「分析の常識」!
けっこう大きな活字で配置されている「分析の常識」の文字。なんて挑戦的な表紙でしょう。
最初に校正刷でこれを見たとき、即座に削除して編集に返しました。まるで自分が基準という態度で偉そうじゃないですか。それに学術書らしくない。ハウツー本みたい。
この位置にうたい文句が必要ならば・・・と代案を付けました。
「分析の全体像」
「ピペット操作からデータ解析まで」
「呈色試験からテラヘルツ分光まで」
けれどもこんな案は相手にもしてもらえず、「書名に関しては営業サイドの思惑が入ってくるので、ここは出版社が強行したということで」と押し切られました。
こうして「分析の常識」の本が発売されたわけですが、今のところ私のところへクレームは入ってきていません。もっとも、クレームをつけそうな(親しい)人に対しては、こちらから先手を打って言い訳をしていますが。
この本は秀和システムのシリーズ本の一つなので、装丁や誌面の構成はほとんどおまかせで製作されました。帯が刷り込まれたような表紙はネットでの販売を意識したものかもしれません。露出度が高い表紙画像に最大限の宣伝文句を盛り込んでいます。
また、各項目の最初に2~4行程度の前文を入れる枠があります。
執筆に当たり「わかりやすい文章の書き方」について若干調べたところでは、冒頭に要旨を付ける方法は推奨のようです。それが最初からフォーマトになっていることに感心しました。
その他、各章の扉絵や小見出しの付け方、枠の色の付け方など、プロが練り上げてきただけあって、ほど良いスマートさと実直な雰囲気をかもし出していると思います。
編集の方と話したとき、「先生方は知識を持っているけれど本作りは知らない。僕たちはそれを提供してお金をもらっています」と言われました。
分析化学とは関係ない体裁の話ですが、ストレスなく中身を読んでもらうためには、形も想像以上に重要ではないでしょうか。
「堅そうな本は手に取る気がしないけど、こういう本ならパラパラ見てみようか」という読者が少しでもいるなら、そしてそれが何かの役に立つなら、「分析の常識」も大目に見てもらえるかもしれません。
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