サラリーマンと商業出版(7)約60法人から図版

図解のページも本文と同時に作成しており、ほとんど原稿はできていた。ただ、書籍やデータ集やウェブサイトから勝手にコピーして貼り付けたものばかりだった。出版のための手続きは一つ一つこなしていかなければならなかった。
図版は大きく分けて3種類。私が下絵を描いたオリジナルなもの、書籍から転載させてもらうもの、企業や公的機関から提供を受けるもの。
オリジナルのイラストは編集者がプロに手配してくれた。書籍からの転載は出版社どうしで話すとのことだったので、書名・出版社名やページをリストにして渡した。従って、企業等から提供を受けるものについて自分で作業した。
やり始めたら予想外に手間がかかるとわかった。相手先は60ほどある。
まず、各社の広報担当者にコタンタクトを取らなければならない。ウェブサイトにメールアドレスが掲載されている場合は良いが、スパム対策のためかフォーム入力にしているところが多い。小さな枠にいちいち所属・所在地・郵便番号・電話番号・氏名・メールアドレス等々を入力していく。その程度ですめばいいが、氏名や所属のフリガナ、ファックス番号まで必須のフォームも多く、単調でいながら自動化できない作業にイライラした。
「お問い合わせ内容」の文字数を制限しているところも多い。その場合は概要のみ述べて「詳しくはメールでお話しますからご連絡を」と書いた。
文面はコンタクト法に応じて作成しなければならない。さらに、相手は会社だけでないので「貴社」を「貴機関」「先生」にし、何通りかの定型文を使い分けた。
こちらのメールに対して二つ返事で画像ファイルを送信してくださった企業もいくつかあった。それに対するお礼を含め一往復半で仕事がすんで、とても助かった。
一方、なかなか返事が来ない、担当者にたどり着くまでに何往復もする、こちらの意図が伝わらなくて説明しなおす・・・ことも多かった。
「データを他の目的に利用しない」等を規定の書式に記入して郵送しなければならないところも10近くあった。公的機関のほとんどと、一部の企業がそうだった。
本業としてやっているなら昼間に電話したりメールでリアルタイムにやり取りしたりできたろう。でも私の作業時間は夜間と週末。最大でも一日あたり一往復に限られる。まどろっこしかった。
それでもメールというものはありがたい。本業を持ちながら自宅で何十もの会社と連絡を取り合うなんて、メールが無ければまったく不可能だ。
このようにして集めた図版は貴重なものが多かったが、中には分析屋にとって身近すぎるほど身近なものもある。ロータリーエバポレーターやキャピラリカラムの写真とか、水と二酸化炭素のIRスペクトルとか。
機器の写真もデータも、自前で撮影または取得しようと思えば簡単にできる。でもそれらは所属先のものであって私物ではないので勝手に使うわけにはいかない。こういう制約はサラリーマンゆえだ。
しかし下手に自分で撮るよりもプロ中のプロたちから提供をいただいたお陰で質の高いものを載せられたと思う。
(とはいえ、最先端のアプリケーションデータがあるのに、よりによって水と二酸化炭素のIRスペクトルをお願いした某社様、すみません。)
(8)へ続く。勤務先への届出について。

(今日も彼岸花の写真です。このつぼみはこんな地べたで咲くの?それともこれからグンと茎が伸びていく?)
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