« September 2019 | Main | May 2020 »

April 2020

2020.04.30

GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(13)何が変わったか

さて、日本質量分析学会の「マススペクトロメトリー関係用語集」の記述はどのように変わったか見ていきましょう。 新しい版のGC-MSの項目は前記事で引用しました。第3版(2009年刊)ではどうだったでしょうか。 まず、冒頭に「利用の手引き」のページがあり、次のような記述がありました。
6. 略語・略称の中でのハイフン(-)とスラッシュ(/)の使い分けについて、装置の結合を意味する場合にはハイフン、技法の組み合わせを意味する場合にはスラッシュを用いることが、非公式のルールとして提案されています。
(例) LC-MS (liquid chromatograph mass spectrometer)
  LC/MS (liquid chromatography mass spectrometry)
第4版ではこれは完全に削除されています。2013年のIUPAC勧告 によって「提案されている」状態ではなくなったので当然ですね。 そして本文のGC-MSとGC/MSの項目は次の通りでした。
gas chromatograph-mass spectrometer (GC-MS)
ガスクロマトグラフ質量分析計:ガスクロマトグラフと質量分析計とを結合した分析装置.

gas chromatography/mass spectrometry (GC/MS)
ガスクロマトグラフィー質量分析:ガスクロマトグラフと質量分析装置とを結合した装置を用いて行う分析方法.
非常にシンプルです。「利用の手引き」で注を付けたので個別項目では不要ということでしょう。第4版では項目それぞれで注を書く形になりました。その注を改めて引用します。(例としてGC-MSの注)
注:スラッシュ(/)を用いてgas chromatograph/mass spectrometer (GC/MS)と表記することも可能.ただしGC/MSとGC-MSのどちらか一方を分析方法のgas chromatography/mass spectrometryと分析装置のgas chromatograph/mass spectrometerの略語として同時に用いることは適切ではない.
さてこれで、私たちユーザー側の利便性はどう変わるでしょうか? 私は自分のサイトではスラッシュだけを使うことにしています。詳しい理由は ハイフンとスラッシュについて に書きましたが、特に重要なのは2点です。
  1. GC-MSとGC/MSのように視覚的な違いが小さい語に異なる意味を持たせることによる、書き手・読み手双方への負担
  2. 国際的に、一つの文章の中でハイフンとスラッシュを使って略語の意味を装置と分析法に振り分ける用法はかなりまれと思われる
残念ながら、質量分析学会の用語集第4版でも上記2つの不都合は残ると思われます。なにしろ「GC/MSとGC-MSのどちらか一方を分析方法と分析装置の略語として同時に用いることは適切ではない」とわざわざ書いてあるので。できるのは、私が実践している「装置を表す場合はGC/MS装置と書く」に類した抜け道を使うことくらいでしょう。

ただ、少しだけ良くなる点もあります。
これまでは「GC-MS」を分析法の意味で使ったり「GC/MS」を装置の意味で使ったりした論文は、質量分析学会の用語に忠実な審査員(質量分析学会の学術誌に限りません)からダメ出しがありました。今後はどちらを使っても認められるでしょう。

これによって、ハイフンかスラッシュかを好みで選びやすくなります。私は実はハイフンが好き ですが、「GC-MS」を分析法の意味で使って、装置については「GC-MS装置」と書くこともできるわけです。(ただ、権威ある学術誌が 執筆者ガイドライン でスラッシュを強力に推しているのでこちらに合わせました。)

私が個人的に調査をしてからもう4年、JISや質量分析学会以外の国内学会はどうなっているのでしょうか。ぼちぼち再調査してここに書いていきたいと思います。そして最新情勢を反映させて ハイフンとスラッシュについて を修正します。

| | Comments (0)

2020.04.29

GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(12)新たな動き

「私のサイトではスラッシュを使います!」と 宣言 してはや4年、新たな動きがありました。取り急ぎ第一報を書きます。

 

日本質量分析学会から「マススペクトロメトリー関係用語集」の第4版が送られてきました。

Photo_20200429105001

この写真の小さな冊子(オレンジ色のA5判)が第3版、大きな冊子(青色のB5判)が第4版です。私は学会の会員で、どちらも学会誌と共に郵送されてきました。

 

気になるハイフン/スラッシュ問題、さっそくチェックしてみました。まずはGC-MS。

 

gas chromatograph-mass spectrometer (GC-MS)
ガスクロマトグラフ質量分析計:
ガスクロマトグラフと質量分析計とを結合した分析装置.ガスクロマトグラフィー質量分析を行うための分析機器.
注:スラッシュ(/)を用いてgas chromatograph/mass spectrometer (GC/MS)と表記することも可能.ただしGC/MSとGC-MSのどちらか一方を分析方法のgas chromatography/mass spectrometryと分析装置のgas chromatograph/mass spectrometerの略語として同時に用いることは適切ではない.

 

GC/MSの項目にも同様の説明があります。ただ、残念ながらコピペによる誤記があると思われるため、ここには引用しません。(本当はGC/MSの方を引用したかったのですが。)
LC-MS、LC/MS、SFC/MS、TLC/MSについても同様の説明があります。SFC-MSとTLC-MSの項目はありません。

 

この記述変更への論評はまた次回以降の記事で書きます。取り急ぎ、会員でない方のためにこの冊子の入手法をご紹介します。
第3版の内容は学会のウェブサイトで 無料公開 されています。第4版は現時点では公開されていません。公開の予定があるのかどうかも私にはわかりません。

 

いっぽう、第3版の冊子には価格が書かれていなかったのに対して、第4版には「定価 1,800円+税」の記載があります。そしてアマゾンで販売されています。

 

Amazon: マススペクトロメトリー関係用語集(第4版)

 

ただ、この記事を書いている時点で在庫が残り1点となっています。入手法をご紹介と言いながら、アマゾンでは入手できないかもしれません。とりあえず急いで記事をアップします。

| | Comments (0)

« September 2019 | Main | May 2020 »