サラリーマンと商業出版(3)欲しかった本
私は自分のサイトでは所属先を書いていない。それは、秘匿するためではなく、完全に個人の立場で作成していることを明確にするため。(運用方針)
現在の職務内容についても極力触れない方針なので、以下、かなり大まかに述べてみる。
出版社から執筆依頼があったちょうどその頃、私は分析化学の全体像が親しみやすく書かれている本を12冊ほしいと思っていた。(冊数だけやたら具体的。)
(追記:12種類の本という意味でなく、同じ本を12冊)
近年、たとえば「液クロ虎の巻」シリーズや「ガスクロ自由自在」などが出版され、個別機器ユーザー向けの手引書はますます充実してきている。でも、それらの機器をどう選択するか、また、試料採取・前処理やデータ処理まで含むトータルな分析はどう組み立てられるのか、初学者向けに解説した書籍がなかった。
そんな本を必要とする層があまり存在しないから・・・とも考えられた。ひとことで分析と言っても、主に利用される機器は分野ごとに限られており、初学者が網羅的に学習する必要はまずない。
ところが私が属するのは幅広い機器を扱う分野で、「分析化学の基本と仕組み」に載せたものの中でほぼ無関係と言えるのは表面分析関係の機器(XPS、AES)のみ。ほとんどの機器は、自分は使わなくても同業者の分析で使われるから、論文や学会発表の概要がわかる程度には知っておく必要がある。
そういう目的にかなう機器分析の教科書は多数出版されているが、だいたい字が細かく堅苦しい。業務の空き時間にパラパラと眺める気になる本はないものかと思っていた。
このような事情だったので、出版社が持ちかけてきた書籍を私としては買いたいと思った。しかし、依頼内容は「買ってほしい」でなく「書いてほしい」だった。
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