Googleブック検索の画質に不満
絶版本を含む膨大な数の書籍をオンラインで検索・閲覧できる Googleブック検索 についてのニュースが続いている。
著作権を侵害するとして、米国Authors Guild、米国出版社協会等が4年前にGoogleに対して訴訟を起こしていたが、昨年10月に和解した。和解案に沿った全文公開は米国内のみだが、Googleがデジタル化した書籍には日本で発行されたものも多数含まれている。
つい最近著者になったばかりの私にも、8月初旬、出版社(秀和システム)から書状が送られてきた。内容は要するに
「当社は和解に参加します。和解拒否または異議申し立てを行う場合は著者ご自身で行ってください。その場合8月末までに連絡を。異議申し立ての無い方全員を和解参加者とみなします。」
というものだった。
個人で米国の訴訟に関わるなんて考えられない。私は何も連絡しなかったから和解に参加したことになったのだろう。
現時点での和解案に対してはEUやAmazonが強く反対しているらしい。良い本が出版されない状況を招いては本末転倒だから、そこはちゃんとしてほしい。
個人的には、子供の頃読んだ児童版のSFや推理小説をもう一度読めないか期待している。古典的な作品はリメイクされて出版されるが、最近の挿絵はマンガ風のものが多くて味わいが少ないと思う。昔は児童向けシリーズにも大人向けと同じ画家が挿絵を描いていて、陰影が豊かで渋かった。怖いシーンは本を思わず閉じてしまうくらい心底怖かった。あの挿絵付きでまた読めたらうれしい。
しかしGoogleブック検索に収録されている私の本のデータはひどい。(「書籍のプレビュー」をクリック)
「よくわかる最新分析化学の基本と仕組み」概要ページ
どんなデータをもとに作成したのか不明だが、目次には現物に無い下線が多数あり、青色と緑色のまだらで(現物は緑色)、本文にはスキャナーがすべった(?)かのような流れた文字が多数ある。(21、23、27、31、33、35、37、39、47、51、55、271ページの上部)
秀和システムはGoogleのパートナープログラムに参加しているから、このデータを提供したのは秀和システムだろう。どんな事情があったかわからないけれど、もう少し普通のやり方はできなかったのだろうか。また、提供されたGoogleの側は文句を言わないのだろうか。(*)
他の本のプレビューもいくつか見てみた。解像度がおしなべて低いのは仕方ないが、許容範囲を超えて雑に作られたものもある。たとえば この本 のp.12あたりでは斜め・重複のあるスキャンが放置されている。
このプロジェクトがGoogleの構想どおり動き始めれば、全文へのアクセス権を有料で提供するサービス(ただし絶版後)も始まる。この品質のまま売るの?著者としては耐えがたい。
ともかく収載データが増えてくれば業務にも利用できるだろうが、少なくとも化学系の書籍はまだあまり収録されていないようだ。紀伊国屋書店のウェブストアではGoogleブック検索ページへのリンクを付けている。どれだけ少ないか一目瞭然。
(最近このブログは自著のサポートページとして「ですます」調になっていたが、しばらく「技術系サラリーマンが自己表現するには?」という開設当初のテーマで書くつもり。その間は「である」調に戻る予定。)
* どうも出版社がスキャンしたのではないみたい。続編 参照。
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