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2009.09.30

サラリーマンと商業出版(9)経費と印税

出版社の話では、原稿料は無く、印税のうち最低保証分が先払いされるとのことだった。つまり、出版後の早い時期に、本が売れても売れなくても一定の冊数分の印税が著者に支払われるということ。
この約束はありがたかった。執筆のために約60冊の参考書を購入した。中にはほとんど役に立たなかったものもあるけれど、そうとわかったのは読んだからこそだ。お金を惜しんでいては納得のいく仕事ができない。極端に専門的な本は購入していないが、それでも10,000円を超えているものがいくつかある。

分析機器の写真を撮るためのデジカメも買った。約4万円だった。あちこちのラボを見学させてもらって大量に撮影した。結局本に載せられるクォリティのものは撮れなかったが、取材メモの役割を果たした。
スキャナも買った。1万円程度の安いもの。書籍やパンフレットから画像を読み込んだり、手描きの図解原稿を出版社に送るためにフル稼働させた。

しかし、一番大きかったのは「時間」を買うための経費だった。
執筆には基本的に余暇時間を使ったが、もともと私にはそれほど多くの余暇時間があったわけではない。(6)で書いたとおり通勤時間(=英語の勉強時間)を使い、睡眠時間を削った。それでも足りなくて家事の時間を振り向けた。
家事に充当すべき時間は、ある程度お金で買える。具体的には、シルバー人材センターから人(「シルバーさん」と呼ばれる)を派遣してもらい、掃除や食事のしたくをしてもらった。また、惣菜を買ったり外食を増やしたりした。

私の職場の規定では、利害関係者からの依頼による場合、その報酬は講演で1時間当たり2万円、著述で400字当たり4千円を超えてはいけないことになっている。ちなみに私の本の「最低保証の印税」を計算してみたら、図表が多くて大ざっぱにしかわからないが、だいたい400字当たり千円程度になった。(利害関係者ならこういう依頼はしないだろう。)

本を書くには様々な作業が伴う。文章を書くだけでなく、全体の構成を考えたり、図版を選んで切り貼りしたり、図版掲載許可の手続きをしたり、査読の先生とやり取りしたり。それらを合わせたら、400字分の制作には1時間以上かかる。2時間以上かもしれない。すなわち私の仕事は時給千円以下だったことになる。いっぽう、シルバーさんには1時間当たり963円支払った。

これでは、仕事と考えるにはあまりに不合理だ。やはりサラリーマンは恵まれている。本を書くことを生業にしている人はたいへんだと思った。

それから、私のそもそもの目的は、現場向けの入門書を12冊入手することだった。著者はさぞかしたくさん本がもらえるのだろうと期待していたのに、提供されたのは5冊だけだった。足りない分は自分で購入した。


(今日は雨でした。)

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