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2020.05.03

GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(15)GC/MSのJIS新旧比較

JIS K 0123 ガスクロマトグラフィー質量分析通則の2006年版と2018年版を比較します。

ウェブで公開されている2018年版には「目次」と5つの「附属書(AからE)」が付いています。いっぽう私が持っている2006年版は、日本規格協会「JISハンドブック 49 化学分析 2016」に掲載されているものです。これには目次と附属書は掲載されていません。ですから目次と附属書を除く部分について比較します。

 略語の使用方法と使用回数

まずはGC-MSとGC/MSの語の使われ方と使用回数から。
旧版の使用箇所はすべて引き継がれ、新たに5か所追加されたようです。ただ、ウェブ版には検索機能がありますが紙ではその機能が使えないので、2006年版の方は私が見落とした箇所があるかもしれません。それぞれ次の通りです。

 GC/MS    旧1 新6
 GC/MS/MS   旧1 新2
 GC/MS法   旧1 新1
 GC/MS/MS法 旧1 新0
 GC/MS装置  旧6 新5
 GC/MS接続部 旧5 新5
 GC-TOFMS  旧0 新1
--------------------------
 回数合計  旧15 新20

目立つのは2018年版では「GC/MS」の使用回数が増えたことです。
それから、スラッシュで一貫しているかと思われましたが、一か所だけハイフンを使った略語(GC-TOFMS)が登場しています。

 「GC/MS」の意味

「GC/MS」が何の略称であるかについては、どちらの版も本文の最後のほう「個別規格に記述すべき事項」にカッコ書きがあります。

 2006年版 ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)
 2018年版 ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)

2006年版は「GC/MS」が1回しか使われていないのでわかりますが、2018年版は5回も説明なしで「GC/MS」を使用し、6回目にやっと明らかにされる文書となっています。

それはともかく、新旧版とも「GC/MS」を分析法の意味で使用していると言えます。

なお、2006年版では和文に「/」が入っていましたが2018年版では削除されました。JIS名にはもともと「/」が入っていないので、これは単純な誤植だったのかもしれません。

 「GC/MS法」の意味

「GC/MS法」は新旧とも同じ箇所で1回だけ使用しています。最初の方の「概要」に

 ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS法)

とあります。えっ?同じ日本語に対して「GC/MS」「GC/MS法」2つの略語が割り当てられています。これはちょっと気になります。

好意的に解釈すれば、「GC/MS」は基本的に分析法の意味であるが、そのことを念入りに示す場合は「GC/MS法」を使うということですかね。

2006年版で「GC/MS/MS法」が1回だけ使われていましたが2018年版では「GC/MS/MS」に置換されました。ここは念入りにしなくてもよいと判断されたのかもしれません。

 装置は基本的に「GC/MS装置」

2018年版で「GC/MS装置」の語の使用回数は1回減りました。これは電子イオン化法の説明のところで、装置の観点での説明を分析法の観点での説明に変えたことによるものです。「GC/MS装置」が5か所残っています。

つまり、GC/MSのJISは2006年版も2018年版も普通の装置を表すときは「GC-MS」でなく「GC/MS装置」の語を使用していると言えます。

 突如出現した「GC-TOFMS」

さて、そこでがぜん目立ってくるのが2018年版で初めて登場した「GC-TOFMS」の語です。この部分を抜き出してみましょう。

一般のGC-TOFMSは,イオンが直進し,検出器に到達するリニア形,リフレクターをもつリフレクトロン形及び同一軌道上を周回させる多重周回形がある。

説明はありませんが内容は明らかに装置の話です。この直前に「飛行時間形質量分析計(TOF-MS)」とあるのに、TOFとMSの間にハイフンが無いのが気になります。

他の部分で使われている規則性を当てはめるなら「GC/TOF-MS装置」と書くほうが一貫していると思いますが、ここであえてハイフンを使ったのはなぜなのでしょうか。わかりません。

 結局GC/MSのJISはどっち派なの?

ハイフンは装置、スラッシュは分析法、この使い分けをする派としない派に単純に分けるとすれば、GC/MSのJISはどちらなのでしょうか?

今回の比較から私が感じたのは、

2006年版ではGC/MSだけを使う「しない派」だったように見える。2018年版も大部分はその方針を踏襲している。しかし飛行時間形質量分析計だけは例外らしい。

です。前記事で「GC/MSのJIS頼もしい」と書きましたがTOF-MSについては頼もしくなかったですね。
余談ですが個人的にTOF-MSはトフマスと読むのが好きです。(質量分析(計)のことをマスと呼びたいっ!

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