学生の頃、当時はまだ珍しかったLC-PDAを使わせてもらうため、教授に連れられて島津本社の工場を訪ねたことがありました。天井がとても高い、いかにも「工場」という感じの建物でした。あの建物とこの写真の建物が同じものかどうかはわかりませんが、懐かしく思い出しました。エントランスやホール付近には竹藪や庭園がしつらえられており、学生の頃とは全然違う世界企業の風格になっています。
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