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2016.06.15

m/z は「質量電荷比」ではない件

日本国内のルールと国際的なルールが異なっている件で前回まで長い連載になってしまいました。

こういう例はまれです。基本的に国内のルールは国際的なルールに合わせるよう努力されていますので、ほとんどのルールは国内外で一致しています。

国内外で一致して誤りとされているのに、なかなか無くならない言葉がありますので、知っている人には耳タコでしょうが書いておきます。「質量電荷比」です。この言葉をm/z と同じ意味で使うのは推奨されません。

なぜなのか。日本質量分析学会の 「マススペクトロメトリー関係用語集第3版(WWW版)」 には

「マススペクトルの横軸の量はイオンの質量をイオンの電荷で割った商ではないので」

と書かれています。

ちょっとこれだけではピンと来ないかもしれませんので、もう少し詳しく説明してみます。

例えば分子量100の物質が電子イオン化によって1価のプラスの電荷を持つ100 Da(ダルトン)のイオンになった場合を考えます。

質量を電荷で割った商はどうなるでしょう。1価のプラスの電荷は電子1個の電荷と絶対値が等しい、つまり約1.6×10-19 C(クーロン)ですから、

 100÷(1.6×10-19)= 6.25×1020 (単位:Da/C)

となります。
しかし、このイオンのm/z は100です。数字がまったく違いますね。単位も違います。m/z は無次元量です。

こういうわけですから、質量電荷比という言葉をm/z の意味で使っている人は即刻やめましょう。

【参考】MS学会の用語集より

m/z (m オーバーz):イオンの質量を統一原子質量単位で割り,さらにイオンの電荷数で割って得られる無次元量.表記に際しては,必ず小文字の斜体(イタリック体)で,空白を挿入しないで記述する.電荷数(charge number)および統一原子質量単位(unified atomic mass unit)参照.

注:質量電荷比(mass-to-charge-ratio)という語は推奨されない.マススペクトルの横軸の量はイオンの質量をイオンの電荷で割った商ではないので,質量電荷比ではなくm/z を推奨する.m/z の数値を示す際は,m/z =100のように等号を用いるよりも,m/z 100のような表記を推奨する.また,m/z の単位として提案されているトムソン(thomson, 単位記号Th)は現時点では未公認である.

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