化学分析員の10年(5)2007年と2008年の間に「断層」
驚くような事実がわかりました。2008年、化学分析業界に大事件が起こっていたのかもしれません。
前回まで40代前半男性化学分析員の給与に着目して解析してきましたが、今回は全年代を対象に年代別の人数の推移をグラフにしてみました。賃金構造基本統計調査の年齢別階級数は12ですが、それではわかりにくいので、7階級に統合しました。
おわかりでしょうか。2007年と2008年の間に特異な形が現れています。
化学分析員(男性)の総数は増えたり減ったりしていますが、各年齢階級の比率はほとんどの期間において前年からあまり変わっていません。しかし2007年と2008年の間だけはベテラン世代が減少して29歳以下の世代がぐっと増えています。
実数でなく比率のグラフも作ってみました。
2008年に、30歳以上の全年代で労働者数は前年より減りました。(正確には70歳以上だけ10人から20人に増加。)そして29歳以下が激増しました。
2007年まで1000人前後だった29歳以下の男性化学分析員は、2008年に一挙に4000人を超え、2009年には6000人に迫り、以後増減を繰り返しながらも5000人前後で推移しています。
24歳以下は2007年まではほとんど見えていませんが、2008年に1280人になりました。
さらに驚くことに、2008年から「19歳以下の化学分析員」が統計に表れてきています。(グラフでは24歳未満に含めています。)表れた人数は年によって違いますが2008年以降毎年数字があり、90~420人です。2007年まではずっと数字なしでした。
賃金構造基本統計調査では「その職種の仕事を行うのに必要な技能を見習修得中の労働者で、その都度指図を受けなければ普通の仕事のできないものは、その職種に分類しない。」とされています。
つまり、2008年から登場した未成年の化学分析員たちは、いちいち指図をされなくても自分で動くことができる、一人前の化学分析員なのです。
ティーンエージャーの化学分析員・・・かわいかっこいいかも・・・?私の知り合いにはいませんが、会ってみたい気がします。
それにしても、2008年から大量に誕生した24歳以下の化学分析員は、おそらく高校・専門学校・大学を卒業したばかりではないかと思います。
少なくとも採用・配属する側は、その程度の経験で十分と考えて化学分析員にしたのでしょう。2007年までは24歳以下がほとんどいない職種だったのに。
2008年、いったい何があったのでしょうか。
このころ「団塊の世代の大量退職」が社会問題になっていました。再びWikipediaからの引用ですが、団塊の世代とは1947~1949年生まれだそうです。ど真ん中の1948年生まれの人たちが60歳で定年を迎えたとしたら、2008年はまさにその年に当たります。
しかし大量退職問題は化学分析業界だけでなく日本社会に一般的な問題でした。他の職種でもこれほど劇的な変化があったのでしょうか?
また、2008年は40代前半男性化学分析員の給与が下がり始めた年でもありますが、この「断層」と関係があるのでしょうか?
2008年、皆さんの職場ではどんなことが起こっていましたか?
どうもこの年から、化学分析業務(とそれを行う人たち)の扱われ方はかなり変わったようです。
ところで「なぜ男性ばかり?」と不満を持つ方がおられるかもしれませんが、化学分析員については男性しか年齢階級別統計が無いのです。女性についても(総数だけですが)取り上げますので待っていてください。
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