フタル酸エステルは環境ホルモンだから規制されたのではない
「すべて分析化学者がお見通しです!」の「第2章 食品を分析する」の中のフタル酸エステルと塩ビ手袋の部分に、小比良さん からtwitterで次のようなご指摘をいただきました。
私もあの部分については少し違和感のようなものを感じました。知らない人が読むと「環境ホルモン」は怖いもので、その使用が分析によってストップしたと読めそうな気がしました。
(twitterはページがいくつにも分かれてしまって全部をリンクするのはたいへんです。この他の部分はecochemさん作成のまとめ 「すべて分析化学者がお見通しです!」@Togetter の3月5日周辺を読んでください。)
小比良さんにダイレクトメッセージでより詳しくご意見をおききしました。たしかに、次のように間違って読まれるかもしれないと思われました。私の見解とともに書いておきます。
A DEHP(フタル酸エステルの一つ)は環境ホルモンだから規制された。
→ 違います!従来どおりの毒性試験の結果から規制されました。
DEHPの環境ホルモン作用(内分泌かく乱性)は、環境省の報告書でも否定されています。(本の脚注及び参考文献に挙げた 化学物質の内分泌かく乱作用に関する今後の対応― EXTEND 2010)
B やっぱり環境ホルモンは怖いんだ。
→ 違います!人に対して内分泌かく乱性による害が証明された物質はありません。
C (環境ホルモン問題に詳しい人)無用の騒ぎや研究費や製品忌避を生んだ環境ホルモンの規制をいまさら肯定的に取り上げるなんて・・・
→ 前半には賛成しますが、後半は正確でありません。環境ホルモン問題はDEHP溶出発見のきっかけではありましたが、規制そのものは内分泌かく乱性とは無関係です。
このような誤解を生んだのなら私の筆力不足です。ブログでの補足には限界がありますが、誤解があるなら少しでも解いておきたいので強調します。DEHP規制の根拠は、従来の枠組みでの毒性試験です。環境ホルモンとは全然関係ありません。
小比良さん、ご指摘ありがとうございました。
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Comments
B やっぱり環境ホルモンは怖いんだ。
→ 違います!人に対して内分泌かく乱性による害が証明された物質はありません。
内分泌かく乱性に限らず摂取量により当然害が出ます。その摂取量が常識としてあり得るか否かはまた別問題です。ホルモン様物質により影響が起きることは実例があり、その延長上で害が起きることは十分推定されます。
怖がる必要がないことと、怖くないこととは別の次元で、何かを断定的に決めつける発言は別の意味で害があります。
Posted by: ひかる | 2011.03.15 07:40 PM
ひかるさん、コメントありがとうございます。
丁寧な返信を書きたいので、もう少し事態が落ち着いたら記事としてお返事します。
今は原発のリスクが現実的すぎて環境ホルモンのことを考えられません・・・
すみませんがお待ちください。
Posted by: ここの管理人 | 2011.03.30 01:19 AM