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2011.03.05

分析屋 vs 毒性屋

やや挑発的なタイトルですが・・・
食品安全情報blog の畝山さんが 「すべて分析化学者がお見通しです!」を紹介 してくれました。ずいぶんほめていただいて、感謝・感謝です。

結論的にはほめてくれているのですが、素直に喜べないくだりがあります。

 分析という仕事は従事している人が比較的多く、何をやっているのかも一般の人からは比較的わかりやすい仕事だと思います。
 ただ動物を使って安全性の研究をしている人達からの評判は実はあまり良くありません。分析屋は、なんだかよくわからないものを「検出」しただけでその生物学的意味などお構いなしにとにかく危険だと騒ぎたがるし、自分が検出した物質は最大限に悪いまたは良い影響があると誇大宣伝してはばからないし、なんらかの「基準値」違反があったらそれだけで「手柄」として大々的に騒ぎたがる・・・そういうイメージがあります。分析屋が騒ぎを引き起こすとそのせいで訳のわからないものの「毒性試験」をやらされる。あまり意味はないと思いつつもたくさんの動物を殺さなければならないのが安全性試験担当部門の役割なわけです。

そうだったんですか!?

分析を仕事にしている人がこの部分だけ読んだら頭に来るかもしれません。
ここに述べられている「分析屋」の範囲は、かなり限られます。
まず、人の健康に関わる(可能性がある)物質を分析していること。それから、自分が検出したものに関して騒ぎを起こせるだけの発言力(社会的地位や発言手段や自由さ)があること。

そういう方々は絶対数の割に目立つのは確かです。でも、圧倒的多数の分析屋は、環境や食品や様々な製品の安全や品質を守るために、一般市民の目に触れにくいところで地道にデータを出し続けています。
ほんの一例として食品の栄養成分の分析を挙げます。膨大な食品の分析にどれだけ多くの人が携わっているか、このページを下までスクロールするだけでも想像できます。→ 五訂増補日本食品標準成分表 [付記]

市民のみなさんと大多数の分析屋のみなさんへ
そういう日頃あまり表に出ない分析屋の姿を紹介したのが今回の本です。科学読み物として、興味を持った人が気楽に読んでくれたらいいなと思います。

依頼されて人の健康に関わる物質を分析するみなさんへ
いま食品分析会社ではトランス脂肪酸の検体がたくさん来て忙しいそうですね。業界の偉い方が「そこまでしてはからないといけないものなんですかねえ」と漏らすのをききました。顧客が依頼するものを断るわけにはいかないでしょうが、どうぞ不安をあおるような宣伝は抜きで、分析値の正確さでの勝負をお願いします。

調査や研究として人の健康に関わる物質を分析するみなさんへ
毒性屋さんに不本意な実験をさせられるほど影響力のある分析研究者がここや私の本を読むかどうかは疑問ですが、どうぞ畝山さんの貴重なコメントを心に留めて研究結果を発表してください。
国立衛生研究所にしても大学にしても、分析屋と毒性屋が同じ建物にいる場合が結構ありますので、情報交換しながら良い仕事をしてください。

「分析屋」という言葉
畝山さん的には「分析屋」は蔑称で「分析化学者」がまともな専門家を表すようです。
人それぞれに解釈がありますけど、「分析屋」という言葉に込めた著者たちの思いは、また後日書く予定です。

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Comments

確かに気を悪くする人もいるだろうという書き方でした。
でも毒性屋という言い方で思いつきました。ヒトの暴露条件とは程遠い投与方法で(食品を注射するとか大量に長期間投与するとか)出た結果や、バックグランドレベルでの変動を毒性の証拠だという自称「毒性屋」もいます。そういう人と何でも分析できる分析屋さんのタッグが問題なのですよね。何か事件や事故があるとすぐに「分析を増やせ」という傾向のおかげで分析が目立つだけで。内輪ならいい加減なヒトは簡単に区別できるのですが外から見たら一緒。どの分野でも同じことがあるのでしょう。

Posted by: uneyama | 2011.03.06 at 09:27 AM

書き手の分野に偏りがありそうですが,こんな記事も見つけました。
http://d.hatena.ne.jp/Funadani/20091222

Posted by: Name | 2011.03.06 at 06:49 PM

uneyamaさん
なるほど。毒性屋にも分析屋にも騒ぎを大きくしたい人はいるわけですね。

Nameさん
これは結構納得できる話だと思います。

お二人のコメントを読んで「分析屋 vs 毒性屋2」を書きました。

Posted by: ここの管理人 | 2011.03.06 at 11:38 PM

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» [仕事] 安全性の判断は分析屋の領分であるか否か [頭に毬藻る]
こないだ読んだ「すべて分析化学者がお見通しです!」の関連で。私もやっぱりこの文に引っかかった。 動物を使って安全性の研究をしている人達からの評判は実はあまり良くありません。分析屋は、なんだかよくわからないものを「検出」しただけでその生物学的意味などお構い... [Read More]

Tracked on 2011.03.08 at 11:36 PM

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