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September 2010

2010.09.20

電線の鳥たちが作った音楽

Gigazineのニュースで 五線譜のような電線に止まった鳥たちをそのまま奏でた音楽 を読みました。
ブラジル人のミュージシャンJarbas Agnelliさんが、5本の電線に止まった鳥たちの写真を楽譜に見立てて曲を作ったという話です。もとの記事は1年前のもののようです。
味わい深い1分25秒の動画と音楽。秋の気分になじみ、どなたにも楽しめると思います。ぜひ聴いてみてください。

Birds on the Wires (vimeo)

興味を持った方はこちらもどうぞ。Jarbas Agnelliさん自身が出演している動画です。約6分と長く、前半はポルトガル語(?)のスピーチなので意味がわかりませんが、後半は小編成の楽団による演奏です。音楽会気分をどうぞ。

Jarbas Agnelli. “Birds on the wires”, uma música a partir de uma foto (TEDx São Paulo)

鳥たちはもちろん音楽を作る気はなかったでしょうし、電線の数が5本で等間隔だったのも偶然ですが、私が好きなこの言葉を思い出しました。

測定・分析機器とはまさに、人間が自然の言葉を聞き、理解するためのメディアでもあるわけです。
堀場製作所コーポレート・コミュニケーション室+工作舎「『はかる』と『わかる』」より

最近 「安定同位体というメガネ―人と環境のつながりを診る」 を読んで、科学はまた一つ自然の言葉を聞くメディアを増やしたんだなと実感したところでもあります。

電線と鳥を楽譜に見立てることは、古今東西とりたてて新しい発想ではありません―という意味のことをJarbas Agnelliさんがvimeoの説明文で書いています。私には三好達治の詩の一節が思い浮かびます。

「あそこの電線にあれ燕がドレミハソラシドよ」
三好達治「燕」(「測量船」収録)より

自然にも音楽にも国境はないと改めて感じました。

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2010.09.04

質量スペクトル解析「中田マジック」を体験

Kandai1

関西大学で開催された第124回質量分析関西談話会に行ってきました。今回の企画は中田尚男先生(愛知教育大学名誉教授)を講師に迎え、前半は「有機分子のフラグメンテーションの解析 ― 実例に学ぶ ―」と題して初学者にもわかりやすい基礎の解説。後半は事前に参加者から寄せられた質問を題材にしてフラグメンテーション解読の実習でした。

ある程度の年数質量分析に関わってきた人ならたいてい中田先生のお名前を知っていると思いますが、私は直接講義を聴くのは初めてでした。参加者は約100名とのことで、私がこれまで参加した関西談話会の中で際立ってにぎやかでした。

正直なところ、質量スペクトルの解析というと「理論どおり行かないもの」「すっきりしないもの」「データベースに入れておけばいいもの」という感覚があって、あまり真剣に取り組んだことがありませんでした。
しかし中田先生の講義は、正イオンのフラグメンテーションの反応様式が「不対電子か正電荷か」「単純開裂か転位反応か」によって4パターン(バリエーションは7パターン)に整理され、それぞれの中でも開裂や反応の起こりやすさが順位付けられて説明され、考え方の指針がよくわかりました。

そして参加者からの質問への回答では、質問者自身が考えたフラグメンテーションのどこが不自然か、どのような経路なら自然かが丁寧に解説されました。その一段一段は基礎的でシンプルな原則に基づくもので、なるほどなるほどと思っているうちに、思わぬ酸素原子や窒素原子上の不対電子が四員環や五員環を巻いた先の炭素原子を攻撃して、そして気がつけば、スペクトル上のノミナル質量のフラグメント構造が見事にできている・・・という具合でした。

これが、中田先生が大学で講義しておられた頃から学生の間で有名だった「中田マジック」だそうです。(むかし学生の一人だった方による説明)
主催者から「話の流れをよく理解できるよう、メモは取らずに集中して聴いてください、回答は後日電子メールで送ります」とのありがたいアナウンス。行き届いた気配りです。

会場全体が中田マジックに魅了された3時間半でした。9月になっても終わらない猛暑の中、千里山まで行ったかいがありました。

下駄ばきが涼しそうに見えた「予科青春の像」(ただしマントを羽織っていますが・・・)

Kandai2

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