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2016.06.11

GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(10)

ハイフンかスラッシュかなんて適当にやってるからどちらでもいいよ──というユーザーも多いかもしれません。実際、「ハイフン:装置、スラッシュ:分析法」の使い分けの認知度は、2009年の用語集刊行以後もあまり高いとは言えません。しかし今後は状況が変わってくるかもしれません。

影響が大きいのは何といってもJISの通則です。

 JIS K 0136:2015 高速液体クロマトグラフィー質量分析通則
 JIS K 0214:2013 分析化学用語(クロマトグラフィー部門)

で使い分けを定めています。今後、2006年改訂の

 JIS K 0123:2006 ガスクロマトグラフィー質量分析通則

が次の改訂を迎える時に使い分けを採用すれば、JISによる使い分け方針は完成です。

JISに規定されるということは、環境計量士などの関連国家資格の試験で出題される可能性があることを意味します。
環境計量士の国家試験はけっこう用語へのこだわりがあるようです。「pH」の読みを問う問題が出されたこともあります(2012年3月実施、濃度関係、ペーハーの読みは×)。私が知る限りでは2013年3月実施の濃度関係の試験中、略号の意味を問う正誤問題で「LC/MS 液体クロマトグラフ質量分析計」という選択肢があります。この回答は○だったようです。まだJISが今の形になる前だったからでしょう。

国家試験で出題される可能性がある以上、関係する大学や専門学校では教育内容に採り入れる必要があると思います。つまり、大学や専門学校の定期試験でも「GC-MSとGC/MSの意味の違いを説明せよ」といった問題が出ることになるかもしれません。

ただしIUPACの2013年勧告では使い分けをしていませんし、(8)に書いた通り、国際的な学術雑誌においては、一つの文書中ではハイフンだけ、もしくはスラッシュだけを、装置の意味でも分析法の意味でも使うのが主流です。ということは、少なくとも将来英語論文を書くような学生には、使い分けしない立場についても説明しなければならないでしょう。

しかし、将来英語論文を書く可能性がまったくない学生ばかりの授業というのはあまり考えられませんので、大学や専門学校ではJISのルールとIUPAC勧告の双方を教える必要があると私は考えます。国家試験さえ受かればいい、論文を書くほどになる頃には本人も自分で情報を集められるようになっているだろう…という考え方もありますが。

そういうわけで 「図解入門 よくわかる最新分析化学の基本と仕組み 第2版」 では両方のルールについて書きました。

ちなみにこの分野の近刊には「LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用」(2014年)と「LC/MS, LC/MS/MSのメンテナンスとトラブル解決」(2015年)があります。どちらの書籍もJISと同じルールのみを掲載し、IUPACの2013年勧告には触れていません。これらの書籍は日本分析化学会液体クロマトグラフィー研究懇談会が編集作業を行っていますので、私のような個人の出版物よりもよほど影響力は大きいです。

このような情勢下でJISの規則のみを知っている新人が入社してくると、これまで通りGC-MSとGC/MSのどちらかを装置・分析法両方の意味で使っている先輩社員に対して「オッサン、古い。ちゃんと勉強していない」と考えるかもしれません。IUPACの勧告、そして国際的な論文誌の動向に照らせば先輩社員の方が合理的なのに…。そして社内で無用の葛藤を生むかもしれません。

それではどうしたらいいのか?
私の結論を次回書きたいと思います。やっと最終回になりそうです。

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