分析屋と「誇らしげな態度」
公開RSSリーダー で分析関連用語を含むブログを拾っている。その中に面白い記事を見つけた。
「食品検査の市場は拡大する」 に思う
私たちの業界では誰もが知っている米国の某有名分析機器メーカーの社長が「食品検査の市場は二百兆円規模のグローバルビジネスになる」と言ったそうだ。その新聞記事を引きながら
これは例えてみれば、「人類が罪人を検挙するために『警察』を必須とするごとく、食品偽装を摘発するために『食品検査会社』は人類にとって必須の組織である」と高らかに宣言しているようなものである。
しかし、それはそうかも知れないが、あまり誇らしげに食品検査が有望市場だなどと威張ってもらいたくはないものだ。こういう事業は人類にとって必須かも知れないが、いわば“負の経済活動”とでも呼ぶべきものだろう。いわば悪に巣くう業種といえようか。
と書かれている。
分析屋に対する揶揄はこれまでにも聞いたことがあるけど、「悪に巣くう業種」はなかなかすごい。
そして、
・精密な分析を要する規制をすると食品の価格が上がる
・エネルギーを消費し、CO2発生量も多くなる
・そういう現場から新しい科学の萌芽が出てくることは今後はあまり期待できないのでは
と続いている。
筆者(森敏さんという方)自身が若い頃に公害問題をテーマに研究していた頃の体験などを元に、研究者としての視点で書かれている。
分析の現場で働く人の多くは研究者ではないから、新しい科学の芽が出てこなくても別にかまわないだろうけど、「悪に巣くう業種」としては、あまり誇らしげに「○○を検出した」とか言わないほうがいいのかもしれないと思った。
なお、このブログは WINEP(Workshop of Iron Nutrition Enhancement in Plants)または植物鉄栄養研究会というNPO法人が運営しているようだ。法人の設立目的は「植物の生育に必要な元素である鉄を中心として、人類の食糧生産・バイオマスエネルギー生産・環境修復などの問題に貢献する」ことらしい。森敏さんは理事長とのこと。
持続可能な社会が実現し、貧困が無くなれば、食品偽装も環境汚染も犯罪もぐっと少なくなり、「悪」に関する分析は減って、未知の世界を探るための分析が増えるでしょう。そういう社会のほうが分析屋も嬉しいに違いない。
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