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2011.03.28

放射線取扱主任者ですが

私は放射線取扱主任者です。正確には第1種放射線取扱主任者免状を持っていて、7年程度の実務経験があります。今の仕事は放射線と関係ありません。

最近メディアやブログやtwitterで放射線に関する情報が飛び交っています。
でも残念ながら私には、一番だれもが知りたい疑問「現在や近い将来の福島原発周辺での放射線による健康影響は?」に答える知識がありません。

放射線取扱主任者は、放射線を扱う事業所が法律*に定められた色々な規制をきちんと守るために選任されます。私が主任者をしていたときには、放射性同位元素を使う実験計画が排気などの基準を満たすか計算したり、GM管で場の測定をしたり、液体シンチレーションカウンターで廃水の放射線量を測定したり、管理区域に立ち入る人たちに毎月バッチフィルムを配布して回収したりしていました。

国家試験には放射線の生体影響も出題されます。でもそれは、大線量を被曝した場合にどうなるかということと、小線量でも確率的な影響はあるということ程度です。基準を超えた放射線にどの程度被曝したらどんな確率でどうなるかについては詳しく勉強しませんでした。

それでも私にとっては最も苦労して取った資格です。大学入試・薬剤師試験・国家公務員試験はそれぞれ1回で合格しましたが、第1種放射線取扱主任者は3回受験してやっと合格しました。この試験の合格率はだいたい20%です。

そんな専門的な分野ですが、放射線に関する知識は、これから長期間にわたって日本に生活する上での常識になるのかもしれません。既にシーベルトやグレイが普通の言葉になってしまいました。

こんなことを書くとのんびりし過ぎていると思われるかもしれませんが、色々な測定・分析装置の中で私が好きなものの一つはGM管です。放射能汚染がない場所で測定したとき、GM管は「ザッ」「ザッ」という音を出します。その一つ一つは宇宙から来た放射線? それとも地面に含まれているカリウム40? GM管は、常に身近にある放射線を音にして聴かせてくれます。

もちろん、こんなイメージを描けるのは、1つ1つの音が聞き分けられる程度に放射線量が少ない場合だけです。私が測定していた程度の放射線とは桁違いの線量の中で原発の復旧作業を続ける人たち、ずっと避難している人たち、水や農産物の汚染・・・実験用の放射性物質の管理業務とは比べものにならない事態が現実に起こっています。胸が苦しくなります。

深く勉強している放射線取扱主任者の方も多いと思いますが、私の知識はわずかです。それを自覚しつつ、それでも何かあまり出回っていないことに気づいたら、ここに書こうと思います。

* 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律

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震災関連」カテゴリの記事

Comments

私も第一種放射線取扱主任者ですが、正確なことはわかりません。
ただ、液体シンチレーションカウンターでは、C14のエネルギーでおおよそ、70dpm(今のベックレル?)、H3のエネルギーで50dpm(ベックレル)ではなかったかと思います。

ただ、当時はCiの世界でしたので、最近の単位(とくにシーベルト)との関係がうまく伝えられません。

HotのC14でラベル化した農薬を扱っていたこともあり、1Ciレベル(ベックレル単位が不明)3.7*10の10乗ベックレル程度でした。
C14はベーター線でエネルギーも小さかったので、飲み込まない限りは大丈夫の感度を持っています。

ピペッターを使うのが苦手で、ピペットに吸い込むのに口を使って、「ア!しまった」とあわてて吐き出して、うがいしたことを覚えています。

実際、扱っている人は、意外と鈍感ですね。
残留農薬をやっている立場からすると、逆に、放射能で化合物を追跡しているので、器具が汚れていることはお構いなし。放射能的に無ければ「汚れていない」と思っており、実際図るとColdの農薬が高濃度(残留農薬レベルに対し)で存在するようなこともあり。残留農薬部門からは、データの信頼性にクレームをつけることしばしば。
(昔の思い出です)


詳しくは、松永和紀さんのブログにシーベルトが開設されているようです。


Posted by: 廣田 政隆 | 2011.03.29 at 01:52 PM

廣田さんも第一種放射線取扱主任者でしたか!
作物中や動物の体内での農薬の動態を知るために、放射性同位元素(RI)を使う実験は必須ですね。

ピペットを口で吸ってRIを計量するって・・・絶句です。古き良き(?)時代の話でしょう。

キュリーは懐かしい単位です。
実は私はECDの検出器に装着された63Niを管理するために第ニ種放射線取扱主任者の国家試験を先に受験しました。(これは一発で合格しました。)その時はまだキュリーやレントゲンやremが使われていました。第一種を受験した頃はSI単位に切り替わっていました。

米国へ留学して実験した経験のある人たちによれば、米国でのRIの扱い方は日本よりもかなり簡単なようですね。さすがにピペットを口でということはないでしょうが。

Posted by: ここの管理人 | 2011.03.30 at 01:21 AM

僕は放射線のことまだまだ不勉強で、
分析全般まだまだ勉強中の身なのですが、
それでも思うのはニュース等での中での「分析値」の扱われ方です
「基準値以上」という言葉が完全に独り歩きしている感があります
それは何も、放射線の問題のことだけではないのですが

