GC-MSかGC/MSか(LC-MSかLC/MSか)(5)
GC-MSとGC/MS、どちらも装置の意味でも分析法の意味でも使える──とするIUPACの2013年勧告の背景と考えられる Slashes and hyphens を読んでみます。
この文書では5つのガイドラインの立場が主に説明されています。
- 「シカゴ・マニュアル」によればハイフンの使用がふさわしい。スラッシュは「and/or」の意味を持つ場合が多くあいまいになる。
- 米国化学会のガイドには特に規定がないが、例としてはスラッシュ、ハイフン、スペース、スペースなしを挙げている。
- 米国物理学協会のマニュアルには特に規定がないが、スラッシュの使用例はない。
- David Sparkman(Mass Spectrometry Desk Reference の著者)は「スラッシュ:分析法、ハイフン:装置」を推奨
- 学術雑誌 Rapid Communications in Mass Spectrometry は「スラッシュ:分析法、ハイフン:イオン化法などの構成要素」を推奨
最初の「シカゴ・マニュアル」って何?
The Chicago Manual of Style (CMS または CMOS)
Wikipediaの日本語版には現時点でこの項目はなく、「シカゴ大学出版局」の項目があります。その解説には「シカゴ大学が運営する出版局。1892年に創設。大学が運営する出版局ではアメリカ合衆国でもっとも大きなもの」と書かれています。そして、「シカゴ・マニュアル」については「英文作成上の規範的スタイルを規定した」出版物として紹介されています。
Wikipediaの英語版では「米国英語のスタイルガイド」「米国で最も広く使われ尊重されるスタイルガイドの一つ」と書かれています。
そのシカゴ・マニュアルがどう言っているのか。「Slashes and hyphens」にはこう書かれています。
CMOS 16版は、スラッシュは通常「and/or」の形で選択肢を表すために使われるとする。例えば「ハーキュリーズ/ヘラクレス」のように。CMOSはまた、スラッシュは場合によっては「ジキル/ハイド」のように「及び」の意味も表すとする。「毎」と「÷」の意味もまた掲載されている。
CMOSのハイフンに関する大きな表には、2つの機能を表す2つの名詞(最初の名詞が2番目の名詞を修飾していない)は、名詞及び形容詞の形でハイフンでつながれると書かれている。
というわけで、「シカゴ・マニュアル」に従えばスラッシュを使うのはかなりまずそうです。
このマニュアルは文系・理系問わず学問を行う上での英文の作法を示したものらしいので、相当普遍性があります。一方で、個別の専門分野の事情にはあまり構ってくれないのでしょう。
「シカゴ・マニュアル」を説明するだけで長くなってしまいました。
ハイフンかスラッシュか問題は、GCとMS(またはLCとMS)だけの問題ではないのです。GCにもLCにもMSにも色々なバリエーションができているので、それらをハイフンでつなぐのかスペースでつなぐのかということとも関連してきます。そういうわけで、他の4つの説明はさらにこまかい話になります。
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