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May 2011

2011.05.22

国際分析科学会議(ICAS2011)公開講座

5月22日から26日の日程で、国立京都国際会館において国際分析科学会議 (ICAS2011)が開催されます。初日の今日は 公開講座 が開かれたので行ってきました。
第1部は高校生や大学生を対象に最先端分析機器を体験できる企画が行われました。私が参加したのは第2部の講演会から。第3部は、歓迎レセプション(中止)が予定されていた時間帯に組まれた特別企画(福島原発関連)でした。
Icas1
Icas2

第2部 『社会を支える分析科学』 ~著名研究者からのメッセージ~
「The Challenge of Sustainability」 Richard N.Zare氏(スタンフォード大学)
「緑色蛍光たんぱく質の誕生」 下村 脩氏(ウッヅホール海洋生物学研究所)
「電子顕微鏡でカーボンナノチューブを見つける」 飯島澄男氏(名城大学・産総研・NEC)

第3部 『追加特別企画』
「福島第一原子力発電所事故による環境の放射能汚染:過去の放射能汚染と比較して」廣瀬勝己氏(上智大学・埼玉大学)

Zare先生はクリントン政権下で科学顧問を務めた方とのことで、主にエネルギーの視点から、持続可能な社会をいかに築くかという話でした。政治経済的な観点に固まることなく、「化学が鍵」と断言。化学を志す人向けの語りでした。二酸化炭素分子の逆対称伸縮の物まねが面白かったです。宴会の小ネタになりそう。

下村先生の業績については改めて説明するまでもないですが、オワンクラゲからの蛍光たんぱく質の抽出と構造解明の話はやはりすごいです。クラゲ2万匹から抽出したというGFP溶液の実物を持ってきておられて、会場の照明が落とされたら、ペンライトよりずっと強く光りました。その明るさに聴衆は感嘆しました。

飯島先生はカーボンナノチューブの発見者です。電子顕微鏡の画像を動画として見せるスライドが多く、生物でもないのにこんなに動きがあるのかと驚きました。それから、X線回折の説明では、中国刺繍を取り出して、レーザーポインタの光を透過させ、天井に投影すると回折像が!こんな実演もあるのですね。

このように各先生ともちょっとしたパフォーマンスがあり、スライドは画像が多く親しみやすい内容でした。第2部までは高校生も多く聴いていて、特に下村先生に積極的に質問していました。

第3部の廣瀬先生の講演は、既に公開されているデータのまとめでした。過去の大気圏核実験、チェルノブイリ原発事故、海洋汚染で起こった放射能汚染と福島第一原発の事故による汚染を比較するものです。私にとって新しかった話は次のとおりでした。

・大規模な核実験による放射性物質は成層圏に打ち上げられ、1年程度循環する。
・循環した放射性物質はいずれ降下するが、降下量は中緯度地域で多い。特に降雨量の多いところで多い。従って過去の核実験において日本付近は世界的にも多量の降下物があった。
・気象研究所は1957年から放射性降下物を観測しているが、1963年をピークに下がってきている。ただし中国による核実験とチェルノブイリ事故のときは一時的に上昇した。(チェルノブイリ事故でさえ、過去の核実験のトレンドと比較すれば少量でしかないことが、グラフを見るとよくわかる。)
・福島の原発事故後の空間線量率は放射性ヨウ素と放射性セシウムでほぼ説明できる。(この他の核種が少ないことを意味しますので安心材料です。)
・チェルノブイリの汚染地図に同縮尺の福島の汚染地図を重ね合わせると、福島の汚染範囲の小ささがよくわかる。(これは気がつきませんでした。チェルノブイリの汚染範囲が広いとも言えますが。)

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2011.05.07

「SI単位系」っておかしくないですか

国際単位系またはSIと同じ意味で「SI単位系」とする言葉使いをときどき見かけます。これはおかしいのでは? というのが今回のテーマです。

私は「当然おかしい」と思ってきました。しかし最近、科学用語の使い方についてかなり厳密な姿勢で書かれた書籍の中でこの言葉が使われているのを見て自信が揺らいでしまい、ちょっと記事にしておく気になりました。

まず、おかしいと考える理由です。
SIはフランス語 Le Système International d'Unités (*)の略称ですから、Sは「系」を意味します。ということは、「SI単位系」は「国際系単位系」となり、重複します。

このことを指摘した意見がネット上にないかと探したら、Wikipediaの 「国際単位系」のノート にありました。

「SI」という略語自体がフランス語で「国際単位系」という意味なので、「SI単位系」は「国際単位系の単位系」という「Mt.FUJI-san」「Houryuji Temple」みたいな重複した表現になり、百科事典としては好ましくないと思いました。ウィキペディアでは「NHK」も「日本放送協会」、「JR東日本」も「東日本旅客鉄道」としてますから、「国際単位系」でよいと判断しました。るがこむ 14:50 2003年3月29日 (UTC)

この後にも議論が続いていて、なかなか興味深いです。

Wikipediaのノートでは「SI単位系」に対して否定的な意見が優勢なようですが、ネット上でフレーズ検索すれば、この言葉が多数ヒットします。また、アマゾンのサイトで検索したら、少なくとも4冊、この語を書名に使った本が見つかりました。

私の仲間内でちょっと話題にしたら、重言は案外定着してしまうケースがあるという話になりました。
例えば「排気ガス」はもともと重言で、古くは「排気」か「排ガス」だったそうですが、現在は広辞苑にも載っており違和感はないとか。
私自身が使っている言葉でも「S/N比」は重言かもしれません。「SN比」「S/N」で足ります。
さらに、頻度は少ないですが「HIVウイルス」という言葉も見かけます。HIVのVはウイルスの意味ですから重なっていますね。

