「倍返し」で働く分析機器のパーツ
「やられたらやり返す。倍返しだ」の名セリフでヒットしたTVドラマの俳優さん。今日からまた新シリーズで登場のようです。
私は芸能方面には極端にうといですが、
「倍返ししたら相手も倍返し・・・? そしたらこちらもまた倍返し? そしてまた相手も・・・これはすごいことになりそう」
と考えました。たぶん誰でも考えるでしょう。
倍倍で増えていくエネルギーの応酬をイメージすると、自然に連想されるのがフォトマルとエレクトロンマルチプライヤーです。
フォトマルはフォトマルチプライヤー(光電子増倍管)のことで、小柴昌俊さんのノーベル賞受賞につながったカミオカンデ、そして後継のスーパーカミオカンデにも使われています。
たった一つの光子が一つの電子に変換されてダイノードに衝突すると、何倍もの電子が新たに生み出され、それが次のダイノードに衝突してさらに何倍もの電子が・・・という仕組みで増幅されてニュートリノの観測に結びつきました。
エレクトロンマルチプライヤー(EM)は荷電粒子を検出します。質量分析計のパーツなので、私のような普通の分析屋にとってはフォトマルより身近です。これがへたってくると検出器の電圧を上げなければなりません。そろそろ交換時期か・・・いや、まだ大丈夫・・・と機嫌をうかがいながら付き合う必要のあるパーツです。
EMには、フォトマルと同じように向かい合うダイノードで電子を増倍するものと、羊の角(ホーン)のような形のものがあります。後者はホーンの内側の壁に電子が当たるたびに何倍もの電子が発生する仕組みです。
ホーン型のエレクトロンマルチプライヤー(Wikipedia)
倍返しだ!のフォトマルとEM、分析の世界ではなかなかの働き者です。
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