海水中の放射性物質濃度、その後
4月9日に 海水中の放射能の基準値はどこに書かれているか で「早晩もっと緩めた基準が発表されそう」と書きました。
しかしその後も、東京電力が発表する福島第一原発付近の海水の数値には一貫して「炉規則告示」の濃度限度の何倍であるかが付記されています。ちなみに最新の発表(4月28日)では、2号機スクリーン海水中の濃度は、ヨウ素131がシルトフェンスの内側で1600倍、外側で250倍とのことです。4月2日に測定された「750万倍」が最高で、その後は減ってきました。
農産物・水産物・飲料水・避難区域・学校・・・と次々に暫定基準が定められましたが、海水については事故以前の基準(一般公衆の被ばく限度を年間1mSvとして定められた値)がずっと使われていることになります。
一方、原発から半径30km圏の外側の海水中の濃度は文部科学省が測定して発表しています。
福島第1原子力発電所周辺の海域モニタリング結果
これは炉規則告示の濃度限度に触れておらず、単に数値だけの発表です。
ところで、排水中の放射能限度の計算法に書いたとおり、この濃度限度は残留農薬等の基準のようにそれぞれの核種で判断するものではなく、含まれる核種すべての合計で評価します。
東京電力も文部科学省も、測定対象核種はヨウ素131、セシウム134、セシウム137の3つです。東電の発表にずっと「その他の核種については評価中」と書かれているのが気になります。
東電の最初の発表時(3月22日)には、海水中のコバルト58、ヨウ素132、セシウム136の濃度も記載されていました。これらの濃度限度との比はヨウ素131等よりも2~3桁低くなっていました。つまり、単純にBq/cm3で比較するとそれぞれの健康影響の深刻さを比べられませんが、濃度限度の数値で割り算することで比較できるようになります。
1000倍超の数値を発表し続ける意味を疑ってしまいそうになりますが、それでもこうして比較することが、多数の核種の中でどれが相対的に重要かを判断するために役立っていると言えるでしょう。
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