公的な文書では「SI単位系」は使われませんが、これから広がっていくのでしょうか。私は今のところ「SI単位系」と聞くと気持ち悪さを感じる派です。皆さまいかがでしょう。

これを機会にSIについておさらいしたい方にコンパクトな資料:
「国際単位系(SI)は世界共通のルールです」パンフレット完成(産総研)

もう少し突っ込んでおさらいできる解説:
量の表しかた(入門講座 化学分析のしかた)(「ぶんせき」2011年2号掲載)

* Le Système International d'Unités の Système の e に付いている綴り字記号は「アクサングラーヴ」、d'Unités の e のは「アクサンテギュ」というらしいです。(これらの文字が表示されない方のために。)

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2011.05.04

「すべて分析化学者がお見通しです!」正誤表と100点フェア

書籍の発売から2ヶ月半。残念ながら5箇所のミスが見つかりました。申し訳ありません。「すべて分析化学者がお見通しです!」サポートページ に正誤表が掲載されました。幸い軽微なものばかりでした。

Shirisaifair
この本は技術評論社の「知りたい!サイエンス」シリーズの93冊目です。
同じシリーズで、佐藤健太郎さん「有機化学美術館へようこそ―分子の世界の造形とドラマ」「化学物質はなぜ嫌われるのか―「化学物質」のニュースを読み解く」、中西貴之さん「なにがスゴイか?万能細胞―その技術で医療が変わる!」「食品汚染はなにが危ないのか―ニュースを読み解く消費者の科学」などが刊行されています。

出版社によれば、このシリーズは2006年8月に1冊目が出版され、この4月21日に通算100冊になったそうです。
それを記念して全国の下記書店で「知りたい!サイエンス100点フェア」(または50点フェア)が開催されます。大多数の書店は搬入済みとのことです。

詳しい内容は技術評論社サイトの
知りたい!サイエンスシリーズ
に連休明けに掲載されるそうです。
現時点では開催書店の情報がありませんので、ここに載せておきます。
(追記:技術評論社のトピックス に書店リストが掲載されましたのでここで載せていたリストは削除しました。)

冒頭の写真は本日(5月4日)のジュンク堂書店大阪本店のフェアの様子です。MARUZENジュンク堂書店梅田店と紀伊國屋書店梅田本店にも行ってみましたが、まだ陳列されていませんでした。

このシリーズはブルーバックスなどのシリーズよりも判型が大きく、内容も価格も新書でなく単行本仕様となっています。ですからお気軽に何冊でも・・・と薦めるわけにいかないのですが、装丁画が美しいものが多く見るだけでも楽しいです。ジャンルも化学だけでなく生物・物理・数学・医学などいろいろ。興味を引かれるタイトルが並んでいます。書店に寄る機会があったら一目ご覧ください。

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2011.05.03

分析士2段試験(液体クロマトグラフィー)

日本分析化学会が設けた新資格「分析士」について、昨年 分析有段者! で紹介しました。

トップをきって実施された液体クロマトグラフィー分析士初段の試験(2010年10月)では合計300名弱の方が資格を取得されたとのことです。登録者名簿や試験の参考問題は 分析士認証制度のページ に掲載されています。

この資格に興味を持つ方もおられるでしょうが、学会のサイトには今後の予定について今のところ掲載されていません。そこで、学会の情報誌「ぶんせき」の記事から拾ってご紹介します。分析士の資格は学会の会員でなくても取得できます。

液体クロマトグラフィー分析士2段試験

「ぶんせき」2月号の「お知らせ」欄に実施案内が載っています。
ただし、受験資格は初段資格保有者のみです。
日時 2011年6月5日(日)14時~16時
会場 受験申込者に通知
受験料 6,000円
登録料 3,000円
2段資格のイメージ
・HPLC装置とそれぞれのパーツの内容や原理の理解が十分にある。
・HPLCを用いた試験を、SOPに沿って、正確な操作を行うことができる。
・簡単な部品の交換が自分でできる。

今後の予定

中村洋会長(分析士認証委員会委員長でもある)が「ぶんせき」2月号p.114に書かれた記事によれば

2011年10~11月 液体クロマトグラフィー分析士初段試験
2011年12月 LC-MS分析士初段試験
2011年度内 イオンクロマトグラフィー分析士初段試験

とのことです。その後も分野は拡充される見込みです。

あれこれ

第1回の初段試験の問題は全50問で、満点は1名だったそうです。(株)三菱化学技術研究センターの矢田信久さんという方で、体験記が「ぶんせき」4月号に掲載されています。満点とはすごいです。

ところで、主に利用する分析手法が1~2種類に限られるユーザーの場合は、初段・2段・・・とグレードアップしていくのも励みになりそうですが、3つ以上を利用するユーザーにはちょっと負担が大きいかもしれません。
例えば私の場合、液クロ、ガスクロ、LC-MS、GC-MS、IRの5つは日常的に使います。段位は5段回、飛び級は認められない、それぞれ受験料+登録料が約1万円・・・となると、自己負担でチャレンジする気にはちょっとなれません。

TOEICのように点数制にするとか、飛び級受験を認めるとか、受験回数が無駄に多くならない制度設計のほうが利用しやすいかもしれません。

そのかわり、これまたTOEICのように「有効期限5年」といった条件を付けてもいいかもしれません。分析手法は日進月歩ですから、期限があるのはむしろ当然のように思います。

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