ノイズの話(7)IUPACのオレンジブックも「振れ幅」
(3)から(6)でJISとASTMのノイズの定義を紹介した。これらはどちらも工業製品の規格だ。工業製品や技術というものは、学問の体系の上に築かれるものではないか、学術の世界ではどうなっている?と思う人も多いのでは。
化学の国際学術機関IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry, 国際純正・応用化学連合)は化合物のIUPAC命名法でなじみ深いが、命名法以外にも主要な専門分野の手引書を発行している。それぞれは表紙の色が愛称になっている。物理化学はグリーンブック、有機化学はブルーブックなど。分析化学はオレンジブック。
オレンジブックの初版は1978年、第2版は1987年、第3版は1998年に刊行された。第3版は全文をネットで読むことができる。
Compendium of Analytical Nomenclature (オンライン版。壁紙がオレンジ色で気分が出ている。)
IUPAC Nomenclature Books Series (用語集シリーズの紹介)
第3版第9章「分析分離法」の中に「クロマトグラフィー>検出に関する用語>ノイズとドリフト」の項目がある。その中ではこのように書かれている。
ノイズ (N) (図 9.2.4を見よ)
ボルト、アンペア、または吸収の単位で表現されたベースラインの包絡線の振幅であり、1分間に1サイクル以上のオーダーの周期を持つ検出器信号のすべてのランダムな変化を含むもの。光学的な検出器の場合は振幅は単位セル長当たりの吸収で表されるかもしれない。ドリフト (図 9.2.4を見よ)
1時間当たりのボルト、アンペア、または吸収の単位で表現されたノイズの包絡線の平均的な傾き。実際には0.5時間の測定から1時間当たりの値を推定できるかもしれない。
(訳:津村)
図 9.2.4はこのようになっている。(略しているので完全なものは元のページで見てください。)また、S/N比から検出限界を求める際の係数は2としている。

ASTM法の図と大きな違いがある。「ワンダー」もノイズに算入している点だ。しかし「ドリフト」はノイズに算入していない。
ワンダーの扱いという違いはあるものの、振れ幅をノイズ幅としている点で、オレンジブックの方法はASTM法及びJISのガスクロ法と一致している。
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