pHをペーハーと読むのは誤り(JISでは)
個人的には「ペーハー」が好きです。
発音しやすい、響きが美しい、紛らわしい類似語がない、言うことありません。
しかし2012年の環境計量士(濃度関係)国家試験でこんな問題が出題されました[1]。
「JIS Z 8802 pH測定方法」に規定されているpH測定方法に関する以下の記述の中から、正しいものを一つ選べ。」
回答の選択肢は5つ挙げられていて、その一つが
「pHはピーエッチ又はペーハーと読む。」
でした。実はこの選択肢は間違いです。JIS Z 8802には
「pHはピーエッチ又はピーエイチと読む。」
と規定されています。
つまり2012年以降に環境計量士試験を受験した方たちは、過去問として「ペーハーは誤り」と勉強しているわけです。
MSをマスと読まないことについては、質量分析学会の用語集(最新版)[2]でもMS/MSの項目でエムエスエムエスの読みを付けるに留まっており、マスを直接否定する文言はありません。
しかしペーハーに関しては国家試験の選択肢で誤りになっているわけで、さすがに抵抗できない気がします。私が「ペーハー」の読みを使うことで、それに慣れた人が将来JIS関係の国家試験を受ける場合不利になる可能性だってあるからです。
そういうわけで、私は業務上はできるだけピーエッチと言うようにしています。
しかし分析の新人が「ペーハー」と聞いて理解できずに困る場面も考えられるので、入門書[3]の執筆ではJISの説明をした上で、
「ドイツ語読みのペーハーも一部で使われています。」
と書きました。表現に非常に気を使いました。
よく見ると冒頭の環境計量士試験の問題文でもJIS規定の範囲内と絞った書き方です。JISを離れればペーハーは間違いではありません。私の好みはペーハーの方ですから、他の人がペーハーと言うのは心地よく聞いています。
[1]日本計量振興協会 "環境計量士(濃度関係)国家試験問題 解答と解説 2.環化・環濃 平成24年~26年", コロナ社 (2014)
[2]日本質量分析学会 "マススペクトロメトリー関係用語集第3版(WWW版)"
http://www.mssj.jp/publications/books/glossary_01.html
[3]津村ゆかり "図解入門 よくわかる最新分析化学の基本と仕組み 第2版", 秀和システム (2016)
画像はPd4Pic Clipartより
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