政府は3月21日、
食品衛生法上の暫定規制値を超える放射性物質が検出されたことを受けて、
福島、茨城、栃木、群馬4県の農産物の出荷停止に踏み切りました
現地の農協や農作物の生産者にとってはかなり厳しい措置です

この判断が妥当なものなのかどうかは1分析屋の私には分かりませんが、
「他の産地の農作物」への影響を考えた政治判断であったのだろうと思います
ですが現実には消費者の不安を少しでも軽減するために、
「他の産地の農作物」にまで「自主検査」を余儀なくされているとのこと
この「自主検査」の一言のかげに、どれほどの分析者が関わっているのか・・

ADIやARfDに対しての誤解もあると思うのですが、
個人的には世間の皆様に一番大きな影響を与えているのは、
件の「産地偽装問題」ではなかろうかと思います
つまり、「この野菜、本当は福島産じゃないんだろうか」という怖れ

誤解に偏見が拍車をかけている、
そんな気がします
つくづく分析値は怖いと、
そう思いました

Posted by: miyashita | 2011.04.08 at 07:42 PM

ADIではなく、
ALIと書くべきでしたでしょうか

すいません、
やはりまだまだ勉強不足です

Posted by: miyashita | 2011.04.08 at 07:52 PM

miyashitaさん、こんにちは。
ADIでいいですよ。既にご存知かもしれませんが、さっと調べたいとき、私は食品安全委員会の「食品の安全性に関する用語集(第4版)」を使っています。
http://www.fsc.go.jp/yougoshu.html

これだけ基準値超の報道が続くと、もっと他の伝え方はないものかと思いますね。

たいていの基準値は、少しまたは少数回オーバーしても健康や安全の問題が生じないレベルに設定されていることが一般常識になれば、より冷静に受け止められるようになると思います。
でも日々状況が変化しまだ先が見えないですし、おっしゃる通り過去に産地偽装が発生したことも事実です。
都道府県単位でなくもっとこまかく出荷規制をかけるためには、検査数や検査地点が多めになるのは当面避けられないと思います。農家と消費者のため、不要な廃棄処分を避けるためと考えれば、分析する側も前向きになれるのではないでしょうか。

Posted by: ここの管理人 | 2011.04.09 at 04:00 PM

100bq/kgという、放射能汚染取扱い基準についてお尋ねします。

このレベルを超えるものを無資格の者に対処させる事は、
法律違反なのではないでしょうか?

今このようなパブコメが募集されています。
http://www.env.go.jp/press_r/15080.html
要は、
「福島県内の事業ゴミは放射能汚染廃棄物であっても、
無資格者に関わらず事業者の責任において処分せよ。」
という内容にしか取れないと思うのですがいかがでしょうか?

Posted by: 香川英行 | 2012.04.08 at 04:49 PM

香川英行さん、こんにちは。
私は現在は放射線管理業務をしていないので即答できません。調べてみますので、少しお時間をください。

Posted by: ここの管理人 | 2012.04.09 at 08:22 PM

たいへんお待たせしました。記事にしました。
http://ytsumura.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/1000bqkg137-238.html

Posted by: ここの管理人 | 2012.04.15 at 12:15 AM

放射線取扱;取扱い主任者の資格はとりませんでした。
十分、忙しかったので。
ただし、今回の放射線放出事故、とんでもないことを、やってしまった、と云う理解です。
これまでの、放射線取扱では、ありえない事故である。と云う理解です。
放射線取扱主任資格者の、意見、感想はどうですか。

Posted by: | 2012.05.27 at 09:45 PM

おっしゃる通り、放射性物質の量の桁が違いますので、実験室で行っていた厳重な管理との落差は大きいです。核燃料物質・核原料物質・医療関係の薬品や機器は障害防止法の「放射性同位元素」から除外されており、原子力発電所の中は別世界という認識でした。中と外を隔てていたバリアが破れて初めて、量の違いが身に迫りました。

Posted by: ここの管理人 | 2012.05.28 at 06:44 AM

私たちは福島の浄化を進める仲間です。
今回今月末までに役所に申請を提出するものです。
我々の取り扱い資格は3種でよいのですが予定していた人が現在現場に入っていて証明書が使えません。工事の実働は11月から試験工事が始まります。我々で近々講習を受けに行く予定です。9月10.11大阪であります。しかし今月中に書類を出さなければなりません。
助けてくださいませんか。082・287.3333
よろしくお願いいたします

Posted by: simajima TN | 2012.08.24 at 09:25 AM

simajima TNさん、しばらく忙しくてブログを放置していました。申し訳ありません。
いずれにしても、私は現在は放射線管理の業務をしておらず、知っている範囲のことだけを時々ブログに書いている者です。お役に立てずすみません。

Posted by: ここの管理人 | 2012.09.04 at 09:56 PM

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