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2009.01.10

ノイズの話(6)ASTM法は「振れ幅」がノイズ幅

前記事ではドリフト・ワンダー・短期ノイズの三拍子がそろった模擬クロマトグラムを載せた。

Nosewonderred

こういうものを見ると「ガス配管が汚染されたのでは」「イオン源を洗浄しないと」「カラムの履歴は?」などの考えが浮かんでソワソワし、ノイズの定義どころでなくなるのがクロマトグラファーというものではないだろうか。(作り物のクロマトとわかっていても。)

実際、ノイズの大きさが「振れ幅」であろうと「振れ幅の半分」であろうと、装置のメンテナンス状態の影響に比較すればたいしたことではない。

でも、だからといって何の注釈もなく「S/N>3」だけで検出限界を表すデータが横行しているのはおかしいと思う。Nの定義の違いは確実に2倍の差を生み出す。

で、本論のASTM法の解説。繰り返すけれど、ASTM規格原文は入手していない。

まずアジレントの文書(URLは前記事)より。
ここに書かれている方法は、ドリフトを除去した7つのセグメントのピーク to ピークノイズを測定するというもの。具体的な手順は次のとおり。

(1) ピークの半値幅の約10倍をノイズ測定のセグメント期間とする。
(2) バックグラウンドピークや試料成分ピークの出ていないベースライン領域を選択し、7つのセグメントを決める。
(3) 一連のセグメントは連続的で、互いの両端で10%が重複していることが推奨される。
(4) それぞれのセグメントの線形回帰線を描く。
(5) この線形回帰線から得られる最大偏差と最小偏差の差がそのセグメントにおけるピーク to ピークノイズとなる。
(6) 7セグメントのノイズの平均値を検出器のノイズとする。

Noseastm

一方、島津のHPLCデータ処理ソフト(LC solution Ver 1.11)のヘルプには次のように書かれている。
「ここでのノイズレベルは、以下のようにASTM法で求めています」とした上で、上記アジレントの解説書と類似の方法が述べられている。ただし、セグメントの長さは半値幅から求めるのでなく0.5分刻みとする例が示されているし、それぞれの両端は重複していない。また、セグメントの数は決まっていないようだ。

S/N比から検出限界を求める際の係数の例としては、アジレントの解説では2、島津のヘルプでは3または3.3を挙げている。

両者を合わせると、ASTM法は振れ幅をノイズ幅とする方法と考えられる。JISの液クロまたはガスクロ通則の方法よりも、ベースラインのドリフトを想定している分、念が入っている。
単に「振れ幅か振れ幅の1/2か」だけでなく、ノイズの定義には色々ありそうだ。

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