GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(7)
昨日引用した「カラムのコラム」の矢澤到さんにメールでおききしました。
矢澤さんも、ハイフンとスラッシュで装置と分析法をそれぞれ表す用法には否定的とのことです。そして、
「私はハイフネイティッド技術というからには"-"で装置をつなぐことに合理性があると思っただけで,GC/MSのような伝統的使用方法を否定したつもりはありません。
論文などで使用する当人,もしくはカタログなどに記載する際に組織単位で使用方法を統一すればよいことかと思います。」
だそうです。
さて、引き続き Slashes and hyphens を読んでみます。
クロマトグラフィーと質量分析の結合を表すためにスラッシュを使うのは、米国英語の指針「シカゴ・マニュアル」には反しているようですが、専門性の高い雑誌や書籍はスラッシュを使いたいようです。
まず米国化学会のガイド。これには特に規定がなく、略語の例が色々と挙げられています。その例があまりにバラエティが多く、どれを推奨しているのかよくわかりません。スラッシュもハイフンも○のようです。
次に米国物理学協会のマニュアル。こちらは用語の組み合わせにはハイフンだけを使っているそうです。
そして書籍「Mass Spectrometry Desk Reference」、この中で著者の David Sparkman は「スラッシュ:分析法、ハイフン:装置」の使い分けを推奨しているそうです。
最後に雑誌「Rapid Communications in Mass Spectrometry (RCM)」はかつて、例えば2009年の執筆者ガイドで、
2つ以上の分析法が直列に結合されたとき、略号をsolidusで結んで表す。例:Py/GC/EI-MS, CZE/TOFMS
と述べたそうです。solidusって何!?検索してもスラッシュとの違いがよくわかりませんでした。どう見てもスラッシュです。
Sparkmanと雑誌RCMはスラッシュ派と言えそうですが、RCMは分析法を表すのにスラッシュを推奨しているだけで、Sparkmanのようにハイフンと使い分けることまでは主張していないようです。
スラッシュを使うことのメリットは、複雑な組み合わせをわかりやすく伝えられることでしょう。
例えばガスクロマトグラフィーと電子イオン化質量分析の組み合わせは、ハイフンを使うと
GC-EI-MS
となりますが、スラッシュを使えば
GC/EI-MS
となり、EIがMSのモードを示していることが直感的に伝わります。
シカゴ・マニュアルや米国化学会や米国物理学協会が保守的にハイフン使用に傾いているのに対し、質量分析に特化した雑誌や書籍ではニーズに応じてスラッシュの使用が広まっているのかもしれません。
なお、Sparkmanという人はよほど使い分けが好きな人らしく、
飛行時間質量分析 TOFMS(分析法)
飛行時間質量分析計 TOF-MS(装置)
という使い分けまで推奨しています。
さらに!イオン化法は「スペース」で表すべきだとして
電子イオン化飛行時間質量分析 EI TOFMS(分析法)
と書くのを推奨しています。私には覚えきれません…
以上で、Slashes and hyphens の本文の主要な内容は解説しました。さらに各雑誌のガイドライン最新版をたどっていくと、どうも主流派雑誌の姿勢は日本質量分析学会及びJISのルールとは違う方向であることが見えてきました。
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