光(電磁波)を分ける方法いろいろ
(第2刷修正箇所の解説です。)

現代人は情報の9割を目から得ていると言われます。化学分析においても、光は物質を見分ける重要な手段です。物質に光を当てて反射させたり透過させたり、あるいは物質そのものが発生する光をとらえて観測します。
そのとき、モノクロで見るのでなくカラーで見るほうが圧倒的に情報量が多いのは明らかです。
カラーで見るということは、光に含まれる色々な波長の光ごとに強度をはかるということですから、そのためには何らかの方法で光を分ける(分光する)必要があります。
プリズムは一番なじみ深い分光法でしょう。プリズムを使えば虹のように色が分かれます。
一方、分析機器によく使われるのは回折格子です。回折格子の見た目はコンパクトディスクの記録面に似ていて、見る角度によって虹のような色が見えます。
プリズムも回折格子も空間的に光を分けるので、色つきの画像として目に見える、比較的わかりやすい分光法と言えるでしょう。
それに対して視覚的にはわかりにくい分光法もあります。
フーリエ変換は、重なり合った波を数学的に処理してどのような周波数(波長)の成分から成っているかを解析する処理法です。
また、波高分析と呼ばれる方法もあります。エネルギー分散型X線分光法(EDX)に使われる半導体検出器は、X線が入射するたびに電荷パルスが発生する仕組みです。

パルスの大きさはX線のエネルギーに比例します。この信号を増幅し、電圧パルスに変換して記録するとこんな感じになります。

ある時間範囲の中でどんな大きさのパルスが何回発生したかをグラフにすれば、電磁波(X線)をエネルギーごとに分ける(=分光)ことができます。つまり、目で見える虹のように分ける方法だけが分光ではないということです。

「図解入門 よくわかる最新分析化学の基本と仕組み」の5-2項「電磁波とスペクトロメトリー」では、種々の分光法の違いを「空間分解」「時間分解」という言葉で説明しました。しかし、これらの言葉をこのような広い意味で使うのは一般的でないとの指摘がありましたので、第2刷からは改めることにしました。新しい記述は次のようになっています。
スペクトル測定には、プリズムのような仕組みで空間的に分光する方法の他に、時間ごとの測定値を処理して描く方法などがあります。
もっと詳しい解説
分光器
プリズムと回折格子について。図入りのコンパクトな解説。(兵庫県立大学環境人間学部熊谷研究室オンライン教科書「環境分析論」吸光光度分析法より)
やさしいFT-IRの原理
フーリエ変換とマイケルソン干渉計について丁寧に解説。(日本電子)
EDXの仕組み
「蛍光X線分析の実際」中井泉、日本分析化学会X線分析研究懇談会(朝倉書店、2005)
虹の写真は下記サイトより。No.270 虹のアーチ 撮影地 東京
ゆんフリー写真素材集
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