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2011.02.02

ヘリウムがなくなる?

最新情報:ヘリウム不足はいつまで続くか (2012/12/5)

ガスクロマトグラフィーの利用者にとっては気になる記事です。ナショナルジオグラフィック日本版 2011年2月号に、次のように書かれています。

しかし、米国学術研究会議(NRC)によれば、ヘリウムは枯渇しつつあるという。現在、世界中で利用されているヘリウムのほとんどが米国産だ。米国は1960年代にヘリウムの備蓄を始めたが、96年になって、備蓄している全てのヘリウムを2015年までに売却することを決めた。

その後は、ロシアやアルジェリア、カタールといった産出国が、世界の市場を支配することになるだろう。ただし、こうした国々のヘリウムも40年ほどで底をつくと言われている。

今日もガスクロのキャリアガスとしてヘリウムを使っている私は焦りました。
ヘリウムって、空気の中に無尽蔵に含まれているんじゃないの? 備蓄とか底をつくとかどういうこと?

この記事にはヘリウムの生産法が書かれていない。ネットで検索して、次のようなページを見つけました。

ヘリウムのつくられ方(一般社団法人 日本産業・医療ガス協会)

「ヘリウムは空気中にはごく微量しか含まれていないため、空気から分離することは経済的ではありません。天然ガスの井戸から採取される成分は主にメタンですが、時々ヘリウムを0.5%~1%程度含むガスが出る井戸があります。このガスを分離してヘリウムをつくる方法が、商業ベースで行われています。」だそうです。

ヘリウムって地下資源だったんですか! それは知りませんでした。

液クロでは2年ほど前にアセトニトリル不足が起こって難儀しました。ヘリウムの枯渇はそこまで差し迫った問題ではないようですが、気になります。

ヘリウムを消費する分析装置はいくつかあります。NMRでは超伝導磁石を液体ヘリウムで冷却します。液体ヘリウムは価格が高いので、その外側を液体窒素で冷却する仕組みだったと思います。
それから、かつて液クロの移動相の脱気のためにヘリウムガスでバブリングする方法がありました。もったいない使い方です。あれが出回った時期はそんなに長くなかったような。今ではデガッサーが普通です。

それにしても、なぜ天然ガスの井戸からヘリウムが出るのでしょうか。天然ガスの起源が古代の生物であるならば、生物がヘリウムを蓄積したりするものでしょうか?
と思って検索したら、天然ガスには「無機起源説」もあるようです。
地球深部に大量の炭化水素があるそうですが、それは地球創生期に隕石によって取り込まれた、あるいは地球深部のマントルの中で岩石と水が反応して生成された、といった説のようです。隕石に起源があるならヘリウムが含まれるのも不思議でない気がします。

天然ガスができるまで(財団法人天然ガス導入促進センター)

宇宙から来たのかもしれないヘリウム。ガスセーバーを確認ながら大事に使いましょう。将来的には、キャリアガスは水素への代替がさらに進むのかもしれません。

2011/2/3 追記

y_ohtaさんからコメントをいただきました。放射性の元素も起源だそうです。そういえばα線はヘリウムの原子核ですね!

「HeはUやThなど放射壊変によるα線起源の4Heと、地球形成時に地球内部に取り込まれた3Heの2種類が地下に眠っています。地下資源としてどちらが多いのか知りませんが、同位体分析によって4が多ければ前者、3が多ければ後者が集まったものだと思います。
天然ガスと一緒に、というのは単純にガスが溜まる場所に一緒にHeが濃集されただけなのかなという気がします。」

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Comments

仰るとおり水素キャリアーへの移行はいずれ進むと自分も思います.ただし、現時点では水素もヘリウム同様に地下資源からの産出に依存しているので、あまり楽観視できないと思います.
あと、ターボ分子ポンプを使用するMSD検出器だと到達真空度が悪くなる分、感度が落ちるのでそれも気になりますね…(逆に分離能は上がりますが…).

Posted by: Transferrin | 2011.02.02 at 10:15 PM

初めまして。通りすがりのものです。
HeはUやThなど放射壊変によるα線起源の4Heと、地球形成時に地球内部に取り込まれた3Heの2種類が地下に眠っています。地下資源としてどちらが多いのか知りませんが、同位体分析によって4が多ければ前者、3が多ければ後者が集まったものだと思います。

天然ガスと一緒に、というのは単純にガスが溜まる場所に一緒にHeが濃集されただけなのかなという気がします。

Posted by: y_ohta | 2011.02.02 at 11:06 PM

貴重な情報をありがとうございました。
ニトリル騒動の時にも当ラボでは大慌てでしたが、ヘリウムとなると大変です。
GCMS業務も多くを占めておりますので、価格上昇も心配ですね。
フーセン屋さん業界でも騒動になるのでは。
それとなくガス納入屋さんに聞いてみようかと思います。

Posted by: フランジィ | 2011.02.02 at 11:49 PM

Transferrinさん
水素も地下資源なんですか。水素こそ水から無尽蔵に作れそうな気がするのですが、コストの問題ですかね。
GCに関してはヘリウムより水素のほうがすぐれていることがよく知られていますが、質量分析計に関しては水素が不利ですか。
それと、防災上の問題があるので厄介ですね。

y_ohtaさん
そうでしたか! そのことに思い至りませんでした。
GC-MSには99.999~99.9999%のヘリウムガスを使いますが、3Heが含まれる比率が産地によって異なったらGCの再現性で問題になりそう・・・ととっさに考えました。実際は、3Heの存在比率の差はわずかなのでしょうね。

フランジィさん
すぐに価格が上がることはないと思いますが、ナショジオの記事には需要を抑えるための価格として「現在のヘリウム風船の価格75セント、望ましいヘリウム風船の価格100ドル」と書かれています。100倍以上ですね。
ただし、分析用の高純度ヘリウムは、ヘリウムそのもの以上に、不純物除去のためのコストがかかっていると思われますから、ヘリウム原料ガスと同じ倍率で上昇することはないのでは。また、たまたまニュース検索で見つけたのですが、ロシアからの供給も試験的に始まっているようです。

ロシア アジア太平洋地域へヘリウム供給を開始(2011/2/1)
http://japanese.ruvr.ru/2011/02/01/42324493.html

Posted by: ここの管理人 | 2011.02.03 at 06:43 AM

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