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July 2011

2011.07.22

本の共著を成功させるには

今までにない形の分析化学の読みもの本。それは単著でないことは明らかでした。取材でなく自分の体験として書くのですから、一人では分析の多様性を語れません。

それでは何人で書くか。Wさんから、編集者としての「苦々しい思い出」に基づくアドバイスを色々もらいました。
(本にはフルネームでWさんへの謝辞を書きましたが、あまり何度も名前を出すとご迷惑かもしれないのでイニシャルにしておきます。)

まず、実際問題、人数は少なければ少ないほど進行はスムーズだそうです。
共著で混乱・破綻するケースはやはりあるようです。その理由は、

  • 転勤
  • 病気
  • だれかの原稿がずっと来ない
  • だれかが音信不通
  • 著者どうしの考え方の違いから人間関係悪化

といったもので、人数が多いほど確率は高まるそうです。

本作りの手順は、「まず共著者を決めてから話し合って構成・項目を決める」と、逆に「主著者が構成・項目を決めてからそれに合わせて共著者を選ぶ」が考えられます。

原稿ができてからの仕上げ段階でも、著者どうしが相互の原稿を読んで意見し合う場合と、自分の原稿以外には口を出さない場合があります。

素人でも想像できることですが、どちらの段階でも、著者どうしが良いチームプレーをできて相乗効果を生み出すなら協同作業のほうが良いのでしょう。それぞれが完全に独立して書いたら、トピックの羅列になって雑誌のようなテイストの本になりがちだそうです。
でも、話し合うことが多いほどトラブルも起こりやすいのでは・・・と、やはり素人でも考えます。

Wさんのアドバイスは、

  • 中心・窓口は必ず一人にしておくほうがうまくいく
  • これは連絡のためでなく、最終的な本の「通し」のテイストを守るため
  • 相互に原稿を読むのも、チェックするのが目的でなく、特定の章や項目が明らかに"浮く"のを防ぐため
  • 共著者の分担を明確にしておく

といったことでした。

それから人数ですが、これは私の気持ちの中で、かなり早い段階から4人と決まっていました。

その理由は単純で、Amazonの書籍検索(たとえば ジャンル:分析化学)では著者の表示が4人までなのです。5人目以下の著者はカットされます。また、本の背表紙に並べて印刷できる人数も4人が限界ではないかと思いました。

理系の仕事をしていると、分担執筆を頼まれたりして一応本を書く機会はそれなりにあります。でも、そのようにして製作にたずさわっても、自分の本という実感はほとんどありません。やはり、Amazonや背表紙に名前が出るあたりが、自分の本として考えられるかどうかの境界では?
こんな理由で、著者は4人と考えました。

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2011.07.16

分析化学の読みもの本

学業や仕事や生活上の必要に迫られて何かを勉強するとき、私は読みもの的な関連本を探します。標準的な教科書を用意するのはもちろんですが、できれば、くつろぎながら読めて、生の手ごたえがあって、その分野の全体像がおぼろげにわかる・・・そんな本があれば教科書の理解が進みます。

分析化学の読みもの本は、そういったきっかけで手に取られるような気がします。分析化学そのものに興味を持つというより、食品や環境の問題に興味があったり、分析関連の資格や仕事をめざしていたりで、半分勉強・半分楽しみで読んでみようと思うものではないでしょうか。

そんな本の中では、分析化学会近畿支部の「はかってなんぼ」シリーズが不動の地位を占めていると言って良いでしょう。

最初の 「はかってなんぼ 分析化学入門」 が出版されたのは2000年。日本分析化学会近畿支部のメンバーが各章を執筆。科学史から説き起こし、ダイオキシン、環境水、表面分析、生薬などの分析を紹介。誤差・単位・濃度などについての解説も。レベルは高いですが各章が10ページ余にまとめられていて読みやすい本です。
続いて 「はかってなんぼ 学校編」 は、学校教育の面から分析化学を解説。「はかる」を哲学する話で始まり、小中高校での分析化学的な内容の取り扱われ方、実験例、実験を行う際の注意点などを紹介。
そして 「はかってなんぼ 環境編」 は、環境分析に特化した内容。CO2、エアロゾル、ダイオキシン、トリハロメタン、農薬、排ガス、海水などの分析について。
「はかってなんぼ 職場編」 は、産業の現場での各種分析を紹介。DNA鑑定によるウナギの産地推定、近赤外分光法によるミカンの味の測定、においの分析、美しい髪をつくるための分析など。田中耕一さんのノーベル賞受賞研究の紹介も。
2004年の 「はかってなんぼ 社会編」 は化学分析以外にも範囲を広げ、「はかる」の切り口で幅広い科学の分野を紹介。ルミネッセンスによる年代測定、地図の作製、心理学による心の測定、気象観測、地震、血液検査なども。ページ数としては海水や湖水の分析の章が多いです。

「はかってなんぼ」シリーズは以上5冊が刊行されています。シリーズではありますが、それぞれが個性的です。

いっぽう日本分析機器工業会は、2001年に 「よくわかる分析化学のすべて」 を刊行しています。専門外の人にも配慮した書き方でわかりやすい。第1章で分析概論(電気分析・光分析・分離分析・X線分析)、第2章で分析例紹介(考古学、南米での大気調査、科学捜査など)、第3章でデータの扱い方という構成です。

堀場製作所コーポーレート・コミュニケーション室の 「「はかる」と「わかる」 くらしを変える分析の話」 は、縦書き。美しいイラストが多数挿入され、親しみやすい誌面。シックハウス、pH測定、導電率測定、オゾン、フロン、ダイオキシン、排気ガス、血液、放射線、ナノテクノロジー、半導体など。分析への熱意が感じられます。

