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2017.05.27

「技能試験」「標準物質」の用語に疑問

日本は母国語で自然科学をかなり深く学習できる恵まれた国です。
しかし用語の日本語訳に疑問があると不都合が生じるという話。昨日参加したセミナーで聞きました。

5月26日に龍谷大学で、分析化学会近畿支部の提案公募型セミナー「分析化学試験報告書の信頼性-刑事司法における分析化学鑑定書」が開催されました。
セミナー全体がたいへん密度が高い内容でしたが、ここでは産総研計測標準研究部門の津越敬寿さんが最後に話されたワンポイントをご紹介。

まず「技能試験」の語。外部精度管理として実施されるproficiency testingの訳語です。
津越さんによれば、これは分析試験所がどの程度正確に分析結果を出せるかを明らかにするために行われるもので、「試験」と言っても合否判定のためのものではなく、PDCAサイクルのCheckに相当するものとのことです。
それなのに「試験」の語が使われているために入学試験のように受け取られがちで、秘密裏に試験所間で打ち合わせて結果の数値をそろえるような「談合」が疑われるケースもあるとか。これでは分析の改善に結びつきませんね。

中国語では「能力験証」(験証は日本語の検証に相当)と訳されており、この方がproficiency testingの本質をよく表しているとのことでした。

次に「標準物質」の語。これはreference materialの訳語です。
referenceは通常は「参照」と訳される場合が多い語なのに、なぜか標準物質に関しては「標準」と訳されている。その結果どうなるか。
海外での学会発表などで「標準物質」を「standard material」と誤って表現する学生がいたりするそうです。

「技能試験」「標準物質」の2つ、言われてみれば確かにそうかも・・・と思いました。
ではどうしたらいいのでしょう?
津越さんからは特に示されませんでした。

私の考えとしては、現状の日本語訳に問題があったとしても、複数の訳が存在する状況よりはましではないかと思います。信頼性関係は特に複数の訳語が流通している用語が多いので、これ以上増えるのは勘弁してほしいというのが正直な気持ちです。
そういうわけで、「試験」「標準」の語から生じがちな誤解に気をつけて使うようにすればいいかなと思います。津越さんの講演は、気をつけるきっかけとなりました。

2017/6/7 追記

「proficiency test」としていましたが津越さんにご指摘いただき、「proficiency testing」に改めました。ありがとうございました。

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