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2010.07.17

松永和紀さんの本2冊

Matsunaga2松永和紀さんの近著「食の安全と環境―「気分のエコ」にはだまされない」(日本評論社)を読みました。

この本に興味を持つ人は畝山智香子さんの「ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想」と中西準子さんの「食のリスク学―氾濫する「安全・安心」をよみとく視点」にも興味があるか、または既に読まれたことでしょうから、これらとの関係で内容を紹介してみます。

本のカバー範囲と書き方
「ほんとうの「食の安全」を考える」は昨年末にこのブログでも 紹介 したとおり、食品中の化学物質のリスク評価についての解説書です。「食のリスク学」はリスク論の立場から食の安全を考える本で、講演・対談・インタビュー等で構成されています。

私のブログの読者は残留農薬や食品添加物や重金属等の混入という視点から食に携わっている人が多いと思います。「ほんとうの「食の安全」を考える」はそのような皆さんの関心に応える本です。
でも、言うまでもなく化学物質混入によるリスクは食をめぐる問題のごく一部分でしかありません。
「食のリスク学」は栄養・食料自給率・経済性・市民運動など、色々な視点からリスクとベネフィットをバランスさせる考え方を提示しています。

松永さんの「食の安全と環境」は、さらに網羅的です。地産地消・農薬・化学肥料・窒素による環境汚染・肉食・食品廃棄・食品リサイクル・エネルギー消費・有機農業・遺伝子組換え…等々、ニュースで目にする主要な言葉がほとんど漏れなくわかりやすく解説されています。
著者自身があとがきで「解説すべきことの多さ、あまりの複雑さに頭を抱え苦しみました」と書いておられるとおり、食を取り巻く問題の多さをあらためて感じました。また、持続可能な、あるべき食の姿がどんなものなのか一律の答えが見出せるものではなく、ほどほどのバランスをとっていくしかないこと、より良い答えを見つけるためには消費者が正しい知識を持つ必要があることなどを感じました。
この本は、広く浅く概観できる構成で、入門書としてお奨めです。

エコと安全はカッコ付き?
上記3冊はすべてタイトルか副タイトルにカッコが使われています。いずれも、消費者や一般市民の頭の中にある「エコ」「安全」の中身を問う意味合いです。このへん、環境問題や食の安全問題に関して専門家と市民の間に存在するギャップを象徴しているように思えます。

ところで、タイトルにカッコが入った書名を文章に取り込むときにはちょっと迷います。「 」のままにすべきか、『 』に変えるか。「 」のまま書くならば、タイトル全体をくくるカッコは「 」か『 』か。また、それぞれ“ ”や< >を使うことも考えられますから、組み合わせはかなり多くなります。

私は基本的に「 」のままで、外側も「 」にしています。
「カッコの中でカッコを使うときは『 』を使う」と教わった記憶がありますが、元のタイトルの「 」を勝手に『 』に変えたら、コピペして書名で検索する人は不便を感じるかもしれません。「 」が入れ子になる落ち着かない書き方ですが、まあ仕方ないかなと思っています。

もう一冊の本
本の話に戻って、松永和紀さんの「植物で未来をつくる」化学同人(2008)もご紹介。

Matsunaga1こちらは日本植物生理学会監修の「植物まるかじり叢書」シリーズの1冊です。ゲノム研究・モデル植物開発・スーパーイネ・遺伝子組換えポプラ…これら植物生理学の課題に携わる専門家の素顔と研究内容が親しみやすく紹介されています。

特に私の印象に残ったのは、第4章で紹介されている林隆久さんの中学生時代のエピソード(夏休みの自由研究で自分自身の食べたものと排泄物の関係を調べた)です。詳しいことは本を読んでもらうとして、こんなすごい中学生は見たことありません。
林さんの「経済的な理由により森林は減っているのですから、森林破壊をやめろ、とただ言っても止まるわけがありません。経済効果のある木を植えて大事にしてもらうためにどうしたらよいか、研究者として考えなければならないのです」という言葉は、これだけでもなるほどと思いますが、中学生時代のエピソードと併せて読むと、より真実を感じました。

よく「産直は生産者の顔が見えるから安心」などと言われます。それに対して「遺伝子組換えは大企業が儲けるためにやっているのだから信用できない」という先入観が私たちの間にないでしょうか。

松永さんはフリーのジャーナリストという立場から、遺伝子組換え研究の「顔が見える」を届けてくれたんだなと思いました。
(「顔が見える」というキーワードは 畝山さんの本の紹介 でも使いました。)

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Comments

こんちわ、津村さん、お久しぶりです。
津村さんの視点は相変わらず絶妙な切り口で興味深いです。
そうそう、最近、気になるニュースで、川に流れて込んでいる「抗うつ薬」が生態系に影響を与えている、というものです。
いろんな薬が、思わぬ影響を生物に与えているんですね。
   ↓
排水中の抗うつ剤、エビの行動に影響
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20100720004

また、遊びにきますね。

Posted by: ホーライ | 2010.07.21 at 09:55 PM

ホーライさん、こんにちは。

松永さんの本はもっと踏み込んでご紹介したい高密度な内容なのですが、私があまり行政の仕組み等に触れないようにしているため、ちょっと物足りないかもしれません。

医薬品や身体ケア製品(日焼け止め等)を起源とする化学物質をPPCPs (Pharmaceuticals and Personal Care Products)というらしいですね。
10年くらい前にダイオキシン等を「非意図的生成物」と総称する動きがあって、その言葉はあまり浸透しませんでしたが、PPCPsはどうなるでしょう。

Posted by: ここの管理人 | 2010.07.25 at 07:32 AM

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