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2009.04.10

分析化学の入門書を出版

Nyumon_2図解満載の初学者向けの本を出した。発行元はコンピュータ関連書籍で知られる秀和システム。

化学分析業務に携わる人は多いけれど、大学や高専や専門学校で分析をトータルに教える学科や研究室はそれほど多くない。私自身、分析と名の付いた講座で卒業研究をしたものの、試料採取・前処理・データ処理・目的に応じた分析手法の選び方・・・といったことは就職してから必要に迫られて少しずつ身に着けた。

大きな書店へ行けば分析化学の教科書が20~30冊以上並んでいる。でも、学問としての分析化学は化学平衡や電極反応の基礎を教えるという役割も持っているため、教科書では数式の解説に力点が置かれていることが多い。(それはそれで大切だけど、とりあえずの実務に当たってはマイクロ波処理とか固相抽出とか重み付き検量線とかを勉強したい。)

このほど出版した本では、高校の化学程度の知識を前提に、試料採取・前処理・各種分析法・データ処理からラボ管理までを平易に解説した。

しかし、今は何でもネットで検索できる時代だ。本など無くても、誰でもたちどころに最新の解説を入手できる。狭い領域に絞った濃厚な内容ならともかく、幅広い入門書に対するニーズはあるのか。
そんな疑問もちょっと浮かんだが、秀和システムの担当編集者の話を聞いてなるほどと思った。
「実は、本というものはネットよりも検索性が高いんですよ」
書棚から出してパラパラとページをめくる。内容をだいたい覚えている本なら、確かに、コンピュータの前に行ってキーワードを入力するよりも早い。

「検索性のためには紙面の構成も実は重要です」
これにも感心した。提案されたフォーマトは基本的に1項目を見開き2ページに納めるもの。そんな形式にどんな意味があるかわからなかったが、やってみると、項目名が必ず左ページ上部(横書きの場合)に来るので、ページをくって探すときの効率が良いことを実感した。それに見た目が親しみやすくて読みやすい。

「読み物としても面白いものを。240ページという枚数はちょうどよいのです」
これも本ならではのこと。PCの画面でこれだけの内容を通読したら疲れるし、だいたいそんなコンテンツは提供されていない。
紫外可視、赤外、近赤外、テラヘルツ、ラマン・・・ネットで検索したらバラバラの解説しか読めないけど、並べたらそれぞれの個性が物語のようにつながって、一つ一つが輝く宝石のように思えてくる。書いていてとても楽しかった。(ページ数は240ページを超えて270ページになってしまった。)

図版はオリジナルのものも多いけど、約60の企業・公的機関、約20冊の既刊書から、それぞれの専門家による優れた図や写真を提供あるいは参照許可をいただいた。御協力いただいた皆様に感謝します。

この本の目次やネット書店へのリンクは秀和システムの紹介ページにあります。
図解入門 よくわかる 最新分析化学の基本と仕組み

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