GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(1)
クロマトグラフィーと質量分析の複合分析法でハイフンとスラッシュのどちらを使うか。関係ない人にとってはどうでもいい話でしょう。その筋の人にとってはちょっと食傷気味というか、百年戦争のような話題かもしれません。
長い論争には現在、一応の決着が付いています。
日本質量分析学会用語委員会編「マススペクトロメトリー関係用語集第3版(WWW版)」 には
gas chromatograph-mass spectrometer (GC-MS)
ガスクロマトグラフ質量分析計
ガスクロマトグラフと質量分析計とを結合した装置
gas chromatography/mass spectrometry (GC/MS)
ガスクロマトグラフィー質量分析
ガスクロマトグラフと質量分析装置とを結合した装置を用いて行う分析方法
と書かれています。明快です。この用語集は2009年に冊子版としても発行されています。PDF版は無料公開されていますのでダウンロードしておけば何かと便利です。
質量分析学会の使い分け方と同じ使い分けは
JIS K 0136:2015 高速液体クロマトグラフィー質量分析通則
JIS K 0214:2013 分析化学用語(クロマトグラフィー部門)
でも規定されています。一方、
JIS K 0123:2006 ガスクロマトグラフィー質量分析通則
は2006年の規格ですから、すべてスラッシュを用いて「GC/MS法」「GC/MS装置」としています。おそらく次の改訂の時には他の規格に合わせられるのではないでしょうか。
こんなにはっきりしているなら、意味深に「一応の決着」と書く必要はなさそうなものですが・・・
実は国際的にはこのように明快にはなっていなくて、国際純正・応用化学連合の2013年の勧告ではGC-MSとGC/MS、LC-MSとLC/MSを装置・分析法のどちらの意味でも使ってよいことになっています。
この勧告はPure and Applied Chemistryという雑誌に掲載されていて、無料でダウンロードできます。こちらも用語集ですから便利でおすすめです。
Definitions of terms relating to mass spectrometry (IUPAC Recommendations 2013)
この話は長くなりますから今日はこのへんで。
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