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2016.08.10

質量分析のイオン化は「電離」と呼ばない?

何年か前のことですが、GC/MSについて話していた時に相手がイオン化のことを「電離」と言いました。

「質量分析では『電離』とは言いませんよ」
「じゃあ、なんて言うんですか?」
「イオン化と呼んでますね」

話し相手は、化学系ではあるが質量分析は専門外というかたでした。
質量分析をずっとやっている人は「電離」という言葉は思いつかないかもしれません。(少なくとも私はそうです。)

電子イオン化の場合は分子から電子がはじき出されてイオンになりますから「電離」とも言えそうですが、実用されるイオン化はどんどんソフト化していて、電子捕獲やプロトン付加など、何かがくっつくイオン化がメジャーになってきています。
「電離」の語はプラスのものとマイナスのものに分かれる意味になりますから、イオン化全体を包含できません。

ところで、誰が、いつごろ、「電離」という日本語を作ったのでしょうか?もともとはどんな語の訳語だったのでしょうか?

元の語がionizationだったとすると、「離」という漢字を使ってしまったのは残念だったのかもしれません。イオンになることを表すなら「電化」のほうが良かったかも?

そう考えながら「文部省 学術用語集 化学編 増訂2版」(1986)を紐解いてみました。
「電離」の項には2つの英語が書かれていました。
 電離 electrolytic dissociation
 電離【物理】 ionization

なるほど。化学では、NaClがNa+とCl-に分かれるような現象を電離と呼び、物理学ではイオン化を電離と呼ぶということですね。

同じ用語集で「ionization」も引いてみました。
 ionization イオン化【化学】
 ionization 電離【物理】
とありました。

どうやらionizationを電離と訳すのは物理学の分野のようです。物理学では何かがくっついてイオン化する現象をあまり扱わないのかもしれません。だから「電離」で良いのかもしれません。あくまで想像ですが。

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