もう一つ、放送大学教材の 「分析によって知る世界」 があります。読みものとして読むのは苦しいかもしれません。かっちりして字が細かいです。考古学、犯罪捜査、食の安全など最先端を紹介。

このように並べると、分析化学の読みもの本は既に多数出版されています。ここにもう1冊増やそうとは、ニッチの中のニッチを狙うようなものでは? とも思えました。

ただ、ここに挙げた本は、個人でなく企業や団体が企画して出版されたものばかりです。私に連絡してきた編集の渡邉さんは、分析化学というより「分析屋」、つまり分析をする職業に着目したのでした。
それから、既刊本は最先端のトピックスを取り上げたものが多いですが、普通の暮らしに関わる分析は、技術としては既に確立したものが広範に繰り返し使われています。そういう分析は研究者にとっては興味が薄いでしょうが、一般の人にとっては身近に感じられるのでは。

すなわち、人を語る、普通の分析を(も)語る、自分の体験として語る―こういう本なら、既刊書になかった価値を生み出せるのではないかと考えました。

ちなみに、上記の本の中で私が気に入っているのは「はかってなんぼ 職場編」です。分析がどう役立つかダイレクトにわかります。放射性核種分析の章もあります。それから「はかってなんぼ 分析化学入門」も好きです。基礎的なことを思い起こさせてくれるからです。

(それぞれの書名は 分析化学のおすすめ本 にリンクしています。簡単な目次やAmazonへのリンクがあります。)

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2011.07.14

世の中には本が多すぎる

2010年の書籍新刊は約7万5千点だったそうです。(新刊点数の推移(書籍)日本著書販促センター

貴重で大切にされる本がある一方で、粗製乱造、2匹目のドジョウ狙い、前著の焼き回し・・・ではないかと感じる本も残念ながら目につきます。「家の中で増え続ける本を思い切って捨てるには」と書かれた本がいくつも出ています。

出版不況と言われながら新刊が多いのはなぜか、私が見聞した範囲で知ったことを サラリーマンと商業出版(11)出版という業界 で書きました。

新刊を出そうという原動力は、著者でも読者でもなく出版社だ―私が1冊目の本を書いて感じたことです。

そう考えれば、化学分析の本の企画に対して編集会議で言われたという「ニッチだ」の意味は、分析業界がニッチという意味でなく、そんなものを取り上げることがニッチだ、という出版社側の営業上の評価だったとわかります。

なるほどなるほど。

しかし、出版社は本を出すのが仕事ですからニッチを狙うのもいいですが、私の本業は分析です。今の時代、言いたいことがあればウェブで言える。出版はたいへんな手間がかかります。しかも紙にして流通させるのは環境負荷を伴います。

その企画が出版に価するならいいですが、既に類似のコンセプトの本があるなら、それらの本を普及させる方が資源の有効利用ではないか―と考えました。というわけで、次回は既刊書の紹介です。

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2011.07.11

ニッチな職業?

皆さんは現在・過去・未来、どんな仕事に就いている(いた・いる予定)でしょうか。その仕事は、他人にひとことでわかってもらえる仕事ですか。

化学分析という仕事は、ときに説明に困りますが、マイナーすぎるわけでもないと思っていました。化学系の人ならこの認識に異論はなかろうと思います。

ところが、世間的にはあまり知られていないようです。

「すべて分析化学者がお見通しです!」を企画した技術評論社の編集者、 渡邉さんが私にメールして来られたのは2年前のことでした。
渡邉さんは実用的な科学本を企画しようと、食品の成分について色々調べていて、私の分析化学のページに行き当たり、興味を引かれたそうです。
「よくある社会的な?安全性の話とは一線を画すサイエンスの切り口で、とても新鮮で、企画にしたいと思った次第です」
とのことでした。

出版の企画というものは、まず社内の会議で通らないと始まらないようです。渡邉さんが企画を出すと、社内の理系の人(化学出身者)は、「分析自体はとても普通に行うものだ」と言い、サイエンス好きな文系の人は「まったくもってニッチだ」という意見だったそうです。

 分析がニッチ! すきま産業!

これには思わず笑ってしまいました。たいていの分析屋は、社会の根幹を支える重要な仕事と信じて働いているでしょう。何度も書いていますが、分析値によって大量の食品が廃棄されたり工場の操業が止まったりします。

分析という仕事が、身近でありながらあまり知られていないことに気づいた渡邉さんは、一般の人にわかりやすく伝えたい、という思いで企画をふくらませたそうです。

本の発売の2週間後に東日本大震災が起こりました。4か月が経っても復興の歩みは遅く、支援の届かなさが歯がゆいです。
中断していた執筆の背景など、これからしばらく書こうと思います。

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2011.07.09

「分析&化学」のニュース表示

このブログの右サイドバーに、「分析&化学」のキーワードを含むネットニュースの見出しを表示しています。
今日、ここが空白になっていることに気づきました。いつからそうなっていたのか正確にわかりません。

復活させようとしましたが、なぜかうまく行きませんでした。

このブログパーツは
米国Google Newsの検索結果FeedWind → このブログ
という経路で表示していました。
どうも「Google News → FeedWind」の段階で読みこみができなくなってしまったようです。

色々やってみた結果、

米国Google Newsの検索結果 → Google Reader → FeedWind → このブログ
という飛ばし方をしたら表示が復活しました。

しかし完全に満足な状態に戻ったわけではありません。以前は興味のある見出しをクリックすれば元記事に直接行けたのに、今は検索結果へ行くようになってしまいました。

不満ではありますが、他の方法がわからないので、当分これでやります。

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