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2020.06.11

化学分析員という仕事 2020

「化学分析員」はどんな仕事か、全国に何人くらいいるのか、男女比はどうか、年齢ごとの給与はどの程度か、他の似た職種と比べて給与は高いのか低いのか、そんな情報をまとめた記事を10年前に書きました。この記事は現在に至るまで当ブログのPV数の上位をキープしています。

最近twitterで分析屋さんの収入についての話題があったので、最新の統計値を使って記事を修正しました。文章の構成は10年前と同じです。大きな変化はないかと思いきや、衝撃の事実が・・・(参考:化学分析員という仕事 2010

 賃金構造基本統計調査

ご紹介する統計は厚生労働省が行っている賃金構造基本統計調査です。令和元年6月分の賃金等(賞与、期末手当等については平成30年1年間)について、7月に調査を行ったものです。下記サイトで公開されています。

賃金構造基本統計調査(厚生労働省)
賃金構造基本統計調査 (政府統計の総合窓口(e-Stat))

賃金の調査ですが、賃金だけでなく、職種別の就業人数・年齢分布・男女比・勤続年数分布なども知ることができます。
全国から抽出された78,482事業所のうち有効回答を得た53,867事業所から、10人以上の常用労働者を雇用する民間事業所(47,148事業所)について集計したものです。

 職種「化学分析員」

この統計では労働者を約130の職種に分類していますが、その中に「化学分析員」があります。仕事の内容は 役職及び職種解説 に次のように書かれています。

化学分析員
○(含まれる職種) 分析工、試験工

<仕事の概要>
無機化合物及び有機化合物の定性分析、定量分析、容量分析、機器分析等の化学分析の仕事に従事する者をいう。

<除外>
1) 金属材料の引張試験、組織顕微鏡試験などの仕事に従事する者
2) 専ら、分析用器材の製作、補修の仕事に従事する者

検査会社で環境分析・食品分析・材料分析などを行う人、製造業で品質管理のための分析を行う人は化学分析員に含まれると思われます。

 化学分析員の人数

この調査は抽出調査ですから、調査した労働者の数ではなく、母集団に対応する数字として推計(復元)した労働者の数が発表されています。それによると

一般労働者(企業規模10人以上)
 男 18,190人
 女 10,750人
 計 28,930人

短時間労働者(企業規模10人以上)
 男  780人
 女 1,510人
 計 2,290人
(10人未満切捨て)


全国には合わせて3万人余の化学分析員がいるようです。
個人的な感覚ではもっと多いような気がするのですが。公務員が除外されること、また、一人の労働者が役職(係長以上)と職種にまたがる場合には役職の方へ分類されることから、実感より少なくなるのかもしれません。また、「その職種の仕事を行うのに必要な技能を見習修得中の労働者で、その都度指図を受けなければ普通の仕事のできないものは、その職種に分類しない」とあります。分析の現場では、このような補助的なスタッフが多いかもしれません。

ちなみに同じ統計で一般労働者3万人程度の他の職種は、診療放射線・診療エックス線技師、歯科衛生士、大学講師、調理師見習、電車運転士、金属検査工、板金工、仕上工、紙器工、配管工・・・等となっています。いずれも極端に珍しくもなくありふれてもいない職種で、何となく納得します。

なお、10年前の人数と比較すると、化学分析員の一般労働者は約1,000人減少し、短時間労働者は約600人増加しました。

 化学分析員のプロフィール

企業規模10人以上の事業所に勤務する一般労働者の平均は次のとおりです。

男性の平均
 年齢 38.6歳
 勤続年数 11.7年
 所定内実労働時間数 155時間
 超過実労働時間数 13時間
 きまって支給する現金給与額 344,700円
 年間賞与その他特別給与額 1,279,400円

女性の平均
 年齢 37.8歳
 勤続年数 9.9年
 所定内実労働時間数 152時間
 超過実労働時間数 8時間
 きまって支給する現金給与額 277,500円
 年間賞与その他特別給与額 831,500円

10年前と比較すると男性の平均年齢が1.7歳、女性の平均年齢が4.0歳、それぞれ上昇しています。給与額も若干上がっています。

 化学分析員の年齢分布と給与

なぜか男性の一般労働者についてしかデータがありません。(理由はどこかに書かれているのでしょうが、私は見つけられませんでした。)
10年前には25歳から39歳までを合わせると61%を占めていましたが、令和元年は50%でした。若い人の比率が減少したようです。

「きまって支給する現金給与額」を見て驚きました。
えっ?40代は10年前よりかなり給与が減ってる!?
20代前半23万円、20代後半31万円、30代前半34万円、30代後半37万円、40代は前半も後半も38万円、ピークは50~54歳で48万円となっています。20代と30代は10年前より給与が上がりましたが、40代は下がりました。
10年前には40代前半が給与のピークで約46万円でした。この年代は約8万円減ったことになります。40代後半は45万円から7万円の減。これは相当大きな減額と言えるでしょう。

 他の類似した職種との比較

給与が最も高くなる年代とその金額を他の類似した職種と比較したらどうでしょう。
60代後半が最も高額という職種がありますが、例外的と思われるのでカッコ書きしました。

自然科学系研究者(男) 50代前半 68万円
  (60代後半 73万円)
技術士(男)50代前半 50万円
技術士(女)50代後半 42万円
薬剤師(男) 50代前半 52万円
薬剤師(女) 50代前半 49万円
臨床検査技師(男) 50代前半 45万円
  (60代後半 45万円)
臨床検査技師(女) 50代前半 37万円
栄養士(女)50代後半 29万円

男性の化学分析員の給与は、単純にピーク時の金額で比較すると、臨床検査技師よりは高く、技術士・薬剤師よりは低く、自然科学系研究者よりは相当低いと言えます。
ただし、管理職になると「化学分析員」に分類されなくなるので、個人単位で見た場合、給与が伸び悩んだわけではなく昇進した人も多いかもしれません。

 まとめ

10年前にこの記事を書いたときには、「化学分析員の給与は悪くないようです」と締めくくりました。
しかし最新のデータを参照すると、そうとも言いきれないようです。10年で8万円も月給が減った40代前半男性化学分析員。何が起こったのでしょうか?統計をさらに詳しく読んで、何日か後に私なりの考察を書きたいと思います。

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