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2009.10.03

サラリーマンと商業出版(11)出版という業界

本は誰にとっても身近なもの。でも、自分が出版に関わってみたら、意外に知らないことがたくさんあった。そんなあれこれを思いつくままに書き留めておく。
ただし私が知らなかっただけで、実は周知のことかもしれない。また、話で聞いたこと、ニュースの聞きかじり、ネットで読んだものなので不確かかもしれない。そのつもりで読んでください。素人の感想文です。

出版不況だから膨大な数の新刊が発行される
書籍の年間新刊発行点数は約8万。すごい数だ。それは出版不況のせいで、かつては年間発行点数は1万点程度だったという。不況で売り上げ総額が減少しているのに発行点数が増えるなんて不思議な話だ。どうも、新刊でなければ売れないとか書店に置いてもらえないといった事情があるらしい。また、経営が苦しい出版社は取次からつなぎ資金を得るために出版点数を増やすそうだ。(相次ぐ出版社破たん、出版不況を抜け出す術はあるか

増刷される本は2割にすぎない
初刷分を売り切る見込みがあると増刷されるが、そうなる本はわずか2割という。また、本は初刷を売り切って収支トントン、売れ残れば赤字・・・というラインで初刷部数を決めるらしい。そして、どんな本が売れるかは、(当たり前だが)出してみないとわからない。出版は賭けのような側面があるんだなと思った。

書籍の返品率は約4割
これに一番驚いた。環境保全とか省資源と言われている時勢に、印刷・製本・流通の末、4割が返品され裁断されてしまうそうだ。

書店の本の大部分は書店のものでない
「本は委託販売」ということを頭では知っていた。でも出版社の人が自社にある本を「倉庫在庫」「社内在庫」と呼び、取次や書店にある本を「流通在庫」「社外在庫」と呼ぶのを聞いて、なるほど全部出版社のもの(在庫)なのだと感じた。
本は出版社・取次・書店の間をグルグル回っていて、出版社に返ってきたとき傷んでいればカバーをかけ直してまた出荷されるという。
私の本の第2刷が発行される直前には倉庫在庫がほとんどカラになっており、まとまった数の著者購入を依頼すると「確実とは言えませんが来週返本される予定ですから」などと待たされた。どこかへ出払っているものを在庫として当てにするのか?この業界は・・・と内心思った。
増刷部数を決めるにも、返本がどれだけ見込めるかを考慮しつつ、会議を開いて慎重に決定するようだ。印刷すれば何冊でも生産できるのに、「在庫」は他業界と同様にリスキーなものらしい。

編集者は熱心に企画を探している
出版社の人や設備を効率的に使うためには、常に出版企画がまわっていなければならない。だから、世の中が必要とするとか、作家が創作意欲を持つといった事情が無かったとしても、出版社が積極的に本のネタを探しているらしい。ただし、言うまでもないけれど、探しているのは「売れる企画」。

商業出版したい人を顧客にするビジネスがある
「自費出版」という言葉は誰でも知っているだろう。私はこれまで、個人で本を出したい人は自費出版するのだろうと思っていた。でも、「共同出版」という形態もあるらしい。それは、著者が出版社に数百万円のお金を支払って出版し、その本は一応全国の書店に並ぶというもの。
また、共同出版でなく、無名の著者の原稿を出版社の企画として通すことを目指すセミナーや個人指導(有料)もあるようだ。出版点数が膨大になっているから、出版への垣根は以前よりも低いらしい。

やっぱり本が好き
わずかな期間とはいえ接してみて、出版業界はなかなか厳しそうだと思った。書店に並ぶ華やかな新刊本の山を見ているだけではわからなかった。
それでも私は本が好きだ。ネットとどこが違うのだろう?突き詰めれば、一冊というまとまりが好きなのかもしれない。一ページ目を開いて最後のページを閉じるまで、著者が作った世界に浸れるのがいい。その世界をどこへでも持ち運べるところもいい。

出版業界の皆さんには、これからも良い本を作っていってほしい。

続き:サラリーマンと商業出版(12)最終回:一番うれしかった話

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