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2011.10.31

○×問題、誤報はどれか(キログラム原器後の新標準)

昨日、キログラム原器に関する朝日新聞(2011/10/22)の報道が正確でなかったと書きました。(キログラム原器に替わる新標準は?
他のメディアはどう伝えたか気になったのでチェックしてみました。
並べたらなかなか面白い問題集になりました。どれが○でどれが×でしょう? 1号決議に照らして・・・。

日本経済新聞 重さの国際基準、120年ぶり見直しへ 「キログラム原器」から(2011/10/22 10:04)
現時点では記事は削除されているのでGoogleのキャッシュより。

新たな基準には複数の案が浮上しており、加盟国は今後、協調して調査研究を進める。日本の産業技術総合研究所(茨城県つくば市)が研究を進めているレーザー技術を用いた手法も有力案の一つ。早ければ4年後の総会で新基準が採用される。

読売新聞 キログラムの定義、120年ぶり見直しへ

そのため定義の見直しの必要性が指摘されていた。今後は、質量の単位を原子の数、エネルギー量など普遍的な形で定義し、それをもとに分銅を作製する。

産経新聞 「重さ」120年ぶり新基準 高精度測定へ複数案

新たな基準には技術的に異なる複数の案が浮上しており、加盟国は今後、協調して調査研究を進める。日本の産業技術総合研究所(茨城県つくば市)が研究を進めているレーザー技術を用いた手法も有力案の一つ。早ければ4年後の総会で新基準が採用される。

NHK キログラムの定義を見直しへ(10月17日 20:50更新)

それでは、今後検討されている新たな基準とは、どのようなものでしょうか。
これまでのように分銅に頼るのではなく、物理現象に基づいた、より普遍的な国際基準となります。もう少し具体的に言いますと、物理定数に基づいて、物体の原子の数から重さを決める方法などが検討されることになっています。

NHK 「キログラム」国際基準見直し(10月22日 4時6分)
現時点では記事は削除されているのでGoogleのキャッシュより。

今後は、日本の独立行政法人の産業技術総合研究所が進める最先端の研究に基づいた物体の原子の数から重さを決める方法などを用いることで3年後の次の総会に向けて、「キログラム」の新たな基準作りを急ぐことになりました。

答えは(ちょっと甘い採点ですが)
正確:日経、産経、NHK
不正確:読売

ポイントは、「定義」と「基準」のどちらの言葉を使っているか。
今回の総会では、キログラムの定義はプランク定数によることが決議されました。ただし、プランク定数を正確にどんな数値にするかはまだ決まっていません。今後何年もかけて多くの科学者が実験をして値を決めます。
さらに、その値を実験的に求めるためには、原子の数を数えるアプローチも重要です。つまり、産総研の研究も基準作りの一翼を担います。

ついでに言えば、CGPMのプレスリリースで、今までの総会は4年ごとに開催してきたけれどこれからは3年ごとに開くと書かれていますので、「4年後」と書いている産経の記述は間違い。NHKの「3年後」が正しい。

それにしても、新定義はプランク定数に基づくとする決議を明確に書いたのは、四大紙とNHKの中では毎日新聞だけのようです。プランク定数6.62606… ×10-34 Jsの最後のほうの数字がどうなるかよりも、これがキログラム原器にとって代わることのほうが、よほど大事件だと思うのですが。

プランク定数という言葉が難しすぎるなら、「(質量とエネルギーは等価なので)キログラムは光子のエネルギーとして定義されるようになる」でも良いと思います。

検索した中で、シェーマさんが作られたまとめページが光っていました。毎日新聞の記事を的確に選んだ引用。さすがです。
キログラム原器とプランク定数(Togetter)

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