天びんセミナー・実務講習会
島津製作所は「天びんセミナー」と「天びん実務講習会」を頻繁に開催している。以前から参加したいと思っていたが、つい各社のHPLCや質量分析計関連の新技術セミナーを優先してきた。このほどやっと聴講したので、その内容を紹介する。
■「天びんセミナー」概要
参加日:2006年12月7日 13:00~16:00
会場:島津製作所関西支社(大阪)
タイトル・副題:「天びん・はかりと計量管理について」セミナー 正確にひょう量するための方法について(ISO,GLP,GMP,HACCP対応)
講義時間:3時間
講師:分析計測事業部衡器部社員
プログラム
1.ISO
2.GLP/GMPと最小計量値
3.分析機器の適格性確認
4.分銅の取扱の注意点
5.天びんの日常点検・定期点検
6.FDA 21 CFR Part 11
7.質量測定における誤差要因
8.特定計量器
9.JCSS分銅と不確かさ
10.はかりJCSS
■「天びん実務講習会」概要
参加日時:2006年12月8日 13:00~17:00
会場:島津製作所関西支社(大阪)
タイトル・副題:「正しい天びん・はかりの使い方 実務講習会」セミナー 正確にひょう量する為の要点,原理・構造,校正用分銅と不確かさ,点検の実習
講師:分析計測事業部衡器部社員
プログラム
1.電子天びんの原理と感度調整
2.さまざまな誤差要因
3.天びんの性能を表す項目
4.日常点検と定期点検
5.トレーサビリティーと不確かさ
実習
(AUX220(聴講者2人に1台配置)を使用)
標準校正分銅を用いた感度調整
自動感度調整のオン・オフ
はかりとりモード・ゼロトラッキングの設定
日常点検法(器差を求めて合否判定する)
定期点検法(繰り返し性・偏置誤差・器差の測定と合否判定)
天びんの手入れ法・ドアレール交換法
■両講習会の共通点と違い
どちらの講習会でも、天びんの原理、仕組み、誤差の生まれる要因、使用や保守上の注意点などが丁寧に解説され、よくわかった。2日とも参加した場合、これらの事項は重複する。
実用性では「実務講習会」のほうが優れていると感じた。各種設定を変更するときなど、限られた液晶表示とキーを使ってメニュー構造をたどるが、実機が目の前にあるのでスムーズに習得できた。
ただし実習は時間がかかるので、講義内容は「天びんセミナー」のほうが詳しかった。「実務講習会」では天びんの原理説明は簡単であり、信頼性保証関係の項は時間切れで触れられなかった。
実習メニューの中の「標準校正分銅を用いた感度調整」と「定期点検」は基本的にサービスマンの仕事であり、島津はユーザーが実施することを推奨しているわけではない。実習に採り入れたのは天びんを理解してもらうためとのこと。
参加者層は、「実務講習会」は若手が多く「天びんセミナー」は中堅とおぼしき年齢層も含め幅広かった。ただしこれは今回だけのことかもしれない。
なおどちらの講習会でも、営業からのCMとして島津独自の質量センサ「ユニブロック」と静電気除去器「STABLO」の実演があった。
■感想
天びんが備えられていない分析試験室は無いと言っていいくらい普遍的であり、かつ試験値の基礎となる重要な機器である。ところが地味なので、つい漫然と使い続けてしまいがちだ。
今回のセミナー・講習会を受講して、保守管理の基本を再確認することができた。また、これまで知らなかった電磁平衡式天びんの原理、トラックスケール等大型の秤に使われるロードセル式との違い、ロバーバル機構と偏置誤差点検の必要性といった知識を得て、天びんをより適切に使えるバックグラウンドを増やせたと思う。
「ユニブロック」は一見するとシンプルな直方体のアルミの塊だ。比較のために見せられた旧型の複雑な質量センサとの違いに驚いた。
化学分析に携わる人はぜひ一度参加されたらよいと思う。開催情報は 島津分析機器のページ で告知される。実習のある講習会のほうが役立つと思うが、募集人数が少ないため早期に締め切られることがあるようだ。その場合は講義のみでも参加する価値がある。
2006年には大阪、京都、東京、松山、広島、周南で開催されている。
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Comments
天秤かぁ、こういう基本的なもの程、奥が深いですよね。
もっとも、一般の人は残農分析なんかも、機械にセットするとピャッと数値で出てくると思っているようですが。
Posted by: Sekizuka | 2006.12.18 11:05 AM
Sekizukaさん、コメントありがとうございます。
「天敵Wiki」訪問させていただきました。グループで活発に更新しておられるようですね。ウェブの活用例として興味深いです。
Posted by: ここの管理人 | 2006.12.19 05:55 AM