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June 2023

2023.06.25

分析化学会近畿支部 創設70周年記念式典

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日本分析化学会の設立は1952年ですが、近畿支部はその翌年、1953年に創設されたそうです。昨日70周年記念式典が開催されました。 現時点で 近畿支部のウェブサイト に掲載されているのは3月2日付けの案内のみで、ここには記念講演の演者名があるものの、詳細なプログラムは書かれていません。いずれ「ぶんきんニュース」等で詳しい内容が掲載されると思いますが、一足早くレポートします。

日本分析化学会近畿支部創設70周年記念式典
―未来につながる分析化学―

2023年6月24日(土)
大阪工業大学梅田キャンパスOIT梅田タワーにて

10:30-11:30 【プレ企画】常翔ホール前
 学生ポスター発表 27題

13:00-17:00 【記念式典】常翔ホール

1.開会式

2.記念講演
「異分野融合による分析化学の価値向上と国際社会への貢献」
 島津製作所 代表取締役会長 上田 輝久
「科楽のすすめ ―知ることとはかること―」
 紀本電子工業 代表取締役社長 紀本 岳志

3.パネルディスカッション
「分析化学の将来をどう切り開くか」
 進行役 辻 幸一 (大阪公立大学工学研究科)
 支部長 山本 雅博(甲南大学理工学部)
 パネラー
  森 良弘 (同志社大学ビジネス研究科)
  吉田 裕美 (京都工芸繊維大学工芸科学研究科)
  永井 秀典 (産業技術総合研究所)
  鈴木 雅登 (兵庫県立大学理学研究科)

4.学生ポスター優秀賞表彰式
 審査委員長 白井 理 (京都大学農学研究科)

5.閉会式

17:30-19:30 【懇親会】リストランテ翔21

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学会の支部の講演会に島津製作所の会長が!?
これにまず驚きました。上田会長のお話は、自身の経験から得てきた教訓、現在の島津の取り組み、パンデミックが社会を変えた世界史を振り返りつつ未来への展望、という流れでした。分析計測機器の世界市場規模は年間10兆円、島津のシェアは世界第8位だそうです。2026年に市場規模は14兆円になると予測されており、大きな市場というわけではないが確実に伸びているとのことです。世界企業らしい雄大なビジネスの話でした。

紀本社長は近畿支部の個性を表象しているような方で、「はかってなんぼ」のタイトルを考案された方です。100万年前に人類が道具を使い始めて以来の人類史を10万年前、1万年前、1000年前、100年前と対数目盛で俯瞰し、ギリシャ哲学者から現代の理論物理学者までの言葉を引きつつ、観測の重要性や基礎科学衰退への警鐘を語る内容でした。なかなか普段触れることのない教養です。ラファエロなどの絵に青いはっぴ姿の酔っぱらいが隠れている趣向でした。

パネルディスカッションは、最初に山本支部長から、支部会員の年齢層のピークが55~65歳にあり、若手を増やさなければ近い将来支部が衰退しかねない現状が報告されました。それを受けて、学会だけでなく分析化学そのものをどう発展させていくかについて話し合われました。
パネラーの皆さんの意見で共通していたのは、日頃自分が接する範囲の外の専門家と接する機会が欲しいということでした。その際、企業の専門家は対外発表のハードルが高いので、可能な範囲でしゃべれるような工夫が欲しいとか、くじ引きや席の近さでランダムに少人数で話せる場も良いとか、業務で参加すると情報収集が目的になるのでもっと自由に「妄想」を話せればとか、色々なアイデアが出ました。

懇親会で幅広い方々とお話ししました。私は2019年に東京へ転勤しましたが(東京へ転勤&国立衛研旧庁舎)、この春に近畿へ戻ってきました。近畿支部の行事に出席したのも久しぶりでした。しかし話を聞くと、私だけでなく近畿にずっとおられた皆さんもお互い結構久しぶりだったようです。新型コロナウイルス感染症の流行で対面の行事が制約された3年間、その制約が無くなって最初の大きな行事だったようです。
懇親会の締めくくりは恒例の紀本社長による「大阪じめ」でした。

森内実行委員長の発表によれば記念式典は143人、懇親会は104人の参加で、たいへん盛況だったようです。私がこれまでに参加した支部行事の中で一番大きかったと思います。

会場がまた素晴らしかったです。大阪工業大学の梅田キャンパスで、よくあるサテライトキャンパスではなく、高層ビルが丸ごとキャンパスだそうです。冒頭の画像は最上階のレストラン(懇親会場)から見下ろしたHEP FIVEの赤い観覧車です。梅田には高層ビルがいくつもありますが、観覧車を見下ろす眺めにははっとしました。
阪急ターミナルビルとヨドバシカメラとJR大阪駅がどんな位置関係にあるか、地上ではよくわかっていませんでしたが、俯瞰すると理解できました。写真を付けておきます。

この会場、一度は9月に記念式典の日程が決まって確保したのに、分析化学会年会と重なってしまったため急きょ6月に取り直したとのことでした。一等地の大人気の会場で、演者のスケジュール調整も含め、並々ならぬご苦労があったようです。これだけの企画を3カ月も前倒しとは、どんなに大変だったでしょう。タイミングとしては、先月新型コロナウイルス感染症が5類に移行したばかりで、解放感と祝賀ムードが一層盛り上がったように思います。

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2023.06.06

分けないのもまたクロマト

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先月島津本社で開催された「水道水質分析セミナー」を聴講しました。私自身は水道水の分析に携わったことはないのですが、おやっと思うことがありました。 今年度から水道水中の陰イオン界面活性剤の検査方法としてLC/MSが追加されたのですが、そのカラムの例としてはC18(1種類)以外にC8(2種類)が挙げられているとのことです。クロマトグラムを見ると、C18では分析対象である5種類の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)のピークが2本ずつ現れているのに対して、C8では1本になっています。LASの各同族体は異性体の混合物なのですが、分析目的に照らせばこれらの異性体を分離する必要はなく、C18で分けてしまうよりもC8で単ピークとして検出する方が解析処理が楽、分析時間も短い、とのことでした。 なるほど。分けるのがクロマトですが、あえて分けないのもまたクロマトだな…と思いました。

この検査法(厚生労働省の告示法)は2023年4月1日から適用されているそうです。

水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法等の一部改正について(施行通知)

国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部のサイトにQ&Aが掲載されています。

水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法 質疑応答集 (Q&A)

冒頭の写真は島津本社の建物の一つです。学生の頃、当時はまだ珍しかったLC-PDAを使わせてもらうため、教授に連れられて島津本社の工場を訪ねたことがありました。天井がとても高い、いかにも「工場」という感じの建物でした。あの建物とこの写真の建物が同じものかどうかはわかりませんが、懐かしく思い出しました。エントランスやホール付近には竹藪や庭園がしつらえられており、学生の頃とは全然違う世界企業の風格になっています。

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