おまえのクロマト装置は(一部)死んでいる
いま「内臓の進化」という本を読んでいますが、「死腔(しくう)」という言葉にギョッとしました。
これは、呼吸器内の空間のうち、ガス交換に直接関与しない部分(つまり肺胞以外の気管など)のことだそうです。
Wikipediaによれば、英語ではdead spaceとのこと。
あ、デッドスペースでしたか。
肉体を連想する「腔」に「死」の字が付いて、何やら生々しく恐ろしいイメージを持ちました。
例えば人工呼吸の患者さんで、換気量を増やしたいときには、浅い呼吸で回数を増やすより、深い呼吸にするほうが「死腔」の比率が減って効果的だそうです。このように役立つ概念なんですね。
流体が移動する空間の中に無駄な空間がある・・・という話には、クロマトグラフの「デッドボリューム」を思い出しました。
医学用語には無理にでも和訳したものが多いですが、デッドボリュームの代わりに「死容量」などと表現した文章は見たことがありません。そのため、「dead→死」という連想はしたことがありませんでしたが、「死腔」にドキリとしたように、デッドボリュームをもっと意識しなければ・・・と思いました。
なお、「死腔」は役に立っていないわけではなく、吸い込んだ空気を暖め、湿り気を与え、ほこりを除き、適当な抵抗を与えて肺胞が急激に膨張するのを防ぐといった有用な働きがあるそうです。
(参考図書)
岩堀修明「図解・内臓の進化」 講談社ブルーバックス 2014年2月
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