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2016.06.09

GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(8)

世界的にはハイフンとスラッシュはどう使われているのか?最近の論文をチェックした結果、一つの文書中ではハイフンだけ、もしくはスラッシュだけを、装置の意味でも分析法の意味でも使うのが主流のようです。

国際純正・応用化学連合(IUPAC)の2013年の勧告の前文をもう一度読んでみましょう。和訳は(3)に書きました。

この勧告では、「複数の分析法の組み合わせはスラッシュで示すべき」の主張の例として2つの学術雑誌「Rapid Communications in Mass Spectrometry (RCM)」「Journal of Chromatography」を挙げています。議論の段階で考慮されたらしい書籍「Mass Spectrometry Desk Reference」には触れていません。どうも、この書籍だけが「ハイフン:装置、スラッシュ:分析法」の使い分けを推奨しているようです。

勧告が引用している雑誌J.Chromatog.の用語集は K. K. Murray. J. Chromatogr., A 1217, 3922 (2010) で買うことができますが、価格は41.95米ドル!
しかしありがたいことに、著者自身がResearchGateでPDFを無償提供しています。

 Glossary of terms for separations coupled to mass spectrometry

いっぽう、雑誌RCMの方は過去にスラッシュの使用を推奨したとされ、その文献の発行年は2003年です。過去はともかく現在はどうなのか?最新の 執筆者ガイドライン を読んでみましょう。

このガイドラインの「Use of abbreviations」の項には「全般的にはIUPACのガイドラインに従うこと」と書かれているのですが、それに加えて「執筆者は Rapid Commun. Mass Spectrom. 2014; 28: 1853-1854 に従うように強く勧める」とされています。

この文書は2014年発行で、「質量分析に関する刊行物で避けるべき用語と略語」というめちゃくちゃ気になるタイトルです。ネットに転がっていないか探しましたがありませんでした。仕方なく6ドルでレンタルしました。

読んでみて一番驚いたのがこの「避けるべき用語と略語」です。なんと

 GC-MSもLC-MSも避けるべき略語

なのです。そして注として「IUPACはGC-MSとLC-MSの使用も許容しているが、RCMの刊行物ではGC/MSとLC/MSを使用する」と書いています。
最近の論文例も確認しました。RCM掲載で無料公開されている新しいものから読んでいったところ、GC/MSまたはLC/MSを分析法と装置両方の意味で使用している論文がいくつもあり、5つ見つけたところでやめました。これに対してGC-MSまたはLC-MSの語を使用した論文は見当たりませんでした。徹底しています。

J.Chromatogr.の用語集の方は「2.2. Slashes and hyphens」で「複合した装置と分析法はGC/MSのようにスラッシュで示す」としながらも「ハイフンも同様に装置と分析法を示すために非常によく使われる」としており、両方を認めています。

J.Chromatogr.に掲載されている無料公開の論文をいくつかチェックしたところ、GC-MSやLC-MS/MSのように、すべてハイフンが使われていました。意味は分析法・装置、どちらもあります。用語集はスラッシュを勧めているのに、現状は圧倒的にハイフンのようです。

RCMとJ.Chromatogr.以外はどうか?
PubMedで「chromatography mass spectrometry」で検索をかけ、上位60位までにヒットした無料論文をチェックしたところ、RCM掲載分以外はすべてハイフンでした。

しかし共通しているのは、一つの論文の中で使われているのはハイフンのみもしくはスラッシュのみであり、違う意味を持たせて使い分けているものは見当たらないということです。

分析法と装置の両方の意味で使っている論文例をいろいろな雑誌から5つ挙げておきます。

Rapid Commun Mass Spectrom. 2016 Apr 15;30(7):1001-10
 使用語:LC/MS/MS
J Chromatogr A. 2016 Mar 18;1438:216-25
 使用語:SHS-MCC-GC-IMS(MSでなくイオンモビリティースペクトル分析)
J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 2015 Nov 15;1005:30-8
 使用語:UPLC–MS、UPLC–MS/MS
J Anal Toxicol. 2016 Jun;40(5):323-9
 使用語:LC–MS/MS、GC–MS
BMC Complement Altern Med. 2016 Jun 3;16(1):167
 使用語:GC-MS

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