「MRM」は使ってもよいか
MS/MSを利用している人にしか関係がないので相当マイナーな話になりますが、「MRM」もまた微妙な立場の言葉です。
日本質量分析学会の用語集には「多重反応モニタリング (multiple reaction monitoring) という語は推奨されない」と書かれています。
これに対してIUPACの2013年の勧告では非推奨とまでは書かれておらず、「連続反応モニタリング(津村注:MSnのこと)と混同しないこと」と注意書きがあるだけです。
雑誌「Rapid Communications in Mass Spectrometry (RCM)」の「質量分析に関する刊行物で避けるべき用語と略語」ではMRMは「避けるべき語」です。そして「IUPACは許容しているが」と注が付いています。
この注が付いている語は計8個ですが、日本でよく使われている語はGC-MSとLC-MSとMRMくらいです。RCMがIUPACに刃向かって(?)使用に反対する・・・それなりの理由があるのでしょう。
ところが実は私はMRMという言葉が好きです。
「選択反応モニタリング (selected reaction monitoring, SRM)」を使うことが推奨されていることを知りつつ、公式な文章以外ではついMRMと言ってしまいます。語呂がいいからでしょうか。どうもやめられません。
IUPACの勧告によればMSnと混同しなければいいので、三連四重極型の装置を使う限り問題ないことになりますが、この語は今後どうなっていくのでしょう。
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